友だちの前では

まず、どれだけゲームのなかで危険な行動をしたかを調べると、大人では、一人でやろうが友達の前でやろうが、危険な行動をする数に違いはありませんでした。一方、青年では、一人でゲームをやるよりも、友達の前でやるほうが、危険な行動を多くしたそうです。やはり、友達の前では悪乗りするのです。また、その際の脳活動を調べてみると、大人ではアクセルである報酬系回路の活動に条件間での違いはなかったのですが、青年では条件によって違いがあったそうです。一人でやるよりも、友達の前でやるほうが、報酬系回路の活動が強くなっていたのです。さらに、そのような危険な行為にブレーキをかける前頭前野の活動を見てみると、一人のときよりも、友達の前でやるときのほうが、活動が著しく弱いことも示されたそうです。友達の前ではアクセルがさらに強く、ブレーキがさらに利きにくくなってしまうようです。

もちろん、友達は悪いほうにだけ作用するわけではないと森口氏は言います。たとえば、自分のことを心配してくれたり、たしなめてくれたりする友達はいるでしょうか?森口氏の個人的な経験では、男性の友達はどちらかというと悪い方向に導くことが多く、女性の友達はプレーキ役になってくれることが多かったようです。たとえば、高速道路で車のスビードを出すと、男性の友達は煽るのに対して、女性の友達は安全運転をするようにアドバイスをくれたそうです。

実行機能にも、友達の存在が好影響を及ぼすという研究が報告されているそうです。青年期にはタバコやお酒などの禁止されている行動をしがちです。こういった行動に対して、親や教師がやめるように促したところで、若者が耳を傾けるはずはありません。反発して、よりエスカレートしていくのが関の山です。彼らにとっては、大人に対する反発自体が目的の一つでもあるからです。こういう場合には、大人からよりも、同級生の視線からの働きかけが効果的だといいます。同級生から、タバコを吸う姿を、「悪ぶってるだけでかっこわるいよ」と言われるだけで、若者は恥ずかしい思いをするかもしれないというのです。

実際に、同級生や友達によって、問題のある行動を減らすことができるかが検討されました。プリストル大学のキャンベル博士の研究では、クラスのなかでも他の子どもに影響力があるとされる生徒をまず選びます。ここが肝心です。残念ながら、同級生であればだれでもいいわけではありません。生徒たちから一目置かれているような、そういう生徒を選ぶ必要があります。この生徒を訓練し、他の生徒による喫煙等の問題のある行動をやめさせるようにしました。その結果、問題のある行動が減少することが報告されています。繰り返しになりますが、青年期には、友人はいいようにも悪いようにも作用します。どのような友人を選び、どのように付き合うかが、実行機能にも影響を及ぼすようです。人生の分かれ目となる青年期このように、青年期において、自分を「コントロールする力である実行機能は一時的に低下し、衝動的な行動をとりがちだったり、欲求を抑えきれなかったりします。ただし、限度があります。ケンカをするくらいであれはまだしも、凶悪な犯罪行為をしてしまうと、そうではない場合と比べて、後の人生が圧倒的に不利になってしまいます。進学や就職に影響が出てしまうことは避けられません。