仲間外れ

ブレークモア博士らは、仲間外れがどの程度影響を与えるかを調べました。その結果、大人では、幾分気分に変化があったものの、それほど大きな変化が見られなかったのに対して、中学1年生と3年生では、仲間外れにされた後には気分が大きく落ち込んでいたそうです。仲間外れにされたことによって、ひどく傷ついたのです。さらに、仲間外れにされたときの大人と青年期の若者の脳活動を調べた研究では、大人も若者も、島皮質という脳領域を強く活動させていたそうです。この領域は、不快感情や痛みを感じたときに活動する領域です。針を刺されるなどの物理的な痛みでも活動するそうですが、心理的な痛みでも活動するようです。「心の痛み」とはよく言ったものだと森口氏は言います。

さらに、大人では活動が見られず、青年期の若者にのみ活動が見られる領域も見つかったそうです。それが、帯状回膝下野という領域だそうです。この領域の詳細な役割についてはよくわかっていないそうですが、この領域の活動が抑うつ傾向とかかわることが示されており、仲間外れにされることは、こういう領域の脳活動を通して、精神的な問題につながる可能性があるというのです。

現代の若者に特有の仲間関係として、SNSを通じた仲間関係があります。平成28年度の内閣府の調査によると、小学生の3割弱、中学生の5割程度、高校生の9割以上がスマートフォンを保有しているそうです。これらのSNSを通じて友達同士でグループを作り、内輪だけでメッセージを送り合います。ここで彼らにとって重要なのが、いかにして内輪で認められるかということです。SNSで褒められること、その数が多いことが、何よりのご褒美なのだと森口氏は言います。

もちろん、グループを作り、グループ内でいかに認められるかが重要なのは、現代の若者に限ったことではないと彼は言います。森口氏が高校生の頃はポケットベルが広まった時期で、公衆電話に並んで10文字をがんばって送っていたそうです。ただ、現在はSNSというツールがあることで、そのことが仲間内で可視化されたことと、いつでもどこでも時間を選ばずつながっていることに特徴があると言います。

このような青年期の仲間関係ですが、仲間関係はよくも悪くも作用すると言います。悪い面を言うと、友達といると、悪乗りすることがあります。一人では絶対しないようなくだらないことや危険なことを、友達といるとしてしまいます。たとえば、橋から川への飛び込みなどは、間違いなく一人ではやらないと思いますが、友達の前では、意地をはるためか、やってしまうと森口氏は言います。その結果として不幸な事故が起こってしまうことが多いようです。

友達といると自分をコントロールすることが難しくなるという研究がテンプル大学のチェイン博士らによって報告されているそうです。この研究では、青年や成人を対象にドライビングゲーム中にどれだけ危険な行為をするかを調べ、危険な行為をしている際の脳活動をfMRIで比較したそうです。この実験は、青年期には、バイクや車で危険な運転をする人の状況を模している実験だそうです。特に、このゲームでは、信号が変わる際に他の車と衝突するリスクを冒してまで信号に突っ込むかどうかを調べています。この実験の面白いところは、一人でこのゲームをやるときと、友達の前でゲームをやるときとを比較している点だそうです。実験参加者に実際に友達を連れてきてもらい、その友達が見ている状況でやる場合と、一人でやる場合を比較したのです。