青年の自立

児童期は、並走状態が続き、報酬系回路と前頭前野のバランスが良いようです。そして、青年期になると、ここで急に報酬系回路がスパートをかけます。前頭前野はマイベースなので、追いつけません。そのため、前頭前野が報酬系回路を抑えきれないのです。

成人期になると、報酬系回路が少し疲れ出し、前頭前野が再度追いつくため、両者のバランスが良くなるそうです。つまり、アクセルの発達とブレーキの発達を比較すると、青年期ではアクセルの発達のほうが少しだけ早まるようだというのです。そのため、ブレーキの発達が追いつかず、時に青年は暴走してしまうというのです。

森口氏は、こういう話をすると、アクセルが強いことがネガティプなことのような印象を与えてしまうかもしれないことを危惧しています。たしかに、アクセルが強いことによって危険な行動に走ることはあるのですが、このような働きは全面的にネガティプなものというわけではないと言います。青年が自立するうえで極めて重要なのです。

アクセルが強いことの利点として、学習能力の高さが挙げられています。クローネ博士らの研究では、参加者があるゲームを与えられます。最初はそのゲームのルールを教えられません。やっているうちにヒントが出され、ヒントに基づいてルールを見つけ、学んでいかないといけないのです。参加者がこのゲームのルールを学んだ際の脳活動のデータを取得し、ゲームの成績との関係を調べたそうです。小学生、青年、大人が参加したのですが、報酬系回路、つまり、アクセルの働きは、青年において最も強いことが示されたそうです。つまり、アクセルが強く働く青年期は、新しいことを学んだり、新しいものを探したりすることができるというのです。

青年期のもう一つの特徴として、仲間が家族よりも重要な存在になってくるという点があると森口氏は言います。小学生の間には、友達はいるにしても、家族が優先されます。ところが、中学校に人ると、休日に家族で出かける機会は減り、友達と遊びに行ったり、部活に行ったりする機会が増えるでしよう。仲間関係が重要であるということは、当然、実行機能にも仲間の影響があるはずだと森口氏は考えます。

青年期の特徴として、仲間外れに敏感という点があると言います。特に、この時期は、無視や仲間外れを含めた関係性攻撃が盛んな時期で、この攻撃対象になった生徒は、自尊心が低下し、抑うつなどの精神的な問題を抱えることにもなってしまうと言います。森口氏は、こんな例を出しています。たとえば、A君、Bさんとあなたが3人でキャッチボールをしているとします。あなたのところにボールが来れば、A君かBさんのどちらかにポールを投げるでしよう。最初は3人で仲良くキャッチボールをしています。ところが、途中で、急にあなたのところにポールが来なくなります。A君がボールをキャッチすればBさんのところに、BさんがボールをキャッチすればA君のところに。あなたは何か自分がへまをしただろうかと不安に思うかもしれません。

ブレークモア博士らは、このようなやりとりを、コンピュータゲームという形で調べたそうです。この研究では、ゲームの前にまず参加者の気分を測定します。これを基本として、仲間外れにされた後にも気分を測定し、仲間外れがどの程度影響を与えるかを調べました。