報酬系回路の変化

一方、女性ホルモンは記憶の中枢である海馬などの領域に作用します。たとえば、お店がどこにあるとか、自分の恋人が過去に自分に対してどういうことをしたか、などの記憶にかかわってきます。いずれにしても、このように、青年期においては、感情や記憶にかかわる脳の領域が変化を遂げると言います。そして、実行機能と密接にかかわる領域にも大きな変化が見られるそうなのです。

青年期において最も劇的な変化を遂げるのが、アクセルにかかわる報酬系回路です。特に、身体的な成熟が進んでいる青年ほど、報酬系の一部である腹側線条体などの領域が変化を遂げやすいそうです。このことが自分のコントロールを難しくするそうなのです。児童期よりも、大人よりも、青年期において、リスクのある選択をしがちであるということは紹介しました。ハイリスクハイリターンの選択肢と、ローリスクローリターンの選択肢を提示された場合に、ハイリスクハイリターンの選択肢をもっとも多く選んだのが中学生でした。

ライデン大学のクローネ博士らは、ギャンブルのようなテストにおいて、10歳から25歳の参加者を対象に、fMRIを用いて脳活動を調べてみたそうです。このテストにはハイリスクハイリターンの選択肢とローリスクローリターンの選択肢があります。この研究では、ハイリスクハイリターンの選択肢を選び、お金を得られた場合とお金が得られなかった場合の脳活動を比較したのです。

その結果、アクセルにかかわる報酬系回路の活動が、非常に興味深い発達的変化を示しましたそうです。まず、10歳くらいの児童と比べて、13~15歳程度の青年のほうが、報酬系回路の一部である腹側線条体の活動が強いことが示されたのです。小学生と比べると、中学生はお金に対して強く反応するようです。さらに、中学生と成人を比べた場合にも、中学生のほうが腹側線条体の活動が強いことが示されました。つまり、お金に対する腹側線条体の活動は、青年期において最も強いことが明らかになったのです。

このように、報酬系回路は青年期において最も強く活動しますが、感情の実行機能の発達を考えるうえでもう一つ重要なことがあると森口氏は言います。それは、ブレーキである前頭前野の発達との関係だと言います。前頭前野は、成人期まで発達が続く領域です。大事なこととして、前頭前野は、児童期よりも青年期のほうが、青年期よりも成人期のほうが、ブレーキとしての役割が強くなるのです。

そうすると、ブレーキもアクセルも、児重期より青年期のほうが強いということになるというのです。だとしたら青年期においてもブレーキとアクセルのバランスが保たれていそうです。ところが、実際には、青年期において、ブレーキがアクセルを制御しきれていないのです。実は、森口氏は、ここが少し複雑なのですが、報酬系回路と前頭前野の二つの領域では、発達するタイミンクが異なるようであると言います。

報酬系回路と前頭前野の関係をレースにたとえて、森口氏は以下のようにまとめています。まず、乳児期には、報繝系回路がぶっちぎりに前に行っていて、前頭前野は全く追いつけません。ところが、幼児期から児童期初期になると、報酬系回路に前頭前野が追いついてきます。ここで、前頭前野が報酬系回路の活動を抑えられるようになるそうなのです。