意図的行動

ロシャ博士は、繰り返し行動のことを「自己模倣」ということばで表現しているそうですが、2ヶ月頃の乳児は自己模倣を行なうことで、ある行為をすると何かの結果が得られるという経験を繰り返し。目標に到達するための手段を持った自己感覚を手に入れると言っているそうです。例えば、自分の足を動かして、その動きを見ることによって、行為と結果の連鎖を乳児は学習することができると言うのです。このような行為を何度も重ね、様々な組み合わせを試すことで、乳児はある手段が特定の目標に到達することにつながることを理解するようになると考えられています。その結果、ある目標に向けて手段を選ぶという、意図的な行動、計画的な行動ができるようになるわけなのです。ロシャ博士は、このような意図的行動が出現することの重要性を強調し、このような発達が見られる2ヶ月齢での変化を2ヶ月革命と表現しています。他者認識の研究で、トマセロ博士が、9ヶ月革命という言葉を使ったことに対応しています。

他者認識の革命が、9ヶ月とすれば、自己認識の革命は生後2ヶ月ことということになるのです。2ヶ月にも9ヶ月にも革命が起こるとしたら乳児は大変ですし、研究者によって2かがT革命の意味も異なるようだと森口は付け加えています。いずれにしても、2ヶ月革命によって意図的な行動が出現すると、徐々に自己を対象として捉えることができるようになるのです。これらの自己像が、言語などの象徴化する能力などと組み合わさることで鏡像自己認知ができるようになると考えられているのです。

これまでの研究を整理すると、2ヶ月に自己認識の革命が起こり、9ヶ月頃に他者認識の革命が起こり、4歳頃に誤信念を理解できるようになるということになります。これらの流れは、ある程度実験的に確認されていますが、森口は、「研究は、常に進展しており、今日真実だったことが、新しい発見によって明日には誤りになってしまうこともあります」と言っています。

乳児における誤信念理解も新しい発見があるようです。4歳頃の誤信念理解は、他者認識の発達のひとつの到達点として見なされてきました。しかし、これらはすべて、サリー・アン課題のような課題が、幼児の誤信念理解を正しく測定できているという前提の下での話だというのです。もしこの前提が間違っていたら、幼児の研究の多くは、吹き飛んでしまう可能性があるのです。誤信念課題は、その当初から、課題の構造が複雑すぎることや、言語能力に依存することなど、様々な問題点が指摘されていたそうです。誤信念課題を開発したパーナー博士自身、この問題について意識していたのか、ある論文で、3歳児は誤信念課題において登場人物がどちらの箱を探すかを質問されると、間違ってしまいますが、視線を調べると、正しいほうの箱を最初に見ることを指摘しているそうです。つまり、視線という指標を使えば、3歳児でも正解ができるのです。これは、暗黙的な表象と、明示的な表象の違いについての議論と一致すると言います。

このようなことは、他の乳幼児を使った実験でも聞いたことがあります。以前のブログでも書きましたが、幼児を対象の実験では、実験だと構えてやるわけにはいかないので、遊びとして導入することが多いそうです。いわゆるゲーム感覚で質問するのです。すると、幼児は自分にとって当たり前のことを質問されると、遊んでいると思ってわざと違うことをいうことがあるそうです。また、質問する大人の、どう答えることを望んでいるかという気持ちを察して、答えてしまうことがあるというのも聞いたことがあります。乳幼児対象の実験は、難しいですね。