他者認識の発達経路

ゲルゲイ博士とチブラ博士の研究によって、乳児は、顕示手がかりによって大人から情報を受信する準備をしていることが明らかにされました。しかし、この理論はまだ新しいため、彼らが主張するように、顕示手がかりが般化可能な知識を促進するという側面については、まだそれほど証拠は多くないそうですし、顕示手がかりの効果そのものに対しても批判が見られるそうです。今後の研究が待たれるところですが、大人と乳児のコミュニケーションに関する興味深く、本質を突いた理論であることは間違いないと森口は言います。ここでも、乳児は社会的かつ社交的であり、社会的な学習者であることが示されているのです。

生後1年に達する前に、乳児の他者認識には革命が起きています。とはいえ、誤信念理解までには2年以上の時間があります。この間をつなぐ他者認識はどのような発達を遂げているのでしょうか?発達というのは連続性があり、突然ある能力が生まれるのではなく、その準備がいるのです。

近年、ウェルマン博士らは、1歳半頃から4歳頃までの他者認識の発達経路について提案しているそうです。彼らによると、他者認識は、多様な欲求、多様な信念、知―無知の区別、誤信念の理解、そして、隠れた情動の理解の順序で発達していくと考えました。多様な欲求とは、好みの違いを理解することです。人によって、それぞれの欲求が違うということを理解できるようになるのが、1歳半頃だと言われているそうです。ゴブニック博士らは、このことを、ブロッコリー実験で調べたそうです。例えば、皿にスナックとブロッコリーをのせて乳児の好みを聞くと、たいてい乳児はスナックと答えます。次に、実験者が皿を自分の方へ引き寄せ、ブロッコリーを食べるふりをし、それが好きである様子を示します。その後「食べ物をひとつちょうだい」と乳児に求めます。もし乳児が、他者と自分の好みが違うことを示していれば、ブロッコリーを実験者に渡すはずです。この実験の結果、18ヶ月頃の乳児は、正しくブロッコリーを選択することができたそうです。

また、知-無知の区別は、他者の知識状態の理解であり、誤信念理解の直接的な必須要件とも言えます。例えば、幼児は、自分が箱の中をのぞいた後に、箱の中をのぞいたことのない人が、箱の中身を知っているかどうかを聞いてみます。この課題は、3歳児や4歳児でも容易に通過することが示されているそうです。このように、1歳から4歳までを対象にした研究によって、他者認識の発達経路が確認されているそうです。

さらに、他者認識と密接に関連しているものとして自己認識があります。ここでの自己とは、考える主体の自己ではなく、考えられる対象としての自己のことです。それは、自己概念とも言われるそうです。自己認識については、哲学に長い歴史があり、近年は脳機能イメージング研究が盛んになるなど、大きな研究領域になっているそうです。

自己認識の発達は、発達心理学では鏡を用いた実験で調べられてきました。私たちは、通常他者の顔を見ることはできても、自分の顔を見ることはできません。鏡は、私たちが自分の姿形を認識できる数少ない手段の一つです。では、鏡に映った像が、自分であることを理解できるのはいつ頃なのでしょうか?この研究に、私は少し疑問を持っています。そのことについて私は、2011年1月29日、2012年8月20日のブログで、ミラーニューロンに関して鏡のことを考察しています。では、森口はどのように考えているのでしょうか?