文化学習

少し前から、様々な領域における乳児における有能さが明らかになっています。乳児研究から、色々なことが、乳児から認知していることが示されているのです。とくに最近明らかになってきたのが、他者との関係においての認知能力です。それは、乳児は、母子関係だけで育てられてこなかったことを示しているのかも知れませんし、乳児から他者との関係を構築する必要があるのかも知れません。乳児が、さまざまな人との関わりの中で育てられてきたからこそ、愛着が必要なのでしょう。まったく、安心した二者関係の中でだけの関わりであったり、常に養育者に抱っこされて育っているのであれば、それほど負の状況になることは少ないでしょう。多くの人と触れ合い、他の子どもと関わり持ち、その中で、感情をコントロールすることを学び、社会で生きていくための様々な知恵を学んでいったでしょうが、その関わりの中では、不安になったり、コントロールできる能力を超えるほどの状況に陥ることもあります。そのときに、その気持ちを受け止めてもらえる人が必要になります。それが、愛着存在です。そのいちばんは、もちろん母親だったかも知れません。しかし、母親はいつもそばにいるとは限りません。そこで、複数の人との愛着関係を築いておく必要があります。それが顕著になるのが、生後9ヶ月頃からのようです。

トマセロによれば、累進的な文化学習こそが人間の文化の特徴だと言っています。この累進的な進化の欠かせないのが、模倣学習だというのです。模倣にはいくつかの種類があります。森口は3種類に分けて説明しています。この三つの区別で重要なのは、観察者がモデルと同じ行動をとるかという点と、モデルの目標を理解するかどうかという点だと言います。

まず、ミミックと呼ばれるものがあるそうです。これは、観察者はモデルと同じ行動をとりますが、目標は理解していないというものです。新生児模倣はこれに含まれると言います。二つ目は、エミュレーションと呼ばれるものだそうです。これは、モデルの目標は理解していますが、モデルと同じ行動はとらないものです。三つ目が、真の模倣と呼ばれるもので、モデルの目標を理解した上で、モデルと同じ行動を選択するものです。例えば、ある道具を使って食べ物をとるという状況において、他者が行なったのと全く同じように道具を使って食べ物をとれば真の模倣であり、他者とは異なる仕方で道具を使って食べ物をとればエミュレーションだというのです。

エミュレーションと真の模倣の違いについて、比較認知科学者のホワイトン博士らの研究を森口は紹介しています。この研究では、道具を用いて箱の中の報酬を得ることが求められます。箱には二つの穴があるのですが、一つの穴は正解で道具を使って報酬を取り出せますが、もう一つの穴ははずれで、取り出せません。この研究で、モデルは、外れの穴に道具を入れたあとに、正解の穴に道具を入れ、報酬を得ました。モデルの前半の行動は、報酬を得るためには不必要な行動です。この状況で、モデルがやった行動を逐一真似するのが真の模倣であり、前半の部分を省いて、いきなり正解の穴に道具を入れるのがエミュレーションということになります。

この研究は、チンパンジーと人間の子どもを対象に行なわれ、チンパンジーはエミュレーション、人間の子どもは真の模倣をするということが示されたそうです。子どもは不要な部分まで真似してしまったのです。これは、どういうことなのでしょうか?