Like me

心の理論ほど複雑ではないにしても、乳幼児は他者の心に対して感受性があるようです。では、まだできないと言われている時期である3歳以前の乳幼児ではどのように他者認識をしているのでしょうか?これには、色々な議論があるそうです。メルツォフ博士は、新生児模倣を含む乳児の模倣能力に関する知見を基に、ライクミー(Like me自分のよう)理論を提唱しているそうです。この理論は、新生児模倣が心の理論の発達の基盤にあるという考えです。この理論によると、新生児模倣に見られるように、生まれつき自己の行動と他者の行動の間にはつながりがあると想定します。次の段階で、自分の行為とその行為の背後にある自分の心的状態の関連に気づき、最終的に、これらを基に心の理論を含む他者の心の理解を発達させるというのです。新生児模倣が他者認識の原点だと考えるのが、それに対して異論も多くあるそうです。

メルツォフ博士は、わが子が、生後間もないころに、他者の顔の動き、特に舌出し行動などを模倣することを見出したことで有名です。その新生児模倣を基に、”like me”理論を提唱しています。この理論は、新生児模倣が心の理論などの他者理解の発達の基盤にあるという考えですが、一方、近年になって、この新生児模倣がミラーニューロンシステムとの関連があるのではないかと指摘されているそうです。その関連は、実証的な知見も報告されつつあるようです。

ミラーニューロンシステムは、1990年代にサルにおいて偶然と発見されたニューロンです。その発見の経緯については、私のブログで2012年8月8日から8月21日まで、「ミラーニューロンの発見」というタイトルで14回に分けて説明していますので、詳しくはそのブログを読んでみてください。そのミラーニューロンと新生児模倣の関係は、やはりサルを対象にした研究で確認されているそうです。フェラーリ博士はアカゲザルの新生児の脳活動を、脳波計を用いて計測したそうです。その結果、ある帯状の脳波が、自身の表情を産出しているとき、及び他者の表情を観察しているときに抑制されることが示されたのです。このような脳波の抑制は、ミラーニューロンシステムの指標だと考えられており、新生児模倣が、ミラーニューロンシステムに関連している可能性が示唆されていることになるそうです。

また、乳児は他者の顔に対する選好を見せるそうです。ジョンソン博士らは、顔らしい配置をしたパターンを新生児に見せたところ、新生児が好んでこのような図形を見つめることを示したそうです。顔そのものではなく、顔らしいパターンを見つめる点が重要だと言います。顔認識だけでなく、近年では、新生児が生物らしい動きに対して、感受性があることも示されています。大人は、白い点が動いているだけなのに、生物らしさを感じ取ってしまいますが、新生児にひよこの生物らしい動きと、ランダムに光点が動く映像を見せたところ、ひよこの動きのほうを好んで見ることが示されたそうです。

もうひとつ重要なのが、他者の視線に対する反応です。人間にとってアイコンタクトは重要な意味を持つと言われています。たとえば、サッカーの試合で声を出してボールを要求すると、相手に意図を読まれてしまうので、アイコンタクトだけで味方にボールを要求することがあります。では、乳児は、アイコンタクトから意図を読み取ることはできるのでしょうか?