日本の子どもは?

以前のブログで、誤信念課題に対して、日本の研究者が学会で「助っ人理論」という他人からの助けがあると、その課題はそうでないときと比べて早い時期から達成するという研究を学会で発表したところ、それは、日本人だからではないかと評価されたことを紹介しました。もし、その地域ならでは特徴があるとしたら、私は、例えばマシュマロテストにおいても、助っ人理論が成り立つことを園で証明したのですが、それは、日本人特有かもしれないと思ったのです。それは、他の研究においてもあり得ることかも知れません。

モジュール説に従えば、どの文化に住む人間も、同じような時期に、同じように心の理論が発達するはずです。たしかに、多くの文化の子どもで4歳半頃に心の理論が発達するのですが、日本の子どもは誤信念理解の発達が遅いということが指摘されていることも以前紹介しました。内藤博士の研究では、日本の子どもの発達はイギリスの子どもに比べて2年近く遅いことが示されているそうです。なぜ日本の子どもは成績が悪いのでしょうか?いくつかの可能性が考えられているそうです。例えば、日本は他の国とは異なった心の理解の仕方をしている可能性もありますし、実験者が子どもの成績を低く見積もっているという可能性もあるでしょう。森口は、後者の可能性について検討してみたそうです。

子どもの研究では誰でも経験することですが、日本の子どもは、見知らぬ他者とのやり取りが得意ではないと言われています。日本の子どもは言語的やり取りをする課題では黙りこくってしまうことが多いと、嘆く外国研究者もいるそうです。これらから推測されるのは、日本人の子どもは、言語的に質問をされることが苦手ではないかという可能性があるということです。子どもは誤信念理解をしているのですが、言語的に質問されるのに慣れていないため、正しく答えることができないのかもしれないと森口は考えたのです。

そこで彼は、子どもに言語誤信念課題と非言語誤信念課題を与えてみたそうです。非言語課題の場合では、言語的には質問されません。この二つの課題を欧米の子どもに与えてもその成績にはほとんど違いがありませんでしたが、日本人幼児に与えた結果、非言語課題の成績は、言語課題の成績よりも良いという結果が得られたそうです。この結果から、日本人幼児の発達が遅いとされた理由の一つとして、言語的に質問されるのが苦手であることが挙げられそうだと森口は言うのです。もちろん、日本の子どもは他の国とは異なった心の理解の仕方をしている可能性もあるので、今後の研究で探っていく必要はあると考えているようです。

心の理論の発達については、こんな議論が交わされていたそうです。しかし、他者の心を理解する能力がこの時期に急に出現するわけではありません。これは、常々私が主張していることで、発達には連続性があることから、その準備期はまだ表出していなくても、その時期があるからこそ、その後表出することになるのだと思っているのです。森口も、乳児や幼児に接したらわかるとおり、心の理論ほど複雑ではないにしても、乳幼児は他者の心に対して感受性があるように思えると言います。ということで、森口は、まだできないと言われている時期である3歳以前の乳幼児ではどのように他者認識をしているかの研究を紹介しています。