保育の質に関して、規定的特徴やプロセス的特徴が必要であるということですが、実はこの特徴は、それぞれ違った観点から質に影響しているのではないということがわかっているようです。それは、部屋の広さがゆったりしているとか、保育者の配置基準がいいと、よりポジティブな養育が行なわれているということのようです。例えが酷かもしれませんが、「貧すれば鈍する」という言葉が当てはまるようです。ただ、どこでも必ずしもそうであると言うことではなく、もちろん、環境がそれほど良くなくてもがんばってよい保育をしようとするところも多いのでしょうが、やはり、狭いことが子どもの発達に直接影響をすることはもちろん、そこで保育する保育者の態度にも影響するということです。
具体的にはこういったことがわかったと言います。比較的子どもの数が少なく、保育者が多い施設で、教育歴が高くよくトレーニングされた保育者が子どものケアをしている場合、そこに預けられている幼い子どもたちは、保育者に温かく接してもらうことができ、また、保育者も子どもに十分に目を向けることができて、遊びも知的なものになる傾向があったそうです。そして、よく発達していくことになるというのです。
それとは逆に、子どもの数が多く、保育者の数が少ない施設で、教育やトレーニングがあまり十分ではない保育者にケアされている状況では、保育の質は低くなりがちで、子どもの発達の伸びにも制限がもたらされていることになるというのです。
では、質の高さは、そのような基準で測るのでしょうか?なぜ、質の高さが必要になるのでしょうか?NICHDでは、それを、子どもの行動や発達との関連について研究しています。しかし、子どもの発達や行動は、乳幼児施設からだけの影響で決まるのでしょうか?そのほかにも、子どもを取り巻くさまざまな影響が考えられます。そこで、NICHDでは、子どもの家族が持っている特徴、家庭の文化的・人種的背景や、親の教育歴などと保育施設の特徴との関連も考慮しながら検討を進めたそうです。
その結果、保育の質と子どもの知的・言語的発達における関連では、こういうことがわかったそうです。3歳になるまでの間、より質の高い保育を受け続けた子どもは、そうでない子どもと比べ、この期間を通して知的能力と言語発達がいくぶんよかったと言います。また、3歳までの知的能力と言語能力の発達に、最も強く関連していた保育の質は、保育者の言葉の使い方に関するものだったということです。保育者が、子どもに質問したり、子どもの発現や発声に積極的に反応したり、子どもに対するその他の言葉がけなどが、ポジティブ養育の要素としてあげられていましたが、それらは、よりよい知的・言語的発達に若干の関連を示したそうです。
また、3歳までのより質の高い保育は、4歳半の時の言語能力や数字の理解といった標準テストの点に表わされる就学準備の良好さと関連している事もわかったと言います。このように、子どもの知的・言語的発達と保育の質とに関連があることが示されたのですが、この関連は強いものとは言えず、家庭や両親についての要因のほうが、保育の質よりも子どもの発達と深い関わりを持っていたそうです。保育の質の高低による知的発達と言語発達の差よりも、家族の特徴の差による違いのほうが大きいことがわかったと言います。