さまざまな条件

 女の子の方が長く待つ意欲も能力も高いということが、アメリカでは学校時代を通じて、たいてい女の子の方が男の子よりも、教師や親や本人による自立心の評価が高いという研究結果が出ているそうです。誕生後の4年間でさえ、女の子は一般に男の子よりも従順であるとミシェルは言います。子ども時代の後期には、平均すると、女の子の方がたいてい学業で自律的と見なされ、男の子よりも良い成績をとることが多いと言われています。しかし、子どもたち自身を含め、評価する人間は、性差に関する文化的な固定観念を共有していると言います。まじめで、細かいところまで注意を払うのが「良い女の子」、もっと衝動的で、コントロールしづらく、乱暴でさえあり、かけ算よりもフットボールのタックルの練習に余念がないのが、「本物の男の子」という思い込みがあります。「今日55ドルもらう、あるいは、61日後に75ドルもらうという選択肢があったとすれば、どちらの方がいいですか?」といった、報酬の受け取りの先延ばしを含む仮定的な質問をされると、女の子は男の子よりも先延ばしを選ぶことが多い結果が出ています。しかし、選択肢が仮のものではなく、たとえば、1ドル札の入った封筒を今日もらっておしまいにするか、きっかり1週間後にそれを返して2ドルもらうかというような現実のものであれば、性差は消えてなくなったそうです。面白い結果ですね。どうしてでしょうか?

 ミシェルらは、マシュマロ実験そのほかの自制に関する基準で、性差に注意すべきであるということを学びます。いつも性差が見つかるとは限りませんが、少なくとも、これまでに研究された母集団と年齢層では、欲求充足の先延ばしを可能にする認知的自制スキル動機づけの点で、全体として、女の子の方が優位であるようだと考えています。

 誘惑に対処するときに、「ホットシステムから一時的にのがれるには、他の人ならどう行動するだろうか?」と想像するのも一つの手だと言います。自分自身ではなく、他人のためにホットな選択をするときのほうが、クールシステムを使うのが楽だからです。ある研究者が、こんな話をミシェルにしたそうです。未就学児に、今すぐ小さなチョコレートをもらうか、10分後にとても大きなチョコレートをもらうかという選択について考えてもらったときに、彼が幼い男の子に「お利口な子どもはどっちを選ぶだろうね?」と尋ねると、「待つだろう」とその子は答えました。しかし、「君はどうする?」と訊かれると、男の子は「今もらう!」と答えたそうです。

 3歳児を対象とした実験でも、同じ結果が得られたと言います。子どもたちは、少ない報酬をただちにもらうか、多くの報酬をあとでもらうかという選択肢を与えられたのです。この実験者が、「おじさんならどちらを選ぶと思う?」と聞くと、このときは、子どもたちはクールなシステムを使うことができ、先延ばしにした報酬と答えることが多かったそうです。しかし、自分で選ぶときには、ホットになって、ほとんどの子が少ない報酬をすぐもらったのです。

 たしかに、誘惑に対処するときに、他の人ならどう行動するだろうか?と想像すると、ホットシステムから一時的にのがれることができそうです。自分を客観的に見つめることが、クールにするために有効だということですね。それは、ある意味で気をそらすということに通じるような気がします。

さまざまな条件” への15件のコメント

  1. 「これまでに研究された母集団と年齢層では、欲求充足の先延ばしを可能にする認知的自制スキル動機づけの点で、全体として、女の子の方が優位であるようだと考えています」とありました。それがいつもそうだとは限りませんが、全体として女の子の方が優位であると考えられるのですね。それは狩りをしていた時代に、男性が狩ってきた獲物を女性が先のことを考えて、今日はこれだけ食べよう、明日はこれだけ食べようといったことを考えていたりしたからなのかなと想像しました。勝手な想像ですが、そんなことを思いました。選択肢が仮のものではなく、現実のものになると性差が消えてしまうというのもおもしろいですね。自分のことになると客観性が低くなってしまうのですかね。また、それに関連して、ホットシステムから一時のがれるためには他人ならどう考えるかということが有効になるとありました。自分ではなく、他者を想像することで客観的になれるということからは、乳児からの他者、集団の大切さを感じさせるようでもあります。また、子どもがホットな状態の時に他者の行動がイメージされるような声がけも有効になってくるのかもしれませんね。

  2. 男女という異なりにおいて、自制心という能力への性差が存在するというのは、面白いですね。体の成熟も、女性の方が早いということから、心と体の関連性から、自制心という面でも異なりが生じているのでしょうか。それとも、男性脳や女性脳という根本の異なりなのでしょうか。また、欲求充足の先延ばしを可能にするため、「ホットシステムから一時的にのがれるには、他の人ならどう行動するだろうか?」と考えるのも効果的であると書かれていました。よく、憧れの人を想像し、「あの人ならどうするだろうか?」と考えている人は多いと思います。そのような思考になっている時は、もしかすると、自分のホットさをまさにコントロールしようとしているのかもしれませんね。そして、「気をそらす」という言葉が印象に残りました。子どもの気持ちや欲求を理解しながら、生活の区切りにおいて子どもを誘導する時など、その誘いが上手な先生は「気をそらす」ということが出来ているようにも思います。その時には、子ども自ら、自分を客観視できる時間を与えているということですね。

  3. 男女間の性差は、マシュマロ実験そのほかの自制に関する基準にも影響を及ぼしているのですね。性差が無くなった事例では、やはり現物を前にすると男女差関係なく、自制が揺らいでしまうことがわかりますね。また、誘惑に対処するときに、「ホットシステムから一時的にのがれるには、他の人ならどう行動するだろうか?」と想像することで、客観的になれるのは納得です。「お利口な子どもはどっちを選ぶだろうね?」等の客観的になれるよう促す声掛けが子どもたちにとても有効になることを知ることができました。これらの対処は、集団であればより活きるように思えました。そして何より今回は、客観視の重要性を感じました。客観のイメージは、物事への距離をとることと捉えていて、そのためには、「他の人ならどうするか?」等の一歩引いて考える手段が必要であり、そうしていく手段を多く身に付けていくことが「見守る」というスタンスにもつながっていくのではないかと思えました。

  4. 性差による違いについては、小学生の頃、女子のほうが成績も良いし、スポーツもよくでき、そして何より先生受けしている姿に接して、女子の優位性を感じていたことを思い起こしました。男子の中にも頭もよく、先生受けしている同級生もいました。そうした男子は女子からも人気がありましたね。とにかく、女子にはかなわないな、ということを思った時もありました。長じて、結婚し子どもを持つと改めて女性の強さを実感することがあります。今回のブログで紹介された実験を読みながら、私はどちらかというと未来志向型でないような気がする、現在最高!型だ、と。しかし、ホットのままではよくありません。「自分自身ではなく、他人のためにホットな選択をするときのほうが、クールシステムを使うのが楽」とありました。他人のため、は同時に自分のためでもあるでしょう。自己を振り返る際、有用なスケールを私たちは手に入れた?ような気がします。いずれにせよ、他者のマインドを察する。この「察する力」を私たちは身に就かないと、と思った次第です。

  5. 自制心にも男女の性差が見られるということなんですね。
    書いてある通り、女の子は遊びの部分でも、お母さんの化粧しているのを真似てみたり、掃除や洗濯、料理など大人をみて、真似るのを好む傾向があり、男の子は戦いや車を走らせるなどの子どもを見て、真似る傾向があるように思います。
    〝自分を客観的に見つめることが、クールにするために有効だ〟とありますが、子どもたちの誘い方や誘導が上手な人は、子どもが自分のことを客観的に見ることのお手伝いをしてあげるようなことをしているのでは…と思いました。
    今度、自分もその部分を意識して子どもと接してみようと思います。

  6. 女の子の方が男の子よりも自制心を保つということが評価として高いという結果を見て、園の中にいる女の子は、どことなく、冷静で、これは、とても大切な話だからねとさきに伝えておくと、これは、聞かないといけないと、話で盛り上がっていた女の子も、聞く体勢になりますし、例えば、男の子が遊びになって夢中になり、ホットな状態でいるのを、少し客観的に見て、今の状態を伝えようとします。゛ホットシステムから一時的にのがれるには、他の人ならどう行動するだろうか゛とあることが、女の子は、自己分析能力が遊び、同性である、母親の振る舞いやまた、年上の女の子を見て、学びとっていることが男の子より、意思が強い気がしました。それが少しずつ、他の人ならどう行動するだろうということが男女関係なく、考えることをするように思えました。このことも、文章にあるような様々な条件によるもので、変わってくるものであり、そのなかで、ホットからのクールな状態になるために、気をそらす術を学んでいるように考えられます。

  7.  〝たしかに、誘惑に対処するときに、他の人ならどう行動するだろうか?と想像すると、ホットシステムから一時的にのがれることができそうです。自分を客観的に見つめることが、クールにするために有効だということですね。それは、ある意味で気をそらすということに通じるような気がします。〟自分の中の自分というのは、見えているようでそうそう見えていないものですね。口から出てくる言葉でやっとその人が今どんなことを考えているのか、ということがわかる、というのは、とても得なことだと思いました。言葉を選び、また、人の思いを汲み、そして、自分を客観的に見るために、自分ではない誰かだったらどう行動する?と考えて見る。その思考回路が早ければ早い程良くて、むしろ瞬時にそれができるようになってこそ、その人の立場、その人の人間としての立場が上がってくるのではないか、と思います。
     そもそも熱い想いというのは、誰しもが持つ生まれ持ったものだとすれば、火事で大やけどをする程に薪をくべることもないのかもわからないですね。傍にいる人を暖める為の炎を、絶やさず燃やし続ける。こういうことなのかもしれません。

  8. 面白い実験結果ですね。男女差の違いはある程度想像できますが、子ども達の中で客観的にみることができるというのは驚きました。他人の場合と自分の場合ではここまで差が出るのですね。このことを頭に入れて子ども達と接すると、また一つ保育の楽しみが生まれるような気がします。娘に選択肢を求めて話をするときに、最近じっと考える姿をよく見ます。自分の中で今回の実験のようなことを想像しているのだと思い浮かべました。

  9. 今のクラスを見ていると精神年齢が高いのはやはり女の子であることが見ていてよくわかります。「欲求充足の先延ばしを可能にする認知的自制スキル動機づけの点で、全体として、女の子の方が優位であるようだと考えています。」というのはなんだかわかる気がしますね。さらに面白いのは男の子でも他の人ならどうするだろうかという質問をすることでクールなシステムを使えるというのはおもしろいですね。明日の朝の会で5歳児クラスの子たちに聞いてもらうかもらわないかを想像してもらい聞いてみたいと思います。どんな答えが帰ってくるか楽しみです。ただもうみんな6歳なので「欲求充足の先延ばし」が出来ているのかもしれませんが。自分のことと、他の人で考えるとこうもホット、クールの使い分けができるのもすごいですね。始める前に他の人だったらどうするかな?という問いをするのも先延ばしの練習になりそうですね。

  10. よく自分を客観視する必要があると言います。案外、言葉では簡単に分かっていても、実際には難しく、気づくと自分本位の見方になっていたり・・・。自分の話しになるのですが、私もよく自分本位の考え方になりがちで、よく反省します。なぜアノ人はこういう考え方をするのだろう?こういう行動をするのだとう?と、でもその時に冷静になり、それこそ自分を客観視することで、相手の気持ちになってみたり、他人の意見を積極的に聞いてみたりと、ここでいうクールシステムを使うようになった気がします。その他にも色々な場面で私は「藤森先生ならば・・・」と考えます。それが合っているか合っていないかどうか分かりませんが、一旦、落ち着くことで、自分の気をそらしているのかもしれません。

  11. 面白い実験結果ですね。3歳児も客観的に考えることは可能ですが、それができるかできないかは別の話なのでしょうね。
    私も保育をしていて迷う時は、「藤森先生はどう考えるのだろう?」「理念に沿っているだろうか?」と考えることで客観的に考えることができているのだと思います。本当にできているのかは置いときまして・・・。
    しかし、その客観的に考えることができる時には余裕も必要でそこまで至らない場合もあります。ストレスフルの社会の中で、いかに周りと協力し貢献するためには、クールになる必要が求められていることが実感できます。

  12. 客観的に自分自身を捉えるというような、一旦、自分から離れることでクールになるということは分かるような気がします。昔、ある人から物事を考える際、そのことについて全体が盛り上がっている時ほど、一歩引いて別の角度から見ることを意識したほうが良いというアドバイスをもらったことがあります。これと同じように、ホットなシステムが働いている時ほど、他の人ならどうするだろうというように、自分から一旦引いて客観的に見ることが自分自身の想いや衝動と向き合うことにつながり、冷静な判断、または自制することにもなるのでしょうね。特に考えるよりも体の方が先に動いてしまうタイプの私は、これらことを意識することが必要だと強く感じています。

  13. 性別による差があるかどうか。やはり、女の子の方がクールになれるイメージを持つのは、自然な流れなのでしょうね。ですが、ホットな答えをしてしまう男の子のほうにも少し遊び心のようなものを、自分が男子だからでしょうか。様々な条件により、待つ意識が変わること。それは保育においても、保育者がどんな言葉がけで、何を見ていくかということが言われているような気がします。子どもたちが場面によって、ホットやクールにならなければならない時、どんな言葉がけを知るかしっかりと考えていきたいと思います。

  14. 「誘惑に対処する時に、ほかの人ならどう行動するだろうか?と想像すると、ホットシステムから一時的に逃れることができる。」とあります。確かに、そう考えることで、自分の行動を改めて考えることになりますし、それが客観視につながっているとも思います。そして、それが結果として、クールなシステムを使うことになっているということもよくわかります。見守る保育を知り、藤森先生と話をすることで、「なるほどそう考えればいいのか」「こう考えると問題が明確になりますね」と思うことがおおくあり、今の自分の保育においてもとても活きていることが多いです。その考えはいつしか「藤森先生ならどうとらえるかな」と思うようになり、自分の悩みを前向きにとらえることにとても活かされています。まさに【イライラする】というホットな状態から「落ち着く」というクールな状態に持って行っているのですね

  15. この実験のように、男女での差というのは何となくわかるような気がします。私が小学生の頃も女の子の方がクールな感じで、男の子の方が目の前にある楽しそうなことに対して周りを考えず、一直線に向かてしまっていたような印象です。保育園で働くようになりその印象は、今でもそこまで変わらないと面白く感じたことがありました。ただ「子どもたちはクールなシステムを使うことができ、先延ばしにした報酬と答えることが多かったそうです。しかし、自分で選ぶときには、ホットになって、ほとんどの子が少ない報酬をすぐもらったのです。」とあったように、クールシステムを使う事が出来ても結果的にホットになってしまうのは面白い結果でしたね。

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