いつの頃か忘れてしまいました、私がよく夜中に仕事か勉強をしていたころ、テレビである俳優の出演映画を一挙放映していたことがあり、すっかりその俳優のファンになりました。その俳優とは、「市川雷蔵」です。正確に言うと、「市川雷蔵8代目」です。今の若い人は、ほとんど彼を知らないようです。それは、彼が、1969年(昭和44年)に、37歳という若さで亡くなったということもあるのでしょう。
彼の出演代表作というと多くの人が知っているのは、柴田錬三郎の小説が原作である「眠狂四郎」です。中里介山著作「大菩薩峠」の主人公机竜之助に端を発するニヒル剣士であり、転びバテレンと日本人の混血という出自を持ち、その生い立ちを背負い、虚無感を持ちつつ「円月殺法」という剣術を用いて無敵の活躍をしました。この原作の映画化にあたり、初めは、鶴田浩二が演じ、3作つくられました。その後、市川雷蔵主演のシリーズは、全12作つくられ、映画化作品としては最も有名で、雷蔵の当たり役となっています。
市川雷蔵は、このようなニヒルな役は、自分の出生と合わせてとてもはまり役ですが、一方、私が好きな作品に「好色一代男」があります。江戸文学の最高傑作である井原西鶴原作の映画化ですが、一代の放蕩児として女から女へ、やわ肌の中に永遠なるものを求めてやまなかった世之介の半生を、ゆたかなエロチシズムの中に、強烈に、しかも面白く描きだしていました。勘当されたり、寺に出されたり、駆け落ちしたり、捕らえられたり、最後は、世の中のがめつさをいやというほど知らされ、好色丸に乗り、波のユートピアに向って船出するのです。この徹底したお気楽人生を、市川雷蔵は、ニヒルさと打って変わって、無責任の遊び人でありながら、生活のたくましさを兼ね備えた主人公を演じていました。
もう一つ、現代劇で印象に残っている作品があります。それは、日本陸軍の諜報員養成機関といわれる陸軍中野学校の実態を描いた「陸軍中野学校」です。この映画では、「大菩薩峠」「眠狂四郎」シリーズで培ってきたクールで無頼な二枚目役の延長線上にあり、まさにハマリ役でした。この「陸軍中野学校」があった場所には石碑が建っているようです。そこは、早稲田通りに面した、中野にある東京警察病院の敷地内のようです。このあたり一帯が学校だったのですが、それ以前は、そこは、「犬屋敷」でした。犬屋敷とは、5代将軍徳川綱吉が設けた幕府の野犬保護施設で、犬を囲って飼育したことから「お囲い御用屋敷」ともいったそうです。ですから、中野4丁目あたりの旧町名「囲町」は、これに由来しているそうです。
綱吉は「生類憐の令」によって殺生を禁じ、特に犬の保護策を強行しました。「中野区の史蹟」によると、江戸郊外の中野に最も大規模な犬屋敷を造らせ、支配役以下多数の役人や医者を置いて、野犬の飼育にあたらせたのです大きさは、約30万坪(100ヘクタール)に及び、5つの犬囲いには、各数百棟の犬小屋・餌場・日除け場・子犬養育場があって、最盛期には8万数先頭もいたそうです。その飼料費は、なんと年額9万8千両にも達したそうです。
この場所に、「ブラヘイジ」で行きました。涼しくなったので、また、時間を見て出かけようと思っています。