人間力

ネットの普及は、漢字を忘れたりという書く能力の低下だけでなく、話す力、聞く力の低下も招いているようです。当然、これらの力の低下は、コミュニケーション力の低下を招くことになります。2011年度における「国語に関する世論調査」の結果でのそのような傾向が表れています。「人とのコミュニケーションについて」という調査も行っています。しかし、その結果を見ると、その原因として、ネット社会化だけでなく、少子化も影響している気がします。それは、国語力だけでなく、他人との関係を持つことが少なく、関係性の構築が苦手であったり、相手に対する共感力の低下にもつながる気がします。

まず、初めて会った人と話をすることについて、「得意である」人の割合が42.9%であるのに対して、「苦手である」人の割合が55.5%と、10ポイント以上も上回っています。これは、ただ人見知りが増えたということのような気がしますが、実は、「得意である」と答えた人に、初めての人と話をするときに重視している点をたずねると、「相手の話をよく聞く 71.8%」「相手の目や表情を見て話す 60.8%」「相手に不快感を与えないようにする 60.5%」「気持ちが伝わるように話す 55.7%」等が上位を占めています。反対に、「苦手である」人に、初めての人と話をするときに何が難しいと感じるかをたずねると、「相手に不快感を与えないようにする 43.9%」「気持ちが伝わるように話す 36.4%」「相手の目や表情を見て話す 26.7%」「相手に気持ちよく話してもらうようにする 23.2%」等となっています。

この理由を見ると、やはり、話す力、聞く力が衰えている気がします。それは、言葉だけでなく、相手の表情、気持ちの伝達など非言語コミュニケーション力の低下も見られます。ということは、どうも、ただ国語の授業を増やすとか、国語の授業を増やすという学力の向上だけでは解決しないと思います。

先日の10月6日の朝日新聞に「いま子どもたちは」という連載コラムに、海陽中等教育学校の中島校長の談話が掲載されていました。彼は、東大工学部長などを経て3年前に校長になった人です。この学校の建学の精神は、「次の時代の有為な人材、広い意味のリーダーを育てること」として、それには、基礎学力はもちろんですが、「人間としてのたくましさ、他者との折り合いをつけるなど、人間力をバランスよくつけなければならない」が大切だと言います。その力をつけるために産業界が作ったのがこの学校です。だからといって、難関大学への合格とか、大企業の幹部育成を目指しているわけではなく、世界の様々な分野のリーダーを育てたいのだと言います。

そして、基礎学力をつけるのであれば、優れた教員がいれば身に着くのですが、人間力は、教室の授業だけでは十分でないと言います。ということで、この学校は、全寮制をとっているのだそうです。現在、子どもたちは核家族化などで共同生活を苦手とする子どもが多くなったと言います。特に中学受験をするために小学生から塾に通い、学校と熟と家庭の三つの場しか知らない子どもが増えてきていますが、社会のリーダーになるには、仲間との協同が欠かせないと言います。このような考え方からの教育は、着実に実績を生み、リーダーを生み始めているようです。

ただ黙って先生の話を聞く、子ども同士の世界を犠牲にして塾に通う、机に向かって色々なことを覚えることは、学校時代の学力は向上するかもしれませんが、社会に出てからの人間力は、子ども同士の触れ合い、協同から学んでいくもののようです。

人間力” への5件のコメント

  1. 聞く力・話す力で思い出したのが、たまに見ることのあるテレビの討論番組です。意見をぶつけ合うことは大事なのかもしれませんが、いかに相手を言い負かすかに終始しているようであまり気持ちのいいものではありません。この様子を子どもたちが見ているとすると、これがコミュニケーションだと勘違いする子も出てくるんじゃないかと思ってしまいます。大人が示すべきなのは違う意見から出発してお互いが納得できる落としどころを見つける過程ではないのかなと思うのですが。ブログの趣旨とは違っていますが、そんなことをふと思い出しました。で、本題ですが、やはり今必要なのは十分な子ども同士の関わりの場を保障することであるのは間違いないと思います。小学校以降でその体験の場を設けるのが難しいようであれば、尚更保育園のあり方は重要になってくるはずです。乳幼児教育の進むべき方向は定まってきていると思うので、あとはその実践を確かなものにしていくだけだと思っています。

  2. 八王子のわが母校の大学の自慢話をさせてください。母校は、創立者の建学の精神に基づいて「創造的人間」の育成を掲げています。知力だけでなく人間力を育み、社会に貢献できる就業力育成プログラムを構築しています。その就業力とは、次のとおりです。

    ?論理的思考力→複眼的な視点から、論理的に思考を展開する力
    ?言語表現力→日本語及び外国語を用いて、正確な文章を書き、話す力
    ?数量的分析力→数量的・統計的データを正確に把握し、分析する力
    ?体人基礎力→目標に向けて、他者と協力的に仕事を進める力
    ?討議推進力→世界の多様性を理解し、建設的に議論を推進していく力
    ?自己育成力→自らの行動を律し、理想とする自己に近づけていく力
    ?課題達成力→客観的に情報を収集し、本質的な課題を設定する力
    ?目標達成力→自らの計画や目標を、具体的に実現していく力
    ?創造的思考力→既成概念にとらわれず、独創的に考える力
    ?環境変革力→自己の成長を通して環境を価値的に変革していく力

    この10項目の力の習得をガイドする「カリキュラムマップ」や就業力測定テストを基に教員が全学生と面談してアドバイスをします。また、英語で授業を受けるインターナショナルプログラムや留学生との交流も盛んで、多くの学生が在学中に海外留学を経験します。

    嗚呼それにしても、今更ながら、あの青春時代、もっと学問にいそしんでいたら・・・。違う人生もあったかもしれないのに。今となっては詮無い夢ですが。

    少年老い易く学成り難し
    一寸の光陰軽んずべからず
    未だ覚めず池塘春草の夢
    階前の梧葉已に秋声

  3.  まず人間力という言葉を聞いた時に私が思ったのは、人間にしか出来ない事を身に付けることだと思います。そうなると、やはり人とコミュニケーションを取ることです。今は一家に一台、一人一台とパソコンを持っている時代ですから、ネットでのコミュニケーションは必然ですし、ブログにも書いてあるように「少子化」がかなり影響しているようですね。人との触れ合いの機会が少ない中で海陽中の校長先生が言われた言葉はとても感銘しました。私達が目の前にいる子ども達には、有名人になってもらいたい、一流企業の社長になってもらいたい、など思ってもいません。一番は様々な分野で活躍できる人になってもらいたいと思っています。元々頭のいい人に知識で勝負をしようと思っても、勝てるわけがありません。それならば人間力を磨き、自分にしか出来ない事を磨き続けて欲しいです。

  4. 「人間力」私もよくなにも考えず使うことがありますが、やはり意味合いは人とのコミュニケーションが上手な人とのことをいうように思います。そういったかたは人との話を聞くことがうまいですし、どこか安心感があるひとがそういったものを持っているように思います。そういった人間力を持っているひとはやはり幼少期に人との関わりが多い人が高いのかもしれません。今の社会、少子化ですし、地域でも人との関わりはどんどん薄くなってきています。子どもを取り囲む社会自体が閉鎖的になっているから、今回のブログにでてきたような初対面の人との関わりがあまり得意ではないひとが増え続けているのだと思います。また、実体験でも社会に出ると職場のによっては学歴があまり通じないことを感じることが多いです。今回のリーダーとなるひとを育てる場合、もちろん博識にこしたことはないですが、それよりももっと必要な部分があり、それが人間力だというのはその通りだと思います最近の教育は万能を求めるあまり、器用貧乏になっているのかもしれませんね。

  5. 自分の子のことを振り返りながら今回のブログを呼んでみました。「ただ黙って先生の話を聞く」はこれは親同様あり得ないようです。まぁ、親は黙っていないで言い返してしまいますが、息子のほうは賢く、本当に聞いていないようです。「先生の話」がわけのわからない命令であることが多いからだそうです。そして「子ども同士の世界を犠牲にして塾に通う」ことはせず、遊び相手を探して日々過ごしています。6年生にもなるとほとんど中学受験のため「塾」に通っているので、「塾」の休みを狙って「子ども同士の世界」を作り上げ遊んでいるようです。そして「机に向かって色々なことを覚えること」はありません。結果「学校時代の学力は向上」は期待すべくもなく・・・、です。海陽中等教育学校の中島校長の談話は参考になりますね。「人間としてのたくましさ、他者との折り合いをつけるなど、人間力をバランスよくつけなければならない」ということは全くそのとおりだと思います。「他者との折り合いをつける」、これは私自身の課題でもありますが、バランスのとれた「人間力」の形成は社会の一員として果たさなければならない課題です。

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