もしドラ番外編

ピーター・ドラッカーは、1993年に出版した著書『ポスト資本主義社会』(ダイヤモンド社)の中で、「21世紀は知識が唯一の意義ある経営資源となる」と予想しました。この知識とはどんなものなのでしょうか。ドラッカーは、この言葉をどのような英語単語を使ったのでしょうか。研究室で、いろいろな書物を読み、いろいろな人の考え方を学び、その理論を学ぶことでしょうか。人類がこの世に誕生し、社会を形成するに従って、さまざまな知識を持った人がリーダーとなっていきました。その知識を持って、判断し、将来を見越し、行うべき道を示してきました。そして、皆をひきつれて、その道を進んでいきました。現在で言うと、チームの前面に出て引っ張っていく牽引型リーダーシップのイメージです。しかし、そのようなリーダーは、環境変化がさほど激しくなく、市場分析によって進むべき道筋が見えた時代には通用したのですが、現在では、環境の不確実性が増すにつれ、市場や競合、そして自社をも対象化して分析し、自社が取るべきポジションを決める分析的経営の限界が、欧米でも指摘されるようになってきているようです。
 「日経ビジネス」で、野中郁次郎さんが、「ミドルを軸にイノベーションを起こす」という講座の中で、最近のリーダー像をこう描いています。「チームの前面に出てぐいぐい引っ張っていく牽引力でもなければ、自分が中心となる求心力でもない。いわばチームの「芯」、あるいは「心棒」となって支え、吸引力を持ちながら、全体と個のバランスを絶えずモニタリングし、メンバーの自律性を喚起していく。初めに理論やモデルありきで論理的にブレークダウンし、それに現実を合わせるのではなく、現実のただ中でその時々の文脈に応じて最善の判断を下し、チームで新しい価値を生み出していく。そのような実践的な知恵、すなわち、「実践知」のリーダーが強く求められるようになっている。」
 ここでいう「実践的な知恵」が、ドラッカーの言う21世紀に求められる「知識」なのです。野中さんは、「知識とは単なるデータや情報の集積ではない。思索や実践を通じて自分の中に取り込まれ、血肉化された知であり、その源泉には人間としての信念や思いがある。」と説明しています。今までは、知識は机上で身につけるものと思っていた節がありますが、実は、「人間としての信念や思いから出た思索や実践を通じて自分の中に取り込まれたもの」が知識なのです。そして、組織のメンバーが現場の中で培った知識が、新たな価値へと結実するのだといいます。この知識創造のプロセスを組み込み、イノベーションを不断に起こしていくことのできる組織のみが不確実な時代を生き残るというのです。今の、保育、教育界は、そのような意味で生き残ることができるのでしょうか。ただし、保育、教育の生き残るという意味は、決して継続して経営ができるという意味ではなく、子どもたちにとって必要な施設であり続けることができるかということです。「イノベーションを不断に起こしていく」ことに反して、「今迄のやり方を守る」「変えない」ということに価値を置いていては、生き残ることができないのです。現在の環境の中で生きる子どもたちを守ることはできないのです。
 リーダー像として、「牽引力」から「求心力」、そして、いまは「芯」として支え、「吸引力」を持って、メンバーの自律性を喚起することが求められ、現実に合わせるのではなく、場面に応じて判断を下い、新しい価値を生み出していく柔軟性が求められています。これは、常に実践の中で行われていくものです。

もしドラ番外編” への4件のコメント

  1. なるほど、理想に現実を合わせようという思考ではいけないんですね。おかしな理解をしたまま進んでいってしてしまうところでした。自分の中に「血肉化された知」「実践的な知恵」がどれだけあるか、非常に怪しいところですが、「場面に応じて判断を下い、新しい価値を生み出していく」という自分にとって新しい思考に挑戦してみたいと思います。「継続して経営ができる」ことを目指すのではなく、「子どもたちにとって必要な施設であり続けること」を目指すことも同様です。出発点を間違えていたことがいろいろとありました。早速修正しなければ・・・。

  2. 「現実のただ中でその時々の文脈に応じて最善の判断を下し、チームで新しい価値を生み出していく」ことが「イノベーション」ですね。これが日々ベースで行われていると一日一日がとても濃く常に未来に向かって創造的です。どの分野においても経験年数が長ければ長いほど「現実に合わせる」ことを是とする傾向があるような気がします。この現実に合わせるは、極端な言い方をすると過去に依拠しているに過ぎない場合です。ところが本当に経験年数を「イノベーション」の日々の積み重ねによって形成してきた方々は決してそのようなことはありませんね。目指すところが本質的あればあるほどその本質に近づくために現実の直視と刷新が必要になってくるのでしょう。それも行動しながら。特に日々心身共にイノベイティブである子どもたちと共にいる大人にはやはり日々のイノベイションが必要だろうと思います。こだわることなく、プレインに、そして楽しく。

  3.  リーダーと聞くと、先頭に立って全体を牽引していく姿がリーダーの存在、役目と思っていました。しかし、このブログやドラッカーの言葉を読むうちに、現在のリーダー像という物が、少し見えてきたように思います。もちろんリーダーとなる素質も大切かもしれませんが、それよりもメンバーの芯となることで、全員を支えることで、メンバーは安心して仕事などに取り組むことができ、それが自然と自立へと喚起するのだと思います。そして、時代によってのリーダー像というのが変化していく中で、その変化にも十分に対応できる柔軟性も必要です。

  4. 「リーダーとは芯となる人、あるいは「心棒」となって支え、吸引力を持ちながら、全体と個のバランスを絶えずモニタリングし、メンバーの自律性を喚起していく。」確かにそれが今求められる人材ですね。今まで私はリーダーとはすべてが「パーフェクト」とイメージがありました。しかし、それではなかなか周りは育たないかもしれません。メンバーの自律性を喚起するというのはリーダーの資質としてこれからますます必要とされるものかもしれません。メンバーの自律を伸ばそうと思うとそれだけの芯と柔軟性が必要になります。その柔軟性があるからこそ、時代の変化にも対応できるのだと思いました。

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