もしドラ10

 私の職場の職員に、こう言われたことがあります。「保育士養成校で、非常に成績がよくて、性格もいい友達がいて、いつも彼から子どものことについていろいろと教わっていた。卒業して、それぞれが違うところに就職してしばらくして会って、保育について話をしたら、彼は、『子どもなんて何にも出来ないから、ビシバシと叩いてもいいから鍛えないといけない。』と言っていいた。その園は、そうすることが方針のようで、就職先によって、ずいぶんと考え方が違ってしまうのですね。」人は、就職先によって考え方が変わってしまうだけでなく、人生そのものも変わってしまうことがあります。ドラッカーは、「組織は人を変える。否応なく変える。人を成長させるか、阻害するか、どちらかである。つくり上げるか、破壊するか、どちらかである。」
 ドラッカーは、アメリカの正規の学校は人材育成の点においてここ40年間じり貧にあると言います。それに対して、幸いなことに非公式の教育やトレーニングは、参加者の数でも、使われている金の面でも、正規の教育と同じくらい大きなものになっており、極めて盛んであると言います。それは、昨日のブログで書いた「不得意なことをやらせない」「近視眼的な見方をしてはならない」ということのようです。そして、人を育成することに成功している人が言う次のようなポイントを示しています。リーダーを養成するために若い人に対し、与える四つのものは何かというと、「導いてやる相談役」「技術を伸ばしてやる教師」「進歩を評価してやる判定人」「励ましてやる激励者」特に、一番上に立つ者しか本当の激励者にはなれないと言います。「若いうちは失敗を経験すべきであるだけに、若者にとって大きな助けとなる励ましが不可欠だ。そうでないと若者は伸びない。打ちのめされて倒れたとき、誰かが抱き起してやり、続けろと言ってやらなければならない。」
 人々を育成する方法として、もっとも有効かつ大事なことは、彼らを教師として使うことであると言います。「立派な教師ほど学んでいる人はいない。また、教師として選ぶことは、その人を認める最も効果的な方法である。セールスマンでも赤十字の人でも、『どうして、そのようにうまくやれるのか教えてほしい』といわれることほど、うれしい褒め方はない。」私は、高校などから、「保育園とは?」とか、「保育者の仕事とは?」という話をしてほしいという依頼があるときは、私の園の職員を交代で派遣します。人に話をしてくるほど、自ら仕事内容を確認し、仕事に対して自覚するようになるからです。当然リーダーは、若い人よりはいろいろなことを知っています。ですから、いろいろなことを教えようとします。聴いている方は、「はい、はい」と頷いても、いざ自分で動こうとするときに動けなくなってしまいますし、人の顔色を見るようになってしまいます。園でも、急に年長さんがしっかりしてくるのは、下の年齢の子にいろいろと教える機会が増えるからでしょう。
 一人ひとりの人材を育成すると同時に、組織はうまくいけばいくほど、チームをつくる必要があるとドラッカーは言います。非営利機関で、極めてトップが有能で、スタッフも献身的に働いているにもかかわらず、チーム作りができないばかりに失敗し、道を間違えてしまうこともあります。「成功するチームを作り上げようとするのであれば、人からスタートしてはならない。仕事からスタートしなければならない。“われわれは、何をしようとしているのか。そのために主な活動は何か”を考えなければならない。」また、よくある間違いは、「皆同じチームにいるのだから、同じように考え、同じように活動すると思い込むことである。決してそのようなことはない。チームの意義は、それぞれの強みを有効に働かせるとともに、それぞれの弱みを関係のないものにすることにある。各人が、チームの一員である各人を動かすのである。重要なことは、各人の成果と強みを共通の努力へ向けて統合することである。」と言います。
 とかく、自分は有能であると思い込んでいるリーダーは、皆を一つにまとめ、一つの方向に持っていこうとしがちです。それでは、自分の能力を超えることはできません。