もしドラ9

 日本人は、決断することが苦手だと言われています。どちらにもとれるような言い方をしたり、曖昧な言い方をすることがよくあります。また、語尾を濁すこともよくあります。「NOと言えない日本人」という言葉が日本人の国民性を表すと言われるほど、日本人は世界中で、ハッキリと「YES」「NO」が言えない、ファジーな国民と思われています。それは、日本人がハッキリと決めないことを美徳として思っている部分もあるからなのかもしれません。ですから、ドラッカーが非営利機関が成果を得るために必要な「意志決定」をするのは苦手な人が多いかもしれません。しかし、その意思決定に関して、ドラッカーは日本人に学ぶべき点があると言っています。それは、「日本人は、意思決定を行う前に実行を組み込んでいる。日本の組織では、意思決定によって影響を受ける人は誰でも、特にその特定の実行過程において何かをなすべき人々はすべてその意思決定が行われる前に意見を求められる。このプロセスは信じがたいほど遅く見える。西洋人の目からすると、それはまるで壁を少しずつ登っていくように見える。」
 この過程が、意思決定をしたすぐ後には、すでに組織のすべての関係者がその内容を理解し、行動を開始していると言っています。決定から実行へが意思決定に時間をかけることで素早くなるというのですが、どうでしょうか。ドラッカーは、意思決定が実現されない理由の一つにこれをあげていますが、他に原因として3つあげています。「テスト段階を踏まない」「実行責任者を明確にしない」、そして、最後の一つは、「誰が何をすべきかを誰も考えなかったため、素晴らしい意思決定が大失敗に終わることがよくある」と言います。決定を実行する立場にあるそれぞれの人が、実際に行動できるようにするためには、決定されたことを、どのような形でそれらの人々に伝達すべきか、彼らにどのようなトレーニングが必要か、どのような道具が必要かを考えないといけないのです。そのために、意思決定は、「実際に仕事を行う人々の言葉で表現されなければならないだけではなく、彼らの常識に合わせなければならない。」難しい内容を難しく言うのは簡単ですし、思ってもなかったことで人を脅かすことはできますが、それは実行には結び付きません。私は、できるだけ講演の時の話の内容は、聴く人が具体的イメージをもつことができ、実行にすぐに移せるような言葉で表現しようとしますし、聴く人がまだ表現はできないまでも、心の中で何となく普段から考えていることを、代わりに言葉に表しているのだと思えるようにしています。話を聞いていながら「なるほど」と納得がいっても、では、明日からどうすればいいのかということがわからないようでは、その内容は机の上に描いた餅で終わってしまいます。立派な計画も、意図も、実行されなければ意味がないのです。
 最後に、リーダーは組織内の人々を養成していかなければなりません。その為の注意点をドラッカーは挙げています。「人が不得意なことをやらせようとしてはならない。」ここのところでは、学校と違うことを示しています。学校な場合、当然、子どもができないことに力を入れます。学校としては、子どもたちに基礎的な技術を身に付けさせ、弱点の矯正に取り組まなければならないからです。それに対して、人々が成果を上げるよう期待するのであれば、その人たちの弱みを強調するのではなく、強みを活かすべきであると言います。人は組織で働くようになるころにはそれぞれの個性はもう固まっています。大人に、礼義とたち振る舞いを学び、技能と知識を身につけるよう期待することはできますが、個性については、こちらがこうあってほしいというものではなく、あるがままのものを使わなければならないからです。
 次に気をつけることは、「人を育成するにあたって、近視眼的な見方をしてはならない」ということです。長期的な目標も見定める必要があるのです。そして、「将来を約束したクラウン・プリンスをつくってはならない」と言います。有望株かどうかではなく、その人物の実績に目を向けるべきだというのです。まだまだ、人を育成するうえでの心構えがあるようです。