今年の受賞

 今年のノーベル賞を日本人が2人受賞したという嬉しい知らせがありました。12月10日に行われる授賞式には、各国の駐オスロ大使が招待されているそうですが、その中で、中国政府は各国に欠席を求めています。それは、今年のノーベル平和賞を、中国の人権活動家、劉暁波氏の受賞が決まったからで、彼は現在、中国で服役中だからです。この平和賞の騒ぎから、ノーベル平和賞のみがノルウェー国会が選考、授賞式を行うということを知りました。他の賞の選考機関は、スウェーデンの首都・ストックホルムにあり、物理学賞と化学賞は王立スウェーデン科学アカデミー、医学・生理学はカロリンスカ研究所など、各賞ごとに違います。選考にかかる費用は、1人あたり賞金とほぼ同額である約1億4千万円もかかると言われています。
 最近の科学は、どんどん進歩していて、私のレベルでは受賞の意味とか、その功績を理解することは難しくなっています。今回も、王立スウェーデン科学アカデミーとカロリンスカ研究所が決定した医学、生理学、物理学、化学賞を受賞した6人について、どのような功績かわかりにくいところがあります。
 まず、医学、生理学賞を受賞したイギリスのロバート・エドワーズ氏は、「体外で卵子と精子を融合させる“体外受精”の技術を確立し、不妊に悩む夫婦であっても、子どもを授かることを可能にした」という功績が認められました。現在、世界中の夫婦の10%以上が不妊に悩んであるそうです。しかし、この不妊の人に対する治療法は、昔からほとんどなかったと言われています。そんな中、1950年に、エドワード教授は、受精の仕組みを研究し始めてすぐに、体外で卵子を受精させることができれば不妊治療につながるということに気がつきます。その後、卵子の成熟していく仕組み、ホルモンの働き、受精できるタイミングや条件などを研究し、その成果をもとに、ヒトの卵子を採取し体外で精子と卵子を融合させ、その受精卵が体内と同様な分裂をさせていきます。そして、1978年、初めて体外受精の子どもが生まれ、今では、およそ400万人の子どもが生まれています。その子たちは、長期間の観察の結果、自然妊娠で生まれた子どもと同じように健康であることが分かっています。これによって、多くの不妊に名焼く人々を救ったことになりました。
 物理賞を受賞したイギリスのアンドレ・ゲイム氏とコンスタンチン・ノボスロフ氏は、「優れた特性をもつ素材となる、原子一つ分の厚さのごく薄い炭素の膜“グラフェン”を作成することに成功した」という功績です。この存在は、1940年代から理論的に予言されてはいたのですが、どうつくるかは分からなかったところ、2004年、彼らが、鉛筆の芯に使われている黒鉛から粘着テープを使って薄膜を引きはがして“グラフェン”の作成に成功したのです。この素材は、鋼鉄の100倍以上の強度をもつと同時に伸縮自在で、熱は銅の10倍もよく伝わり、電気は銅と同じ程度よく通します。これが、折り曲げ可能なタッチスクリーンやシリコン半導体に代わる次世代の超高速半導体や太陽電池などに使われています。
 化学賞は、日本の根岸英一氏、鈴木章氏とアメリカのリチャード・ヘック氏が受賞しました。「バラジウムという金属を使い、目的の有機化合物を合成する画期的な方法を開発」した業績が受賞理由です。この方法は、すでに実用化され、医薬品や液晶テレビなどの生産に不可欠なものとなっています。この功績はよくニュースでも流れていましたが、「バラジウム」と「クロスカップリング」というキーワードが何度か説明されていました。
 このように説明する私でも、その深い所や細かいところはチンプンカンプンですが、少なくとも、どんなことでノーベル賞を受賞したかの大まかなところは整理しておきたいところです。