ことば

いよいよNHK大河ドラマ「龍馬伝」が終わりになりそうです。毎回オープニングに歌われる歌が耳についてしまいました。この感動的なオープニングで流れる曲は、リサ・ジェラルドという歌手が歌っています。彼女はアイルランド系のオーストラリア人でこれまでに映画「ヒート HEAT」や「グラディエーター」などの歌も担当しています。彼女の歌は非常に印象的で、その歌詞が、「なんと歌っているのか?」「日本語ではなさそうだ」「英語なのか?」などと話題になりました。龍馬役の福山雅治も、このテーマ曲に興味を持ってしまったと言います。そこで、関係者に確かめたところ、歌っているのは、歌詞ではなくて、こうした歌唱法なんだそうです。歌っているリサ・ジェラルドは、ゴールデングローブ賞の作曲賞を受賞したこともある世界的な実力派で、メロディーラインからのインスピレーションで、歌っているらしいのです。そのインスピレーションは、彼女はオーストラリア生まれなので、周辺島嶼の先住民であるアボリジニのスピリットが影響しているのかもしれません。
歌詞のない歌と言って思い出すのは、チャーリー・チャップリンが監督・製作・脚本・作曲を担当した喜劇映画で、1936年のアメリカ映画「モダン・タイムス」です。私はチャップリン映画が大好きですが、その中でもこの作品は1番見た回数の多いものです。一度は、贅沢をして、一番いい席で見ようと指定席で見たことがあります。
チャップリン演じるチャーリーは大きな工場で職工をしていたが、毎日同じ機械を扱って単調無味な仕事を続けている内に、とうとう気が変になって乱暴を働くようになり病院へ入れられてしまいます。治って退院したのですが、工場はクビになるし、とぼとぼ街を歩いていると暴動の群集に捲込まれて、彼は首謀者と見なされて投獄されてしまいます。しばらくして無罪が判って放免されてしまうのですが、それはまた食べるものも住むところもなくなってしまうということでした。もう一度監獄へ戻る工夫はないものかと考え、無銭飲食をして警察へ引立てられ、牢へ送られる途中である少女と出会います。二人は示し合わして逃亡し、働き始めるのですが、またチャーリーは泥棒の嫌疑を受けて投獄されてしまいます。出て来ると少女はキャバレーの踊り子になって働いていた。彼女の推薦で彼もそこの店で給仕をして歌うことになり、二人とも非常な成功をしますが、少女を感化院へ入れようとされたため、また二人は逃げ出し、旅に出るのです。
チャップリンの映画は、あくまでも無声を貫いていたのですが、本作で、初めてチャップリン自身の肉声を発します。この映画は、資本主義社会を生きている上で、人間の尊厳が失われ、機械の一部分のようになっている世の中を表現しています。そこで、初めて出る声は、スピーカから流れる会社の経営者の労働者をせきたてる声と機械音です。しかし、話の最後のほうで、キャバレーで働き出したチャーリーが歌を歌うことになります。歌詞をシャツの袖口に書いて、みんなの前に立ちます。いざ歌おうとした時、その歌詞を書いた袖口を飛ばしてしまったことに気がつきます。窮地に立たされたチャーリーは、少女のためにどこの国ともわからない言葉で“ティティーナ”という歌を歌います。この歌が、初めてチャップリン自身の声がスクリーンに流れた瞬間でした。無国籍語で、世界中が理解できる身ぶりや表情や心で内容を表しながら歌う姿は、コミカルな歌と踊りでありながらも涙が流れて仕方ありませんでした。
人に気持ちを伝えるのは、言葉ではないことを教えられます。

ことば” への7件のコメント

  1. NHK大河ドラマ「龍馬伝」のオープニングで流れる曲は私も毎回感動しながら聴いています。実は携帯にもダウンロードして暇さえあれば聴いています。とてもいい曲ですね。リサ・ジェラルドさんの声も魅力的でその歌唱法には惚れ惚れします。広上さんの指揮でN響の演奏。現代音楽、ミュージックトゥモローです。「メロディーラインからのインスピレーションで、歌っているらしい」ということは私も聞き及んでいましたが「アボリジニのスピリット」にまでは思いを馳せることはできませんでした。そうなのかもしれませんね。「無国籍語」で歌われる歌、チャーリーチャップリン「モダンタイムス」のそれはおそらくどこかで聴いたのかもしれませんが今は自分の中に残っていません。いつか機会があったらじっくりと聴いてみたいと思います。

  2. 竜馬伝もあと4回で終わってしまいます。28日の最終回では近江屋での暗殺シーンが放送されます。幕府見廻組の刺客によって、盟友中岡慎太郎とともに丸腰のまま竜馬は斬殺されます。「福山竜馬」一世一代の演技に期待しましょう。竜馬の生き方は、平凡な生活に安住している私たちに、カツを入れてくれます。「いったん志を抱けば・・・たとえその目的が成就できなくても、その目的への道中で死ぬべきだ」。「世の中は我を何とも言わば言え 我が成す事は我のみぞ知る」という歌も胸に響きます。あの勇壮なテーマソングは、竜馬の気迫と信念にあふれた生き方を象徴しています。あの歌手は何と歌ってるか気になっていましたが、やっぱり「魂の叫び」だったようですね。

  3. 言葉に頼りきっている自分としては、「気持ちを伝えるのは言葉ではない」ということがとても響いてきました。言葉は手段の一つではありますが、気づくと単に言葉遊びをしているだけということはよくあります。伝えるためにはまずは思いが大切で、言葉以外の表現から伝わることが大きいことを知っておかなければいけないと感じました。

  4. 藤森先生がチャップリンがお好きとは嬉しい限りです。
    モダンタイムスも名作だと思います。
    ティティーナを歌う場面は本当に有名で、自分もよく存じ上げております。
    実は、わたくしもDVDをたくさん所有しておりまして、たまの休みに見ます。
    特に、「街の灯」が大好きです。
    盲目の貧しい花売り娘の手術のために、自身も浮浪者でありながら大奮闘するのですが可笑しさの中にペーソスがあると思っていました。
    お金持ちと勘違いしていた娘が、目が見えるようになって見た浮浪者のチャーリーに小銭をめぐんであげようと手渡した瞬間、盲目のとき覚えていた手の感触で自分のために奮闘した男と気がつく最後のシーンでいつもぼろぼろに泣けてしまいます。
    yamaya様の奥方様やわたしの家内によく見て欲しい映画なのでございます。

  5.  龍馬伝のオープニングの曲は何度も聞いた事がありますが、確かに何て言っているのか気になっていました。まさか、歌詞がなく、歌手がメロディに合わせて、しかもインスピレーションで歌っているとは知りませんでした。とても抽象的な表現になってしまいますが、聞いていて、人間の第六感が刺激される感覚になります。相手に自分の気持ちを伝える場合は言葉が必要になってきます。実際に子ども同士でケンカなど起きた場合、そのように伝えています。しかし、龍馬伝のオープニングの曲やチャップリンの身振り手振り、表情などでも、世界中の人に感動を与えています。気持ちを伝える場合は言葉もとても大切ですが、言葉よりも、伝えたいという思いを強く持つことが重要なのかもしれません。

  6. 人に何かを伝える手段として人は言葉を使います。それが一番簡単な方法だからです。ですが、何かを伝えることや感じることは人の五感に働きかけることではないでしょうか。ドラマなどで役者さんが表情で表現したり、歌手の宇多田ヒカルさんや坂本龍一さんは人がリラックスできるα波を出す歌や音を作り出すことが出来ます。人に何かを伝えたいという思いが大切なのだと思います。私は、子どもたちに色々な表現の仕方や五感を学んでいってほしいと思います。

  7. よく音楽は万国共通であるといろいろなミュージシャンが言っているのを思い出しました。また、ドラマなどで後ろに流れているBGMによってイメージが変わるということも同時に思い出しました。それだけ音というものは人間にいろいろと影響を与えるのだと思います。だからこそ、言葉が通じなくてもいいものはいいとなるのでしょう。言葉とはあくまで手段であると思います。しかし、それよりも何かを伝えようとする力や知ろうとする気持ちがあるから語学の能力も最大限発揮できるようになるのでしょうね。

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