ドイツのケストナー博物館で開かれている「食を巡る400年の歴史」を紹介している記事にはこんなことも書かれてありました。「“乾杯”という行為が、中世では毒を盛っていないという信頼の証だった・・・・・・など、知って面白い雑学も得られる」
以前のブログでドイツでの乾杯をテーマで書いたことがあります。プローストと言いながらグラスの底を合わせるドイツ式の乾杯。日本では、グラスの口元を合わせますが、どちらにしてもどうしてカチーンと合わせるのでしょうか。
乾杯という儀式は、古代に神や死者のために神酒を飲んだ宗教的儀式が起源です。それが次第に人々の健康や成功を祝福する儀礼に変化していったそうです。しかし、グラスを合わせるのはまた違った説がいくつかあります。
「酒の中に宿っている悪魔を追い払うために、グラスを会わせて音を立てる」「グラスを勢いよくぶつけ合うことで、互いの酒を互いのグラスに飛ばしあい、それを混ぜ合わせ、毒が混入していないことを証明しあう」「家の主と客が乾杯し、同時に飲み干すことで、客にすすめる酒に毒が入っていないことを証明する」などです。このように毒が入っていないことを表すのは、王位継承権争いで毒殺合戦が横行した時代であったため、また毒のわかりにくいリキュール類は特に危険な存在であったためにそのような習慣が生まれたと思われます。
一方、中国には“干杯”(ガンベイ)という儀式があります。これは、その字のごとく「杯を乾す」ということで、「グラスを空にする」ということです。また、乾杯はその宴を始める時に1回やるものですが、中国では、最初の一回だけではなく、お酒を飲む際に毎回乾杯することが礼儀です。昔、中国に行ったときに農林局の役人さんたちと飲んだことがあったのですが、それこそ大変でした。毎回干杯をするのですから。しかも、本当に飲みほしたかを毎回グラスの底を見せ合うのです。
乾杯という儀式は、広い意味で食育というか、食の文化の一つであることには違いありません。同じように、 食育には「味覚の教育」が必要であると言われています。フランスでは、ワインの醸造学者が小学校の先生たちと始めたのが、食の本物の味や生産地を知る「味覚の教育」といわれる授業です。映画「未来の食卓」のパンフレットにも「小さい子どもたちは、舌も敏感で、食を五感でとらえます。その大切な時期に、食を通して子どもたちの味覚と豊かな感性を育てる教育が必要である」と書かれてあります。その大切な時期に、食を通して子どもたちの味覚と豊かな感性を育てる教育で、フランスでは多くの小学校で実践され、毎年、味覚の週間としてもイベントでも実施されているそうです。実際に給食のときに子どもたちが好き嫌いを言う時にわかりますが、嫌いな理由が味だけでないことが多いのです。食感、色、舌触り、匂いなどでその食材のイメージを持ってしまいます。そのように子どもたちは、五感から感じることが味にも影響を与えます。
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また、フランスで行われている食育の一環として国で予算をつけて推進しているものに「教育ファーム」があります。いわゆる農家体験です。農家を開放して畜産や農業の様子を子どもたちに体験させて食の現場を知らしめるというものです。
フランスは、食育の先進地といわれています。映画「未来の食卓」は、決して未来ではなく、「現在の食卓」にしていかなければ取り返しがつかなくなってしまいそうです。

” への4件のコメント

  1. 先日、NHKスペシャル「エジプト発掘」という番組で、クレオパトラの妹アルシノエの墓がギリシャで発見されたという話をやっていました。遺骨から生前の顔を復元すると彼女はアフリカ系とエジプト系の混血だったこと。そして死因は病没ではなく、クレオパトラが放った刺客による毒殺だと判明したそうです。クレオパトラも、毒蛇をかませて自殺したわけですから、この頃は頻繁に毒殺が行われていたようです。乾杯の習慣が、それを防ぐために始まったというのはわかる気がします。中国での乾杯は、老酒ですか?下戸の先生にとっては相当苦痛であったことは想像できます(笑)。

  2. こうした話を聞いていると、食文化は栄養学のように食のある部分だけに注目して醸成されてきたのではないんだろうと思えてきます。お酒を飲む際の乾杯や、食材をどのように手に入れてきたかといった命のつながりを知ることなど、様々な要素があって作られてきたんだろうと思います。食文化の歴史や背景に目を向けずに、食育食育と叫んでいるだけでは、現状を変えていくことはできないでしょう。部分にとらわれ過ぎることのないよう、気をつけなければいけないと思っています。

  3.  乾杯の雑学、とても勉強になりました。今まで何も考えずに、乾杯をしていましたが、そこまで深い意味があったのですね。そして中国の乾杯は大変というか・・・恐ろしいですね(笑)
     食育の一環で農業体験はとても良い体験かもしれませんね。園に畑が無い幼稚園や保育園は、だいたい「いもほり遠足」くらいしか農業に関わる機会はないと思います。農業体験を通して、嫌いな野菜など、自分で収穫などをすることによって、食べることができるようになる気がします。野菜を五感から感じる事も、とても大切な食育なんですね。

  4. ドイツ式の乾杯はいいですね。もう癖になっています。グラスの底部分の側面をコ?ンと打ち合わせてビールを頂く。実に格別です。ミュンヘンに行ったとき本場のプローストを経験し感動したことがありました。まるっきしの思い込みですがドイツ式の乾杯で飲むビールは美味しい。最近はビール以外でもグラスを合わせて乾杯する時は必ず底部分の側面を合わせます。さて、好き嫌い大王の私は、「食感、色、舌触り、匂いなどで」好き嫌いが決定します。見た目がダメだと「食べられない」となります。多分食べてみると美味しいのかもしれませんが・・・。それから「匂い」。これも食べる食べないの重要な基準となります。苦手な匂いの食べものは残念ながら「一口でも食べてみて・・・」は全く通用しません。子どもと一緒です。

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