ドイツ報告19

ドイツのバイエルン州のレーゲンスブルグは町全体がユネスコの世界遺産に登録されているだけあって、いたるところに古い、貴重な建物が残っています。街並みも美しい景観を見せてくれます。路地も狭く、所狭しと建物が並んでいます。それでいながら、その街の中にある幼稚園や保育園、学童クラブは、どうしてあんなに広々と、余裕をもって作ることができるのでしょうか?日本では、待機児解消といって、保育所を次々と建設していますが、都会では、場所がないといって、マンションの一室であったり、園庭がない園が多く作られています。また、子ども集団がいないような小規模保育園も作られています。特に、最近は、日本では学童クラブは基本的には全入のため、狭い中に押し込められ、床で宿題をしている姿もよく見かけます。

ミュンヘンも同様に、街中でも十分な広い園舎と広々とした園庭、緑の中を走り回る子どもたち、夏はダイナミックに泥だらけになりながら水遊びをする子どもたち、それでありながら、一人で静かに過ごすことができるスペース、少人数で活動できるような小部屋、ゆったりできる癒しの空間、そんな部屋も用意されています。今回訪れたレーゲンスブルグの学童クラブの園庭は、とても広いだけでなく、石で組まれた水を流す川があり、それをせき止めるダムがあり、流れ込んで水がたまる場所がありました。そこで、子どもたちは暑い盛りでしたから、水着を着て、水を流したり、掛け合ったり、溜まった泥だらけの水たまりに体をつけたりして遊んでいました。また、保護者達が作った土に埋めたトランポリンを飛んだり、最後は、石段にみんな並んで、私たちに歌を披露して歓迎の意を示してくれました。私たちは、その子どもたちの歌を聴きながら、おもてなしのごちそうを満喫しました。そんな余裕が随所に表れていました。

2018年6月22日、今回のドイツ研修の最後の視察の日になりました。毎年感じることですが、ドイツに着いたときは、1週間は長いなあと思うのですが、視察最後の日になると、もう終わってしまうのかと少し寂しくなります。最後の見学先は、レーゲンスブルグの3~6歳児96名の幼稚園です。1995年に設立され、4クラスで構成されています。スタッフは、各クラス2~3名で、合計12名の保育者、他に給食1名、清掃等1名です。この園は、幼稚園ですが、キンダーガルテンとは言わずに、キタ(Kita)と言います。それは、Kindertagesstaetteの略で、意味は、「子どものためのデイケアセンター」で、通常「保育施設」とか、名称としては「保育園・幼稚園」とも訳されているそうです。これは、キンダーガルテンとはどう違いのかは聞きませんでしたが、昨年もらった園の紹介には、「ようこそKITA」と書かれてありました。

この園は、郊外にあるために、もちろん園庭は広々としています。子どもたちはその中で自由に遊んでいるのですが、平均台を渡るような慎重を要する場所にはキチンと保育者がついていました。園庭には、小道、水をせき止めたり流したりする水路、皆で囲んで焚火をする場所、久しぶりに見た虫ハウス、子どもたちが興味を持ちそうなものが自然の中に点在しています。

室内もミュンヘン同様、様々なゾーンで構成されています。その豊富さには目を見張ります。

今年も、いろいろと刺激を受けたドイツ研修でした。オープン保育の実施、そしてそこから見る二者関係愛着からソーシャルネットワークでの愛着の考え方。子どもの権利条約の批准に対して取り組んでいる子どもの保育への参画。そして、小さな科学者への取り組み。そして、保育への取り組みに対しての「ねらい」の考え方など、今後の日本での保育への取り組みに参考になる実践でした。

ドイツ報告18

学童クラブでは、毎年クラブ活動が行われています。それは、子どもたちが好きなことをやるという趣旨からだけでなく、この施設の規模が大きいために、少人数での活動を長期間にわたって行うという意図もあります。その種類としては、陶器、サッカー、演劇、ヨガなどがあるそうです。日本では、東京の学童は非常に多くの子どもたちは、とても狭い部屋の中で宿題をし、遊び、本を読んでいる状況を見ると、こちらの学童の豊かな環境にうらやましくなります。しかも、定員が80名ですが、希望者はもっと多くいるそうですが、定員以上は入れないそうです。広さからみると、どう見ても200名くらいは入所できそうな感じですが。こちらでも、入所には優先順位があるそうで、この学童では、90%の保護者が働いているそうです。

学童クラブは、市内には20か所あるそうですが、現在はその形は大きく2種類あって、この学童クラブのように、放課後ここにきて夕方まで過ごす場所と、学校を午後まで延ばすような形があります。小学校の授業時間が述べることに対して、小学校で教える内容を増やそうとするためなのか、働く女性が増えたため、夕方まで学校にいるような全日制にしようとするのか、どちらが理由かと聞いてみたら、保護者の就労のためだと言っていました。教える内容は、午前中だけでも十分で、今後全日制になっても、午後は課外活動のような、自由遊びのようなことをすると言っていました。

それにしても、ドイツは家庭学習をかなり重視しているので、宿題が多いようです。この学童クラブでも宿題を見る担当保育者が決められています。1年生と2年生のために4人の保育者、3年生と4年生のために別の4人の保育者が担当します。別に宿題担当保育者がいることによって、担当者が頻繁に変わることを防ぎ、子どもたちの学習到達度をより深く把握できると言います。

1日の流れは、他の学童と同じですが、11時15分に学校より児童が到着します。11時30分から13時までは宿題の時間です。終わった子は自由遊びをします。13時から13時45分まで昼食。その後14時15分まで庭遊び、もしくは休憩です。そして、14時15分から17時までの間に、3,4年生のように遅く来てまだ宿題の終わっていない子や、1,2年生でもまだ宿題が終わっていない子は、きちんと最後まで宿題をやります。並行して、自由遊びやプロジェクト保育をします。途中、15時30分から16時までおやつの時間です。そして、17時15分までお迎えの時間です。ただし、金曜日だけは、一切ここでは宿題をやりませんので、自由遊びやプロジェクト保育、お祭り、誕生会などの時間がたっぷりとれるそうです。

自由遊びの過ごし方は、場所はオープン保育です。しかし、その中で定期的な教育的働きかけはします。宿題の見守りは以下のように配慮するそうです。月曜日から木曜日までは、1日の流れの中で重要な位置づけがされます。静かで、落ち着いた学習環境を用意します。そして、すべての課題を終わらせるようにします。しかし、子どもそれぞれの学習能力については考慮します。保育者は、それらをチェックし、自分でやり遂げるように促したり援助をします。ここは塾ではありませんので、必要な子どもたちは、教えることをせず、必要な子どもたちは自宅での学習に任せます。

給食は、温かい、栄養バランスを考えた給食が提供されます。いくつかの異なる飲み物を子どもたちは飲むことができるように用意をしておきます。午後のおやつもこの学童クラブから提供されます。

ドイツ報告17

四日目の午前中、ミュンヘン市の学童保育の視察が終わって、昨年同様、レーゲンスブルグに移動することにしました。午後はレーゲンスブルグの学童施設を見学する予定ですので、昼食は移動の中のバスの中で、日本食の幕の内弁当をいただきました。

午後の視察先は、90年に設置され、2002年に大改装された1年生から4年生までの80名定員のナポレオンシュタインという市立学童施設です。対象児童は、隣接しているナポレオンシュタイン小学校と、特別養護施設の児童を優先するそうです。開所時間は、11時15分から17時15分です。金曜日は、17時までで、学校休暇中は7時30分から17時まで改所しています。1年のうち学校は休暇が60日ほどありますが、学童は、年間30日以上は休所しないことになっているそうです。

保育料は、ひと月163ユーロから181.5ユーロ(約2万3千円ほど)で、保育時間の長さで決まっているそうです。この費用には、給食費も含まれています。ただし、低所得者には軽減措置があり、最も少ない場合は、給食費(17ユーロ25セント)のみが自己負担です。

ドイツでは、保育者には、1級と2級がいます。1級は5年制大学を卒業し、教育学専門家と言われ、2級は、短大か養成校を出て、教育学助手と言われています。この学童には、フルタイムと時短勤務の女性1級保育者が6名、女性2級保育者が3名のほか、1名の男性2級保育者、1名の女性実習生(1年を通じて週三日間自習)が勤務しています。ドイツバイエルン州では、日本同様、非常に保育者不足で、職員が定員に満たないことが多いようです。この学童でも1名不足しているそうですが、レーゲンスブルグ市では、そのために市としてフリー保育者をプールしておき、足りないところに派遣しているおり、この学童も1名はそのような職員だそうです。また、特別養護施設からも来ますので、1名の養護保育者がいて、ケアを必要とする子どもを中心に活動しているそうです。

保育内容としては、幼稚園、保育所同様、バイエルン州における「バイエルン」という陶冶保育プランの基準と、「小学校の終わりまでの陶冶と保育」のガイドラインに沿って計画されるそうです。その中で、この学童の重点項目として、「ジェンダー教育」「それぞれの人格形成における多様な能力を伸ばすこと」「社会性の育成」が挙げられています。

保育は、オープンコンセプトで運営しています。就学前施設同様、児童は、自由遊びの時間には、自分で決めた場所で、自分で決めた友人たちと、自分で決めた遊びをすることができます。そのために、環境として、多様な遊戯室や、学習室が用意され、少人数で遊んだり、一人で静かに過ごしたりできる場所が用意されています。保育者は、2週間ごとに担当する場所が変わります。しかし、保護者との面談のために、児童の発達状態についての記録をとるのは、担当する児童が決められていて、それは、1年間変わりません。この考え方は、私の園も同じです。保護者に「子どもについての相談がある場合、園の職員誰でもいいですよ!」と言っても、逆に誰にすればいいのか迷ってしまいます。ですから、「あなたのお子さんは、○○の先生が担当します」と言います。だからといって、その子を保育するのは、担当保育者がするのではなく、いろいろな保育者が担当します。この学童でも、それと同じようです。

ドイツ報告16

視察四日目になりました。午前中は学童保育の見学です。ドイツでは、小学校、中学校は半日制で、授業は昼までで終わってしまいます。多くの学校では給食もありません。そして、宿題がたくさん出ます。子どもたちは家に帰ると、昼食を食べ、宿題をやらなければなりません。宿題が多いのは、もちろん学校ではやりきれないこともあるのでしょうが、自分で勉強するという習慣をつけるという意図もあるようです。学校では先生から教わりますが、それはやらされている感がありますので、社会に出てから自ら課題に取り組むという姿勢を身につけるということです。

昼で終わってしまうにはもう一つ理由があります。それは、日本と違って、子どもの教育に関して役割分担があるのです。日本では、学校の先生は、教科を教えるだけでなく、生活も、道徳意識もみな教えていきます。しかし、ドイツでは、学校は基本的な、だれでも学ぶべき勉強をする場所ということに特化して、基本的な生活習慣とか、しつけ、道徳規範などは家庭で行います。また、子どもが好きなこと、たとえばスポーツとか、ことは家庭で行う。ドイツでは何でも学校任せではなく、学校(主に学習)・地域社会(スポーツ等のFerein・クラブ活動)・家庭(基本的な生活習慣、躾、道徳)と役割分担がきっちりされています。

また、ドイツでは、就学年齢は決まっているものの、それはその年齢になると小学校に入学するという年齢ではなく、その年齢になると小学校に入学できる権利があるということで、いつから就学するかということは保護者が決めます。わりとインテリの保護者は1年遅らせるそうです。それは、小学校の学年が上がるときにもそうで、保護者がわが子をもう一度1年生をやらせたいと思ったら、その学年にステイします。ですから、各学年のクラスでは、子どもたちの年齢は様々です。だからといって、子どもたちは何の偏見も持っていないようです。

このような状況ですので、ドイツでの学童保育は非常に重要な役割を持っています。訪問した学童クラブは、1年生から4年生まで50名のクラブでした。ドイツでの小学校は4年生までですので、日本のような4年生までということとは事情が違います。スタッフは、9名ですが、ほとんどがパート勤務で、常勤は年長先生だけだそうです。建物は約100年前に建設されたもので、学童保育としては約50年の歴史があるそうです。

小学生の子どもたちは学校が終わってここに来るのですので、11時30分から13時までの間にきます。13時までに帰ってきた子がまずやるのは宿題です。学童クラブの主な活動は、きちんと宿題をやることです。ただし、金曜日に限っては、宿題はここでやらずに家に帰し、家でやってもらいます。そして、13時から14時15分まで昼食を食べます。その後は17時30分まで自由遊びです。ここでも、参画とオープン保育が実施されており、50名全員が一クラスというコンセプトです。週1回は、全体集会があるそうです。参画の考え方は、ここでは保護者に対しても行っています。

保育室は、学童対象であっても、全く幼児施設と同じようなつくりをしています。各部屋には様々なゾーンが用意され、園庭には、柳の木で作られたトンネル、石が点在する庭、環境だけ見れば、幼児施設と見違えるほどです。グッズとして面白かったのは、アルファベットの書いてある袋で、この中に書かれたアルファベットで始まるものを子どもたちが入れるそうです。

ドイツ報告15

三日目に訪問した園は、「小さな科学者」という取り組みをしている園ですから、園のコンセプトは、「小さな科学者」「統合保育」「地域とのつながり」「保護者とのつながり」であり、「すべての物事に対してオープンな心を持ち」、「何事も決めつけない」、「新しいものに取り組むことにもオープン」、「子どもに指示はせず」、「子どもと距離を置いて見守る」です。

子どもが楽しむということが最優先課題であるために、保育プランには、ねらいは立てません。たとえば、「子どもが松ぼっくりを見つける→先生に見て!見て!と言いに来る→先生は一緒に見てみようとする→子どもの疑問には一緒に考える→その手順の記録をとる」

この記録がポートフォリオと呼ばれるものとなり、子どもの関わりながら書いていき、いつでも保護者が見ることができるように置いておきます。また、その記録は、主に写真構成になっています。

テーマに沿った手順には、「実験」「数学」「自然科学」「情報」の四つありますが、その中で情報が最も面白かったそうです。しかし、手順はマニュアルではないので、個人の得意、個性を生かすことが大切です。今年のテーマは、「何か動くものを見つけよう」というものだそうです。

三日目の午後訪れたのは、1958年に小学校として建てられた建物を34年以来幼稚園として利用しているシュタイナー幼稚園です。シュタイナー幼稚園というのは、ルドルフ・シュタイナー思想である人智学に基づく保育実践園です。シュタイナー園は、ドイツが発祥ですが、なかなか見せてくれるところがないために、今年訪れた園は、ほぼ毎年訪れている園です。ですから、その報告は毎年書いています。

この園は0~3歳児が10名、3~6歳児が二クラス50名で、スタッフは清掃スタッフを含んで9名です。7時から登園、8時から10時まで自由遊び、11時前後のおやつを食べ、11時30分から12時30分までが外遊び、13時から14時が昼食、その後外遊び、16時45分に閉園です。どの園でも、デーリーを聞くと、昼食が遅いのにはびっくりします。日本では、随分早いために、午前中の活動がバタバタになってしまうことが多いのですが、ドイツでは昼食があるために、ゆったりと午前中を過ごすことができます。

保育は、自然素材の遊具、ワックスを使ったお絵かき、卒園児による手芸などが特徴的です。また、昼食の献立も曜日ごとに決まっており、保護者が当番制で作り、園にデリバリーします。メニューは、月曜日はスープ、火曜日はジャガイモ、水曜日はピザなどリクエストメニューでお楽しみ、木曜日はヌードル、金曜日はライスが中心です。おやつは、月曜日がコメを使ったもので、牛乳がゆなど、火曜日はクラッカー、水曜日はフィルゼという穀物クッキー、木曜日は麦を脱穀したパン、金曜日はミューズリーという押麦に牛乳を入れたものです。保育のメニューとしては、水曜日は園外活動、木曜日は粉をひく、金曜日はオイルトミューです。

今回、毎年訪れているので、シュタイナー独特の装飾を中心に写真を撮ってみました。自然素材、絹の布、人形などを上手に使っています。

ドイツ報告14

ミュンヘン市での見学も三日目に入りました。幸い、毎日天気には恵まれ、とてもいい気候です。また、21時30分くらいまで明るいので、なんだか得した気分です。

午前中の見学は1996年に設立された定員50名の幼稚園です。3~6歳児まで異年齢2クラスです。スタッフは、クラスに約2.5人の保育者、給食1名、清掃等1名、計7名です。0.5名の保育者は、異文化担当の保育者で、2クラスを随時移動します。

この園では、「小さな科学者たち」の認定を毎年受けている園で、認定証が何枚も壁に貼られています。二日目の午後も認定を受けた園でしたが、その園の見学と、三日目の午前中の園の見学に、ミュンヘン市の「小さな科学者たち」の担当責任者が一緒に参加してくれました。

実は、今回、初日の午後、私と現地で保育者として幼稚園に勤務していて、日本からのツアーのお手伝いをしてくれるベルガーさん(日本人)と、私の助手として一緒にドイツに来ている森口君と三人で、ミュンヘン市の学校局を訪れたのです。それは、昨年ブルグで紹介しましたが、今までミュンヘンで大変お世話になっていた幼稚園局長のグレッチェさんが、レーゲンスブルグへ移動になって、新しい局長さんになったからです。学校局で出迎えてくれたのは、局長さんほか、視察担当責任者と、今回、見学先の要望の一つの科学への取り組みに対して、「小さな科学者たち」の責任者の3人でした。そこでは、それぞれの国の課題について話をしました。少子化、保育者不足、待機児、様々な事情は、随分と似ています。

その学校局でお会いした科学担当の女性が、昨日と今日の午前中に参加して、質問を受けてくれたのです。私と森口君と、彼女はどのような出身だろうか?彼女は大学で何科で学んだのだろうか?科学の専門家なのだろうか?などと話していました。そこで。ベルガーさんに聞いてみました。すると、「保育者出身です。保育者の時に自らその分野を研究し、実践し、その後教育局に入って、その担当になった。」ということでした。もちろん、昨日お会いした局長も、視察担当も、教育局の部局の中枢の人たちは、皆、保育者、園長経験者です。それは、「研究者である前に、まず保育者であれ!」と言っているようです。しかも、局長さんの年齢は聞きませんでしたが、かなりお若い方でした。ですから、現場にいたのは最近のことのようです。また、視察に参加してくれたということは、現場に良く足を運ぶということでしょう。私の園で言えば、都庁の役人さんが、常に現場に足を運び、共に保育を語るということになります。ちょっと考えられませんね。

子どもたちは、家で、園庭で、降園で見つけたものを園に持ってきて並べ、それを観察することからいろいろと発見をしていきます。もし、専門的な知識が必要であれば、保護者に協力を頼みます。園庭には、お父さんたちが作った足の裏の触角を促すような道が作られてあったり、園庭の隅には、石がごろごろと敷き詰めた場所があり、子どもたちは虫眼鏡を持って、石の観察か、石の間にいる虫の観察をしていました。

このような「小さな科学者たち」の取り組みは、もともとは持続可能教育の一環としてユネスコから提唱されたもので、この地域の園長たちが集まって、1日半、保育者は1日研修をするそうです。そこでは、子どものヒトとなる視点、地産地消の考え方、ごみの分別などを学ぶそうです。

 

ドイツ報告13

今年、ドイツに行く前にどのような取り組みをしている園を見学したいのかという問い合わせが来ました。そこで、最近取り組み始めた「オープン保育」を行っている園、そして、子どもの権利条約を批准したことをきっかけに行い始めた「参画」についての要望をお願いしました。もう一つ、日本では保育所保育指針が今年から実施されていますが、その中で実際に取り組みにくいものに「文字・数・科学」があります。特にその中で科学は、どう取り組んでいけばいいのか迷う園が多いと聞きます。そこで、以前ドイツを訪問した際に、「小さな科学者たち」という取り組みを知りましたが、実際にその取り組みをしている園を見たいと要望しました。

この「小さな科学者」という取り組みは、ドイツベルリンから提唱され、最近の科学離れを減らそうということで幼児期から科学に親しませようという試みです。そして、この取り組みに積極的に取り組んでいる幼児施設には認定書を発行することにしたのです。現在、ミュンヘン市の中で認定されている園は、45か園だそうです。もちろん、認定されていなくても科学についてどの園でも熱心でしたが、今回、認定されている園を二か所見学することができたのです。その一つが、二日目の午後に訪れた園です。

まず、科学に関係するものがびっしりと棚に並んでいます。どれも子どもが興味を持ちそうなものです。その横には、科学実験をするときに着る白衣がかかっていました。ちょうど私たちがその部屋に入ると、ある子どもたちが電気についての実験をしていました。窓際の棚には、そのためのさまざまな器具が置いてあります。バッテリー、豆電球、それらをつなぐ電線、スィッチ、そして、プロペラなどです。机の上では、子どもたちは、バッテリーにコードをつなぎ、豆電球を光らせていました。もう一つの棚には、バッテリとスイッチをコードでつなぎ、そのコードをプロペラにつなぎ、プロペラからバッテリーと違う極にコードをつなぎます。スイッチを入れると、プロペラが回る仕組みです。見た子たちは先生が見ている前で行っていましたが、一人で取り組みたい子の場所も確保されていました。

科学だけでなく、オープン保育は、子どもたちがやりたいことに取り組むために、それぞれのゾーンには、非常に物が豊富に置かれてあります。

また、昨日の園同様に大人の近いような工具が並べられています。釘打ちやのこぎりの扱いなどは危ない気がするのですが、私の園でも行っているように、作業は必ず工作台の上で行い、釘を打つときとかのこぎりで木を切るときには、木を万力に挟んで行います。ですから、きちんと子ども用の工作台が工具の前に置かれているのです。

そのほかにも、たとえば、学校ごっこをしている子どもたちを見ましたし、恐竜をテーマに大きな箱で恐竜を作ったりしている部屋もありました。子どもたちはどこで何をするかが自由のため、保護者にどの部屋ではどのような活動をしたのかを知ってもらうために、私の園では、紙にその日の活動を書いているのです、この園では、保育室の入り口にあるディスプレイに映像で放映し、その下にその説明が書かれてあります。

園庭では、ドイツでは夏の間、プールに入ることはせず、水遊びをします。また、どの園にもあるのが、大きな石がごろごろと置かれ、木を組んだトンネルや木の小道が作られています。

ドイツ報告12

二日目の午後に訪れた園は、午前中が0~3歳児まで49名の比較的小さな園に対して、3~歳児まで100名の幼稚園です。100名中、48%が移民家庭です。しかも、その国は実に様です。ホールに2017年、2018年の園児の国籍別が円グラフで貼りだされていました。このように子どもたちの家庭環境は国際色豊かなので、保護者を対象に「国際カフェ」を設けて、互いのコミュニケーションを促しているそうです。そして、保護者同士のコンタクトを容易にすると同時に、子どもたちへの「読み聞かせ」で様々な外国語に触れさせています。その中には日本人の4歳の子どももいて、私たちにあいさつに来てくれました。好きなことが自由にできて、とても楽しいと言っていました。

この園は、2000年に新築されましたが、オープン保育を始めたのは2005年からだそうです。ですから、建物は、オープン保育用には作られておらず、各クラス担任制として部屋が分かれていたのを、オープン保育に代えていったということです。しかし、この園ではオープン保育と言わずに、コンセプトとして「オープンハウス」という取り組みをしています。スタッフは、12名で、他に給食1名、清掃1名です。クラス数としては、一クラスです。オープン保育といっても、ふつうは、何クラスに分かれており、朝のお集まりや昼食の時には、自分の属するクラスで活動し、自由遊びの時はオープンですが、この園は全く全体一クラスという考え方です。

したがって、7時30分から、登園が始まりますが、登園したら、決められた受付の場所で登園を記録します。そして、上着を脱いだりしたくしたら、全員がホールに集まります。そして、参画ということで、当番が司会進行をします。まず、円に表された絵の針を、今日は、何月何日何曜日と動かしていきます。この司会進行は、3歳児でも可能だそうです。もちろん、朝のお集りの司会進行だけでなく、他にも、たとえば遠足や様々な催しを決めるときに代表が選ばれるときにも、3歳でも可能だそうです。また、それらに対する希望や要望、または苦情でも、代表者だけでなく、だれでも、いつでも受け付けるそうです。

9時になると、朝食や午前中のおやつを食べます。朝食は、ハウスフォアキンダーという施設では園で作るのですが、この園のような幼稚園では希望者だけが家庭から持ってくるそうです。9時から10時30分までは、自由遊びです。その時にどこに行っても何をしてもいいのですが、子どもがそれを選択をするために、どの部屋では、どの先生が何をしているのかを色分けして、朝のお集まりの時にボードに示しておきます。そして、各ゾーンの定員は、10~15名ですので、子どもたちはので、何をしたいかを部屋の前にあるボードに自分の写真を貼っていきます。

10時半になると、今度は、10名から15名の小グループを二人の先生が担当して活動します。そこでは、歌、手遊び、読み聞かせ、また、今の時期は夏祭りのためのダンスや工作をします。それが11時くらいまでの活動で、その後12時くらいまで全員が屋外に出ます。それは、日光に当たったり、外気に触れたりするためです。

子どもたちは、他に希望者ですが、15人程度の園児が二人の保育者と園外にも市からのバスに乗って、出かけていきます。特に夏季は、その活動が多いそうです。また、年度末は、全園児でバスに乗って自然動物園などに出かけるそうです。

ドイツ報告11

1日の流れとしては、7時30分から8時30分までに登園します。この間は一部屋で二人の保育者で保育します。8時30分になると、五つのグループに分かれます。そして、9時ころに各部屋で朝食をとります。朝食は自園調理で、食べたい子のみです。同時に、この頃各クラスから1名の保育者、調理が集まって、その日の活動のすり合わせをします。部屋によって保育がかぶらないことと、他の部屋では何をしているかを把握するためです。

9時30分から9時45分は、各クラスで朝のお集まりをします。そこでは歌を歌ったり、ダンスをしたりしますが、主にはその日の活動を子どもたちに知らせます。しょうがいの子もいるために、絵が描かれたカードによって示します。そのあと、個々にトイレ、おむつ交換、健康管理を随時行います。9時45分から11時15分までは自由保育です。同じ階であれば、どこに行って、何をするかを自分で決めます。

11時15分になると、手を洗い、給食のためにテーブルと食器のセットを行います。食器は、割れるものを使用することによって、子どもたちは慎重になります。食べるときには、自分で量、種類を選びます。乳児でまだできない子は保育者か大きい子が手伝います。大きいこと言っても、3歳で、日本で言うと、2歳児クラスの子です。給食アレルギーの子も日本同様増えているそうです。ミルク、トマトなど食材のアレルギーだけでなく、糖尿の子ども、また、多国籍の子どもが多いために、宗教上、ベジタリアンなど様々な要求があるそうです。また、咀嚼に問題のあるしょうがいの子もいるそうです。

12時から寝たい子だけお昼寝に入ります、2時間までの間で、自分で目覚めるのが原則です。お昼寝から起きたら、おやつがあり、降園が始まります。以後の自由遊びは、二グループで行われます。

ここでは、統合保育のために、特別に訓練された犬による癒しの保育が行われています。それは、主にヒーリング担当の保育者が行います。最初は、絵から導入し、次にぬいぐるみと接し、次第に犬に触れあえるようにしていきます。園長室の隅の床には、犬のための寝床が置かれてありました。そのほかにも、園外の牧場に行ってポニーと触れ合うとか、大きなかたつむりを飼育するなど生き物とのふれあいを大切にしています。この大きなカタツムリは買ってきたそうです。そして、園で卵を産み、小さなカタツムリが生まれたそうです。

0歳から3歳児までの園にもかかわらず、異年齢で、オープン保育を行うというのもすごいですね。そのメリットをこう話していました。まず、子どもたちは複数の先生と触れ合うことができ、知ってもらうこともできます。また、子ども同士も広く多くの子どもたちと接することができます。それから、子どもたち同士の関係ができていること、複数の保育士と触れ合うことで、先生が手薄になっても大丈夫と言います。

もちろん、子どもたちはのびのびと、自由に、屈託なく過ごしています。子ども主体から考えると、遊びの幅、遊び相手、好きな先生が広がります。保育する立場からしても、子どもたちからの情報を多く得ることができ、複数で見ることによって多面的に子どもたちを見ることができます。

将来、社会に出ていく子どもたちにとって、どのような保育が必要であるかを、0歳児からきちんと見通しているようです。

ドイツ報告10

2日目の午前中に訪れた園は、49名定員の保育園です。ドイツで幼稚園(キンダーガルテン)というのは、3歳児から就学前までの子どもが在園している園のことであり、保育園(キンダークリッペ)というのは、0歳児から3歳児まで在園している園のことを言います。入園は保護者の就労には関係なく、したがってお迎えも14時、15時、15時と様々です。この園の特徴の一つは、12年前からインテグレーション園に指定され、しょうがい児を積極的に取り入れた統合保育を行っています。

園児49名が五つのクラスに分かれており、スタッフは20名、うちヒーリング担当1名、養護5名が含まれています。そのほかに給食1名、清掃等1名です。しょうがい児は養護が主に担当し、週1回小児科医が巡回に来るそうです。建物は、1879年に建てられた重要文化財です。ドイツでは、古い建物は非常に大切にし、大事に使っています。

保育形態として、1階に2クラス、2階に3クラスあり、それぞれの階においてはオープン保育を行っています。乳児もいるため、1階の2階の行き来は、たまに行いますが、基本的には同じ階のみオープンのため、ゆるやかなオープン保育と言っています。保育者は、部屋ごとに保育を分担します。子どもたちはどの部屋で遊ぶかが自由ですが、バランスをとるため、1つの部屋が6名以上にならないように配慮しているそうです。園での遊びは、一人遊びは家庭でも行われるため、ここでは乳児から子ども集団のある所という認識を持ちます。ですから、先生が子どもにべったりと着くことはなく、子どもたちは自由に部屋を行き来し、子ども同士が触れ合っています。

日本では、どうしても乳児から入園となると、保育者との愛着形成が大切といって、特定の子どもの担当になることが多いのですが、ドイツでは少し考え方が違うようです。というよりも、最近のアタッチメント研究により、複数の保育者との信頼関係を結ぶことに重点が置かれます。オープン保育という形態は、それが基盤であり、大切です。また、その信頼関係は、保育者と子どもだけでなく、保育者と保護者との関係においても丁寧に行われます。そのために、保護者に園に一緒にいてもらうならし保育期間は、6週間から8週間とるそうです。この期間、保護者は子どもと一緒に保育室にいるわけでなく、待機室で待機しているのです。すなわち、何かあったら保護者がすぐに来てくれる、保護者がそばにいてくれるといった愛着形成をしっかりと保育者と子どもの間ではなく、保護者との間でつけてもらうのでしょう。

子どもたちは2週間ぐらいになると、自分から保護者に手を振るようになると言います。これも、ひとつの「参画」の取り組みだそうです。子どもが安心してここで過ごしているかどうかを、子どもが自分の気持ちを素直に表現しているからです。過ごす場所も、赤ちゃんは主にカーペットかクッションの上で過ごしますが、それを上の子は保障してあげます。これも異年齢の良いところの一つだと言います。

また、ならし期間が長いことで、病気になりにくかったり、悲しい思いをすることもなくなると言います。「ぜひ、日本でもどうですか?」と言われたのですが、「もちろんしたいですが、保護者の職場が許しません」と言うと、ドイツでは、事前のそのことが職場でもわかっていて、その期間を調整してくれるそうです。その方が、かえって、そのあとの仕事に良い影響を与えるからだそうです。うらやましいですね。