ドイツ報告13

今年、ドイツに行く前にどのような取り組みをしている園を見学したいのかという問い合わせが来ました。そこで、最近取り組み始めた「オープン保育」を行っている園、そして、子どもの権利条約を批准したことをきっかけに行い始めた「参画」についての要望をお願いしました。もう一つ、日本では保育所保育指針が今年から実施されていますが、その中で実際に取り組みにくいものに「文字・数・科学」があります。特にその中で科学は、どう取り組んでいけばいいのか迷う園が多いと聞きます。そこで、以前ドイツを訪問した際に、「小さな科学者たち」という取り組みを知りましたが、実際にその取り組みをしている園を見たいと要望しました。

この「小さな科学者」という取り組みは、ドイツベルリンから提唱され、最近の科学離れを減らそうということで幼児期から科学に親しませようという試みです。そして、この取り組みに積極的に取り組んでいる幼児施設には認定書を発行することにしたのです。現在、ミュンヘン市の中で認定されている園は、45か園だそうです。もちろん、認定されていなくても科学についてどの園でも熱心でしたが、今回、認定されている園を二か所見学することができたのです。その一つが、二日目の午後に訪れた園です。

まず、科学に関係するものがびっしりと棚に並んでいます。どれも子どもが興味を持ちそうなものです。その横には、科学実験をするときに着る白衣がかかっていました。ちょうど私たちがその部屋に入ると、ある子どもたちが電気についての実験をしていました。窓際の棚には、そのためのさまざまな器具が置いてあります。バッテリー、豆電球、それらをつなぐ電線、スィッチ、そして、プロペラなどです。机の上では、子どもたちは、バッテリーにコードをつなぎ、豆電球を光らせていました。もう一つの棚には、バッテリとスイッチをコードでつなぎ、そのコードをプロペラにつなぎ、プロペラからバッテリーと違う極にコードをつなぎます。スイッチを入れると、プロペラが回る仕組みです。見た子たちは先生が見ている前で行っていましたが、一人で取り組みたい子の場所も確保されていました。

科学だけでなく、オープン保育は、子どもたちがやりたいことに取り組むために、それぞれのゾーンには、非常に物が豊富に置かれてあります。

また、昨日の園同様に大人の近いような工具が並べられています。釘打ちやのこぎりの扱いなどは危ない気がするのですが、私の園でも行っているように、作業は必ず工作台の上で行い、釘を打つときとかのこぎりで木を切るときには、木を万力に挟んで行います。ですから、きちんと子ども用の工作台が工具の前に置かれているのです。

そのほかにも、たとえば、学校ごっこをしている子どもたちを見ましたし、恐竜をテーマに大きな箱で恐竜を作ったりしている部屋もありました。子どもたちはどこで何をするかが自由のため、保護者にどの部屋ではどのような活動をしたのかを知ってもらうために、私の園では、紙にその日の活動を書いているのです、この園では、保育室の入り口にあるディスプレイに映像で放映し、その下にその説明が書かれてあります。

園庭では、ドイツでは夏の間、プールに入ることはせず、水遊びをします。また、どの園にもあるのが、大きな石がごろごろと置かれ、木を組んだトンネルや木の小道が作られています。

ドイツ報告12

二日目の午後に訪れた園は、午前中が0~3歳児まで49名の比較的小さな園に対して、3~歳児まで100名の幼稚園です。100名中、48%が移民家庭です。しかも、その国は実に様です。ホールに2017年、2018年の園児の国籍別が円グラフで貼りだされていました。このように子どもたちの家庭環境は国際色豊かなので、保護者を対象に「国際カフェ」を設けて、互いのコミュニケーションを促しているそうです。そして、保護者同士のコンタクトを容易にすると同時に、子どもたちへの「読み聞かせ」で様々な外国語に触れさせています。その中には日本人の4歳の子どももいて、私たちにあいさつに来てくれました。好きなことが自由にできて、とても楽しいと言っていました。

この園は、2000年に新築されましたが、オープン保育を始めたのは2005年からだそうです。ですから、建物は、オープン保育用には作られておらず、各クラス担任制として部屋が分かれていたのを、オープン保育に代えていったということです。しかし、この園ではオープン保育と言わずに、コンセプトとして「オープンハウス」という取り組みをしています。スタッフは、12名で、他に給食1名、清掃1名です。クラス数としては、一クラスです。オープン保育といっても、ふつうは、何クラスに分かれており、朝のお集まりや昼食の時には、自分の属するクラスで活動し、自由遊びの時はオープンですが、この園は全く全体一クラスという考え方です。

したがって、7時30分から、登園が始まりますが、登園したら、決められた受付の場所で登園を記録します。そして、上着を脱いだりしたくしたら、全員がホールに集まります。そして、参画ということで、当番が司会進行をします。まず、円に表された絵の針を、今日は、何月何日何曜日と動かしていきます。この司会進行は、3歳児でも可能だそうです。もちろん、朝のお集りの司会進行だけでなく、他にも、たとえば遠足や様々な催しを決めるときに代表が選ばれるときにも、3歳でも可能だそうです。また、それらに対する希望や要望、または苦情でも、代表者だけでなく、だれでも、いつでも受け付けるそうです。

9時になると、朝食や午前中のおやつを食べます。朝食は、ハウスフォアキンダーという施設では園で作るのですが、この園のような幼稚園では希望者だけが家庭から持ってくるそうです。9時から10時30分までは、自由遊びです。その時にどこに行っても何をしてもいいのですが、子どもがそれを選択をするために、どの部屋では、どの先生が何をしているのかを色分けして、朝のお集まりの時にボードに示しておきます。そして、各ゾーンの定員は、10~15名ですので、子どもたちはので、何をしたいかを部屋の前にあるボードに自分の写真を貼っていきます。

10時半になると、今度は、10名から15名の小グループを二人の先生が担当して活動します。そこでは、歌、手遊び、読み聞かせ、また、今の時期は夏祭りのためのダンスや工作をします。それが11時くらいまでの活動で、その後12時くらいまで全員が屋外に出ます。それは、日光に当たったり、外気に触れたりするためです。

子どもたちは、他に希望者ですが、15人程度の園児が二人の保育者と園外にも市からのバスに乗って、出かけていきます。特に夏季は、その活動が多いそうです。また、年度末は、全園児でバスに乗って自然動物園などに出かけるそうです。

ドイツ報告11

1日の流れとしては、7時30分から8時30分までに登園します。この間は一部屋で二人の保育者で保育します。8時30分になると、五つのグループに分かれます。そして、9時ころに各部屋で朝食をとります。朝食は自園調理で、食べたい子のみです。同時に、この頃各クラスから1名の保育者、調理が集まって、その日の活動のすり合わせをします。部屋によって保育がかぶらないことと、他の部屋では何をしているかを把握するためです。

9時30分から9時45分は、各クラスで朝のお集まりをします。そこでは歌を歌ったり、ダンスをしたりしますが、主にはその日の活動を子どもたちに知らせます。しょうがいの子もいるために、絵が描かれたカードによって示します。そのあと、個々にトイレ、おむつ交換、健康管理を随時行います。9時45分から11時15分までは自由保育です。同じ階であれば、どこに行って、何をするかを自分で決めます。

11時15分になると、手を洗い、給食のためにテーブルと食器のセットを行います。食器は、割れるものを使用することによって、子どもたちは慎重になります。食べるときには、自分で量、種類を選びます。乳児でまだできない子は保育者か大きい子が手伝います。大きいこと言っても、3歳で、日本で言うと、2歳児クラスの子です。給食アレルギーの子も日本同様増えているそうです。ミルク、トマトなど食材のアレルギーだけでなく、糖尿の子ども、また、多国籍の子どもが多いために、宗教上、ベジタリアンなど様々な要求があるそうです。また、咀嚼に問題のあるしょうがいの子もいるそうです。

12時から寝たい子だけお昼寝に入ります、2時間までの間で、自分で目覚めるのが原則です。お昼寝から起きたら、おやつがあり、降園が始まります。以後の自由遊びは、二グループで行われます。

ここでは、統合保育のために、特別に訓練された犬による癒しの保育が行われています。それは、主にヒーリング担当の保育者が行います。最初は、絵から導入し、次にぬいぐるみと接し、次第に犬に触れあえるようにしていきます。園長室の隅の床には、犬のための寝床が置かれてありました。そのほかにも、園外の牧場に行ってポニーと触れ合うとか、大きなかたつむりを飼育するなど生き物とのふれあいを大切にしています。この大きなカタツムリは買ってきたそうです。そして、園で卵を産み、小さなカタツムリが生まれたそうです。

0歳から3歳児までの園にもかかわらず、異年齢で、オープン保育を行うというのもすごいですね。そのメリットをこう話していました。まず、子どもたちは複数の先生と触れ合うことができ、知ってもらうこともできます。また、子ども同士も広く多くの子どもたちと接することができます。それから、子どもたち同士の関係ができていること、複数の保育士と触れ合うことで、先生が手薄になっても大丈夫と言います。

もちろん、子どもたちはのびのびと、自由に、屈託なく過ごしています。子ども主体から考えると、遊びの幅、遊び相手、好きな先生が広がります。保育する立場からしても、子どもたちからの情報を多く得ることができ、複数で見ることによって多面的に子どもたちを見ることができます。

将来、社会に出ていく子どもたちにとって、どのような保育が必要であるかを、0歳児からきちんと見通しているようです。

ドイツ報告10

2日目の午前中に訪れた園は、49名定員の保育園です。ドイツで幼稚園(キンダーガルテン)というのは、3歳児から就学前までの子どもが在園している園のことであり、保育園(キンダークリッペ)というのは、0歳児から3歳児まで在園している園のことを言います。入園は保護者の就労には関係なく、したがってお迎えも14時、15時、15時と様々です。この園の特徴の一つは、12年前からインテグレーション園に指定され、しょうがい児を積極的に取り入れた統合保育を行っています。

園児49名が五つのクラスに分かれており、スタッフは20名、うちヒーリング担当1名、養護5名が含まれています。そのほかに給食1名、清掃等1名です。しょうがい児は養護が主に担当し、週1回小児科医が巡回に来るそうです。建物は、1879年に建てられた重要文化財です。ドイツでは、古い建物は非常に大切にし、大事に使っています。

保育形態として、1階に2クラス、2階に3クラスあり、それぞれの階においてはオープン保育を行っています。乳児もいるため、1階の2階の行き来は、たまに行いますが、基本的には同じ階のみオープンのため、ゆるやかなオープン保育と言っています。保育者は、部屋ごとに保育を分担します。子どもたちはどの部屋で遊ぶかが自由ですが、バランスをとるため、1つの部屋が6名以上にならないように配慮しているそうです。園での遊びは、一人遊びは家庭でも行われるため、ここでは乳児から子ども集団のある所という認識を持ちます。ですから、先生が子どもにべったりと着くことはなく、子どもたちは自由に部屋を行き来し、子ども同士が触れ合っています。

日本では、どうしても乳児から入園となると、保育者との愛着形成が大切といって、特定の子どもの担当になることが多いのですが、ドイツでは少し考え方が違うようです。というよりも、最近のアタッチメント研究により、複数の保育者との信頼関係を結ぶことに重点が置かれます。オープン保育という形態は、それが基盤であり、大切です。また、その信頼関係は、保育者と子どもだけでなく、保育者と保護者との関係においても丁寧に行われます。そのために、保護者に園に一緒にいてもらうならし保育期間は、6週間から8週間とるそうです。この期間、保護者は子どもと一緒に保育室にいるわけでなく、待機室で待機しているのです。すなわち、何かあったら保護者がすぐに来てくれる、保護者がそばにいてくれるといった愛着形成をしっかりと保育者と子どもの間ではなく、保護者との間でつけてもらうのでしょう。

子どもたちは2週間ぐらいになると、自分から保護者に手を振るようになると言います。これも、ひとつの「参画」の取り組みだそうです。子どもが安心してここで過ごしているかどうかを、子どもが自分の気持ちを素直に表現しているからです。過ごす場所も、赤ちゃんは主にカーペットかクッションの上で過ごしますが、それを上の子は保障してあげます。これも異年齢の良いところの一つだと言います。

また、ならし期間が長いことで、病気になりにくかったり、悲しい思いをすることもなくなると言います。「ぜひ、日本でもどうですか?」と言われたのですが、「もちろんしたいですが、保護者の職場が許しません」と言うと、ドイツでは、事前のそのことが職場でもわかっていて、その期間を調整してくれるそうです。その方が、かえって、そのあとの仕事に良い影響を与えるからだそうです。うらやましいですね。

ドイツ報告9

1園目の園のそのほかに参考になる環境がいくつかありました。以前ドイツに来た時にも見たのですが、いろいろなところに子どもの飲み物が置いてあるのですが、必ず2種類、ここでは水とお茶ですが、どちらを飲むか子どもが選択できるようになっています。また、文字ゾーンには、パソコンとタイプライターが置いてあって、子どもたちはいつでも文字が打てるようになっています。科学ゾーンには、目を保護するメガネと手袋をするようになっています。トイレには鍵がかかりませんから、中に入っているか空いているかを表示するようになっています。入るときに手形を赤にします。階段の踊り場は、1階と2階の子どもたちが出会う場所ですが、そこには、自分がどこで何をしているのかを貼るボードがありました。同時に、何時には何をするのかを示すデーリープログラムが貼ってありましたが、そのデザインはとてもきれいでした。

ランチルームには、壁に幾何学模様が貼ってありましたが、これは吸音材だそうです。この時間帯は見学先を二手に分かれたのですが、もう一つの園にも同じものがあったそうです。ランチルームのように少しうるさい部屋にはこれが貼ってあります。また、この部屋では朝食やおやつも食べるのですが、子どもたちはいつ来て、いつ食べてもいいそうです。

職員室の壁には、参画についてのいろいろな言葉が書いてあります。これは、職員が、いろいろなところで見つけてきたものだそうです。たとえば、その中の一つには、「参画は自己肯定感を高めます。」と書いてあります。

次に、3,4歳児に対しての科学遊びを見せてもらいました。この時間は、5歳児は、近くの小学校でのコンサートに誘われたということで留守でしたので、3,4歳児の希望者だけが科学の部屋に集まりました。まず子どもたちの前にいろいろな液体の入った容器を置きます。その容器の液体のにおいを子どもにかいでもらいました。顔をしかめるにおい、いいにおい、何も匂わないものがあります。実は中身は、レモン汁、洗剤、りんごジュース、お酢、ベーキングパウダーの液体が入っています。

においをかいだ後、スポイトで、どれか好きな液体を自分の前にある小さな容器に入れます。そこで、先生はリトマス試験紙を子どもたちに配ります。それは、下の方にいろいろな色がついています。それを液体に漬けると、色が変わります。先生は、色見本を子どもたちにどれに近い色に変わったかを確認させます。これは、酸性かアルカリ性かですが、この言葉は使いません。別にその言葉を覚えさせようというわけではないからです。次に別の容器に入った液体をスポイトでとって自分の前にある容器に入れます。すると、子どもたちの容器に入れた液体の色がみるみる変わっていきます。薄い赤、濃い青、ピンク、様々です。色の変化に子どもたちは興味を示します。子どもたちの入れた液体は紫キャベツの汁だったのです。それぞれに変わった色に驚いたところで、先生は、「では、この続きは明日しましょう」と言って、子どもたちは散っていきました。色の変わった理由も、入れた液体の正体も、何も説明せず、驚いたことで終了しました。

これが科学だというのです。不思議さを感じること、それに驚くこと、続きをしたいと思う気持ち、それが大切であることを私たちに見せてくれたのでした。

ドイツ報告8

この園での参画についての取り組みを見てみました。まず、各ゾーンについての注意点として、「大人と同じ扱いをする」と言います。すなわち、子ども扱いをしないということです。工作ゾーンには、工具が置いてありますが、それらは本物で、5歳児が使うということでなく、3歳児でも自分で使えると思ったら使っていいということも参画の一つです。このゾーンには、半分分解された掃除機が置かれてありました。子どもたちが分解したのでしょう。

また、ドイツでは基本的に異年齢ですが、「子どもの発達過程によって違っていることを受け入れる」とあり、大切なのは、小学校に入る時点で、皆同じ能力を持つということだと言います。また、異年齢で過ごすと、面白そうなものは5歳児が独占する可能性があります。しかし、飽きて他のゾーンに行った5歳児を見ていて、急いで3歳児がそのゾーンで遊ぶそうです。ゾーンの中で最近人気のあるのが人体模型だそうです。各部を取り外せるようになっていて、それを組み立てて遊びます。

また、階段室には、各所の写真が貼ってあって、その上に丸い赤いシールが貼ってあります。これは、子どもたちが遠足で行きたい場所に投票するというものでした。貼り終わった後、どこに行くかという子ども会議が開かれるようです。二人の子どもがおもちゃを取り合った時にも、自分たちで考えます。また、砂場で座って遊ぶときには、特製のゴムのズボンをはくのですが、それをはくかどうかも子ども自身で決めます。この参画においての子ども主体の考え方は、保育者側にもその対応を見直す必要があります。保育者から子どもに何か要求する場合、また、子どもに何かやってもらうときに、その理由をきちんと子どもに説明することが必要になります。

この園の給食はケータリングです。市立病院の厨房ですべての園の給食を作って、各園に配っているそうです。そして、子どもたちが食べる際の約束としては、まず全員が必ずまずは、試しに一口は食べます。その後、食べるか食べないかは自由だそうです。これは、食べず嫌いをなくす方法かもしれません。私の園では、試食コーナーがあって、それがおいしいのかまずいのかをそこでまず試しに食べてみることができるように先生たちが工夫したものです。

そのほかにも色々な工夫があります。まず、お片付けをしないで次の場所に行ってしまう子がいます。私は、子どもというのは次々に目につくものをやりたがるもので、それを制止して片付けさせる必要はないと思っています。ドイツのこの園では、こんな工夫をしているそうです。まず、活動が合わるときには、ゴングを鳴らして、みんな一斉に活動をやめて集まります。そして、みんな集まったら、一斉に「よーい、ドン!」ということで、みんなで片づけを始めるそうです。ある時、片づけない子がいたそうです。みんなで、どうしようかという話し合いをしたそうです。その結果、次の日は、その子一人で片づけをするということが決まって、次の日は、一人ですべての片づけをしたそうです。その後は、みんなと一緒に片づけをするようになったそうです。

参画という取り組みは、子どもたちが主体的に問題解決をするようになるようです。

ドイツ報告7

ミュンヘンでの見学先の1園目は、39名の割と小さな幼稚園です。その幼稚園に着くと、外見は普通の住宅のようなたたずまいで、幼児施設には見えません。ただ、向こうの方の庭には、遊具が見え隠れしていて、かろうじてここが見学先であることがわかるくらいでした。それは、後でわかったことですが、ここはもともとは個人の住宅でした。それを幼稚園として使ってくださいと寄付したものだそうです。その寄付した人の肖像画が階段の踊り場に飾ってありました。このようなケースは割とあるそうです。それは以前に聞いたところによると、1つには海外における寄付をするという文化があることと、相続の際にかかる税金の優遇措置があるということでした。それによって、近隣の理解もあるそうです。日本では、公が敷地を用意するか、運営者が自ら用地や施設を探してきて、そこで園を開園するというケースが多いようです。そのために、近隣では、経営者が単に自分たちの利益のためにその場所で開演するというように思われてしまうことが多く、開園に対して反対運動が起きてしまうケースも多くなるのでしょう。

1園目の見学先は、ミュンヘン市の隣のハール市において、1999年、一般家庭の住宅であったところを寄付をうけ、開園した小行政自治体立幼稚園です。3歳から6歳まで二クラス39名の園です。スタッフは、1級保育士(大学卒、園長含む)3名、2級保育士(短大、養成校卒)が2名、給食1名、清掃他1名の小さな園です。

クラスは、1階がサラマンダグループ、2階がアナ(穴)グループの2クラスです。まず登園して自由遊びから8時30分から9時までの間に15分間程度「お集まり」がそれぞれのグループで行われます。その時の内容は、子どもたちが興味関心を持っているテーマに沿って行います。最近の2階のテーマは、「昆虫」で、蝶やカタツムリなどを観察するというものでした。そのためにルーペ付きの観察ケースの中に蝶の幼虫が入っていました。また、もし1階のグループの子がその取り組みを知って刺激を受け、自分たちもやりたいと言った時には、時期は少し遅れますが、そのテーマを取り上げます。そして、2階の取り組みで使ったあらゆる資料は、すべて提供するそうです。

その後自由遊びの時間で、園内すべてオープンで、どこで、何をしてもいいことになっているそうです。そして、11時になると、全員が園庭に出ます。もちろん、雨の日でもです。よほどの悪天候の日だけ室内運動遊び場を開放するそうです。もし職員が十分といる場合は、散歩に行きます。行先は、子どもたちが多数決で決めるそうです。

そして、昼食、その後は小さい子を中心として希望者は、13時から14時(たまに14時30分)までお昼寝をします。その時に寝ない子は、45分間本の読み聞かせをします。時間が長いので、二人の先生が交代で読みます。この時間は、絵本ではなく、紙芝居でもなく、いわゆる「モモ」のような長い物語にします。それは、ドイツ語をきちんと習得させるという意味と物語をきちんと理解する力をつけようとする意図があります。そのために、読み始める前に、前日の物語をきちんと理解しているのかを確認します。そして、話しの途中で疑問に思ったことがあった場合、まずその答えはほかの子どもがします。

それにしても読み聞かせが45分というのは随分と長いですね。二人の先生が交代するそうですが、よく子どもたちはじっと聞いていると思います。ワクワクする物語だからでしょう。この経験から、子どもたちは自分で本を読み始めるときにも、随分と長い、絵のない物語を読むようになるのかもしれませんね。

ドイツ報告6

現在ミュンヘン市が取り組んでいるもうひとつは、Jugendparizipation(参画)です。一昨年ドイツを訪問した際に、市当局から説明を受けました。この参画という考え方は、ミュンヘン市が、1997年、子どもの権利条約の採択を受けて、市長はじめ、子どもに関するすべての行政職員、ボランティアみんなで検討して取り組むことに決めた課題です。

バイエルン州では、「バイエルン」という保育指針のような幼児教育が取り組む課題として、この「参画」が書かれることになり、デモクラシーについて、考えていこうということにしたのです。そして、この参画に取り組むようになった経緯としては、子どもにとって最も効果的な学びととは、子どもに興味関心を持たせることにあり、そこには個人によっての個性があるために、参画という考え方をすることになったと言います。

参画の例としてあげられているのは、例えば、食事について、子どもは誰と、どのくらい食べるのかを決める権利があるというようなこととか、どんな遊びをしたいか、新しい遊具を買うときにも、子どもたちによる投票によって決めます。また、買い物に行くときなどは、各グループから代表が選ばれ、彼らのよって提案されます。このような参画の内容については、それぞれの園によって子どもと一緒に、また保護者とも一緒に決め、均一はないと言います。そして、参画した結果何か問題が起きたとしたら、それはチャンスとして捉え、子どもたちに解決する力を付けます。

それを一歩進めて、2012年、子どもたちからの苦情を聞かなければならないという法律ができ、子どもたちにインタビューすることによるアンケートを採ることになったそうです。「子どもには、それぞれ権利があり、それを活かしてあげるプロセス」を持つものとして捉えますと言います。そこには、日本とは違う「平等」という考え方があります。平等とは、日本では分け与える平等ですが、ヨーロッパでは、権利の平等であり、それは必要なときに等しく受け取ることができる平等だと言います。そして、子どもは正義については、大人以上に厳しい行動を取ることがわかっていると言います。それは、平等についても子ども自身はわかっていると言います。

「参画」は、「ここで過ごす子どもたちにとって、最も大切なもの」として位置づけられています。それは、ここで過ごす子どもたちにとって、最も大切なものとし、ここの社会で、考えを深めながら過ごすため、子どもたちはいろいろな希望を持っていますが、様々な問題に直面するときに、どうすればいいのか?そんなときに道を自ら切り開いていく手伝いを保育者はしていきます。たとえば、状況を話し合ったり、子ども同士で意見交換をしたりします。トラブルにたいしても、和解だけでなく、解決策を見つけていくことが子どもにとっての民主主義なのです。たぶん、この延長線上に「オープン保育」があるのでしょうね。

私は最近、保育園は家庭の代わりから社会の代わりに役割を変えていくべきであると主張しています。特に、母子という二者関係からの保育から、社会的ネットワークの中での保育にすべきであると考えているのです。それは、特に3歳未満児に対してもそうあるべきであると思っています。それは、人類が長い進化の中でそのような子育てをしてきたということもありますが、もう一つ、これから社会に出ていく子どもたちにとって、社会の形成者としての資質を備えていかなければならないからです。そして、どのような社会を目指すというと、平和で民主的な社会です。ドイツが、まさにそれに取り組んでいるのです。

ドイツ報告5

幼稚園で始まったオープン保育の試みは、学童の改革に及びます。幼稚園だけでなく、学童とタッグを組んでの「オープン園」へと移行していきます。まず、学童の部屋の模様替えが行われました。子どもの意見も取り入れながらの変化だったため、ゆっくりと様子を見ながらゆるやかに変化していったそうですが、最終的には、おやつやランチを食べるビストロ(食堂)、積み木の部屋、サッカーゲームの部屋、図書室、製作室、木工室、音楽室、宿題をする部屋と役割別の部屋割となっていったそうです。この学童のオープン園化に伴い、幼稚園のオープン園化も一歩前進していきます。給食は、年少児と一部年中児が教室でとり、年長児と一部年中児はビストロにてビュッフェ形式でとります。ビストロには、学校が早く終わった一年生らが順々に合流してくる形となるので、学童児との交流も増えることとなります。

さらに幼稚園児にとって利点となるのは、学童児のいない午前中の学童の部屋を自由に使うことができることです。ちなみに、ドイツの小学生は日によって下校時間が11時20分のときもあるので、早いときは子どもの学童への登園は11時半です。クラスがオープンになる以前は、児童がいない11時半より前の時間帯には、学童のスペースは全く使用されていませんでした。

「オープン園」に関する職員研修は、3年間を通して終日研修が4日間、閉園後の2時間研修が15回ほど行われたそうです。終日研修では、ミュンヘン市学校スポーツ局の担当専門職員が講師として研修を担当したそうです。その中で大切だったのは、最初の研修において職員一人一人の子ども観について丁寧にすり合わせがなされたことだったそうです。子ども像に対する一致した認識を確認する作業に時間をかけたそうです。そして、子どもの権利という観点から保育の見直しを行い、徐々に無理のない範囲での変化を遂げていったのです。最初は、過半数が園のオープン化に懐疑的であり、一番憂慮されたのは、「子どもと先生とのつながりが弱くなってしまうのではないか?」「年少児がとまどうのではないか?」という点だったそうです。その考えが徐々に改まっていったそうです。子どもたちの表情や、活動への取り組み姿勢が目に見えてポジティブに変わってきたことに気づいたからだそうです。

特に変わったのが、一斉保育において消極的な立場の子どもたちだったそうです。特に彼らにおいて、遊びの選択肢、遊び相手の選択肢、かかわる先生の選択肢などが広がることにより、園がより心地よい場所に変わっていることが実感できたそうです。この気づきにより、前述した子どもと先生との絆が弱まる可能性は、実は子どもの側からの問題ではなく、先生側の視点だったこということを理解したそうです。先生の「子どもとつながっていたい」という気持ちや、「子どもの行動のすべてを把握しているのがいい先生である」という考え方にしばられていたことに気づいたのです。

子どもの視点にたった自発的で無理のない学びが尊重され、長期的で、人格形成の基礎となる遊びの体験に基づいた陶冶が大切とされるドイツ。子どもの願いに寄り添おうと、よりよい保育環境をミュンヘンでは模索していると言います。

ドイツ報告4

どの国でも同じですが、いくらいいと言っても、どの園においても円満な「オープン園」への移行が行われたということはありえません。程度の差はあっても、さまざまな障害や困難、職員同士のぶつかり合いが待ち受けていたそうです。以前のドイツの園では、ひとクラス複数担任制で3歳から6歳の異年齢児25名を常時2人の先生でみていました。しかし、ドイツの幼稚園の開園時間は午前7時から午後5時までであるため、クラス担当の先生は、3名ないし4名でのシフト制をとっています。当時クラス活動は、ほとんどドアが閉鎖された状態でなされており保育内容についてはクラス内の担任同士で相談し、分担しあっていました。遠足についてはクラス単位での活動が主で、一例としては、ひとクラス全員で動物園に遠足に行き、別のクラスは川遊びに行くという具合だったそうです。2つのクラスが一緒に遊ぶ機会は、庭で遊ぶ時のみでした。

このクラス別活動形態が徐々に変わってきました。「オープン園」に移行する決断を園長が下し、職員全体での「オープン園」移行へ向けての研修を行います。オープンスタイルにスムーズに移行するためには、まず大人側の発想の転換が必須だからです。従来の保育方法に慣れている先生たちは、最初は「すべての子どもを把握するなど不可能」という反応を示したそうです。さらに次々と露呈してくる疑問や困難を職員全体で乗り越える協力体制を作っていかなければなりません。

まず、注目したのは、がらんとしていた廊下スペースです。庭だけではなく、廊下が両クラスの子どもたちが出会う場所となるように、左右に積み木ゾーンと、読書コーナーを作りました。次に改革したのは担任制のとりやめでした。先生の持ち場と持ち時間は週案により、月曜日に決めることにしました。さらにその際に、それぞれの先生の持ち寄る保育内容についても話し合います。毎朝全員の子どもたちが「朝のお集まり」として多目的室に集合します。その最後に数名の担当の先生がその日の設定保育について紹介します。この時に製作や、体操に内容が偏らないように、予め各自の保育内容を月曜日に申告しておきます。毎日複数の設定保育が提案できるように調整されているのです。

朝のお集まり時に設定保育を紹介された子どもたちは、自分のしたい製作や、遊びを選んで、担当の先生とともに、場所を移動することとなります。遠足やお散歩については、希望者のみでの移動となり保護者に対して個別の連絡など煩雑になることも多いのですが、あくまで子どもの希望に応じて実行されます。

園での大人の動線が軌道に乗ってきた頃、今度は子どもたち全員が園内で自由に動きまわれるようになります。自由遊び時間には、子どもたちは、幼稚園内であれば、どこで誰とどのぐらい遊んでもいいのです。この変化に伴って、クラスのドアは常に開かれた状態となりました。

さらなる改革は、保育室の模様替えです。従来は、ごっこ遊び、お絵かき製作、ボードゲームなどのそれぞれのコーナーが各保育室に配置されていましたが、子どもたちの動きを観察して、二つの部屋に同じ目的のゾーンは不必要であることが明らかになってきました。そのため一方の部屋には、ごっこ遊びとボードゲームコーナーを、もう一方には製作コーナー、ごろごろゆっくり過ごすコーナーと、それぞれの部屋に特徴をもたせることにしました。

ここまでの改革には数年かかったそうです。