今年のドイツ研修では、ここ数年ドイツでの取り組みについて、どのような背景があるのか、また、どのような研究があるのかを考えてみました。その一つの特徴は、「オープン保育」です。それは、何をするのか、誰とするのか、どの部屋でするのかを大人が誘導するのではなく、どんな決まりも、どんな制約もなく、子どもが自由に選べる保育です。そこには、最近特に見直されている「自由遊び」の大切さが意図されているようようです。
次の取り組みは、「小さな科学者たち」という取り組みです。そのゾーンでは、子どもたちは簡単な科学実験を行います。それは、ゴプニックが提案しているように、子どもは乳児から科学実験を行おうとする存在であることが背景になるのでしょう。試行錯誤したり、工夫したり、失敗したり、さながら大人における科学者そのものであることを見出したのです。
最後は、「参画」です。参画は、大人が計画したものへの参加と違って、計画自体にも加わったり、企画から参加することです。その一つが子ども「選択」があるように思えます。ドイツでは、たとえば、遠足にどこに行きたいのかということで、まず代表が集まって候補地を出します。それを掲示して、すべての園児が、その中から自分が行きたい場所へ投票します。そして、どれが多かったということだけでなく、その結果について再度子どもたち同士で話し合いをしてけていしていくそうです。この参画という取り組みは、ドイツでは子どもの権利条約を批准することになって、その内容をどのように具体的に取り組むのかということから始まったそうです。
今週初めに訪れてシンガポールでの取り組みで、参画を取り入れたのが子どもたちの「選択」です。今までは、先生主導で、何で遊ぶのかを決めていたのを、子ども自ら何をして遊ぶのかを選択させることにしたと言っていました。そうすることで、子どもたちが好きなことを自由にできることで、生き生きとし、また、フラフラすること減ったと言います。
また、昼食も、子どもたちに量を選択させるようにしたそうです。その取り組みについて、保護者に説明するボードは貼ってありました。まず、選択を取り入れる前は、残菜が多いだけではなく、姿勢が悪く、マナーができておらず、楽しそうでなかったと言います。それは、子どもたちは食を与えられているという意識が強いのではないかということで、そこで、昨年は、まず、その日の昼食のメニューを当番の子が発表することにしたそうです。そして、すぐにミニバイキングには取り組めないだろうということで、まず、おやつの時に、子どもたちは空のコップだけをとりに行きます。そして、当番の子がピッチャーに入れて、量を聞きながらコップに注いでいくようにしました。すると、子どもたちはそれだけでも自ら食べようとする姿勢に変わっていったそうです。そして、その変わっていった子どもの姿を写真で保護者に掲示したのです。
今年訪れた際には、昼食を子どもの当番の子が量を聞きながら配膳をしていました。また、席も自由に子どもたちが決め、食べ終わった子たちは、自分が使った食器を片付けていました。
このように子どもたちが一連の動作をスムーズに行えるように動線を考えているという説明がありました。
その取り組みは、他の子どもたちの姿にも影響を与え、いろいろな場面で自主的に取り組む子たちが増えたそうです。参画とは、そのような意味なのでしょう。