シンガポールにおける参画

今年のドイツ研修では、ここ数年ドイツでの取り組みについて、どのような背景があるのか、また、どのような研究があるのかを考えてみました。その一つの特徴は、「オープン保育」です。それは、何をするのか、誰とするのか、どの部屋でするのかを大人が誘導するのではなく、どんな決まりも、どんな制約もなく、子どもが自由に選べる保育です。そこには、最近特に見直されている「自由遊び」の大切さが意図されているようようです。

次の取り組みは、「小さな科学者たち」という取り組みです。そのゾーンでは、子どもたちは簡単な科学実験を行います。それは、ゴプニックが提案しているように、子どもは乳児から科学実験を行おうとする存在であることが背景になるのでしょう。試行錯誤したり、工夫したり、失敗したり、さながら大人における科学者そのものであることを見出したのです。

最後は、「参画」です。参画は、大人が計画したものへの参加と違って、計画自体にも加わったり、企画から参加することです。その一つが子ども「選択」があるように思えます。ドイツでは、たとえば、遠足にどこに行きたいのかということで、まず代表が集まって候補地を出します。それを掲示して、すべての園児が、その中から自分が行きたい場所へ投票します。そして、どれが多かったということだけでなく、その結果について再度子どもたち同士で話し合いをしてけていしていくそうです。この参画という取り組みは、ドイツでは子どもの権利条約を批准することになって、その内容をどのように具体的に取り組むのかということから始まったそうです。

今週初めに訪れてシンガポールでの取り組みで、参画を取り入れたのが子どもたちの「選択」です。今までは、先生主導で、何で遊ぶのかを決めていたのを、子ども自ら何をして遊ぶのかを選択させることにしたと言っていました。そうすることで、子どもたちが好きなことを自由にできることで、生き生きとし、また、フラフラすること減ったと言います。

また、昼食も、子どもたちに量を選択させるようにしたそうです。その取り組みについて、保護者に説明するボードは貼ってありました。まず、選択を取り入れる前は、残菜が多いだけではなく、姿勢が悪く、マナーができておらず、楽しそうでなかったと言います。それは、子どもたちは食を与えられているという意識が強いのではないかということで、そこで、昨年は、まず、その日の昼食のメニューを当番の子が発表することにしたそうです。そして、すぐにミニバイキングには取り組めないだろうということで、まず、おやつの時に、子どもたちは空のコップだけをとりに行きます。そして、当番の子がピッチャーに入れて、量を聞きながらコップに注いでいくようにしました。すると、子どもたちはそれだけでも自ら食べようとする姿勢に変わっていったそうです。そして、その変わっていった子どもの姿を写真で保護者に掲示したのです。

今年訪れた際には、昼食を子どもの当番の子が量を聞きながら配膳をしていました。また、席も自由に子どもたちが決め、食べ終わった子たちは、自分が使った食器を片付けていました。このように子どもたちが一連の動作をスムーズに行えるように動線を考えているという説明がありました。

その取り組みは、他の子どもたちの姿にも影響を与え、いろいろな場面で自主的に取り組む子たちが増えたそうです。参画とは、そのような意味なのでしょう。

計画とは?

園には、他にもいろいろな書類があります。その中で、最近私が疑問を持っているのが「指導計画」です。新しい保育所保育指針では「全体的な計画の作成」と「指導計画の作成」があります。その中で指導計画にはその展開が書かれてあります。そこには、私は矛盾があるように思えます。というのも、1990年の保育指針の改訂にあたって、児童中心主義へと変えていこうという動きの中で、生活と遊びに関する項目での「指導」の文言を「援助」に置き換え、指導そのものを否定する形をとったのです。

そしてその後「指導」とは「保育者の頭で考えたことを保育者主導で子どもにやらせること」とし、「援助」とは「自由遊びがさらに展開するように保育者が環境を整備すること」と説明しています。

しかし、今回の指針の指導計画に基づく保育の実施に当たっての留意点として次のように書かれてあります。

イ.子どもが行う具体的な活動は、生活の中で様々に変化することに留意して、子どもが望ましい方向に向かって自ら活動を展開できるよう必要な援助を行うこと。

ウ.子どもの主体的な活動を促すためには、保育士等が多様な関わりをもつことが重要であることを踏まえ、子どもの情緒の安定や発達に必要な豊かな体験が得られるよう援助すること。

ここに書かれてある「援助」はどのような意味でしょうか?

ドイツには、指導計画があるのか、月案、週案、日案があるのかを聞いてみたところ、「もちろん、計画はあります。」という答えでした。しかし、見せてもらうと、年案と言われるものがA4用紙1枚に簡単に書かれてるだけです。しかもそれは園の方針のようなものであり、園長が2年に一度書き換えるだけだと言っていました。もちろん、月案、週案というのも、ブログで紹介したように、「来週の何曜日には園外保育でどこどこに行きます。」というようなものだけです。

以前紹介したと思いますが、私の園でOB父親保育といって、卒園した園児のお父さんたちで土曜日すべて保育をするというイベントの時です。普段の父親保育は日常の業務を体験してもらうということもあり、日案を担任になったお父さんに書いてもらいます。そして、デーリーに沿って保育を展開していきます。しかし、OB父親保育の日は、特に園長代理や担任を決めずに、担当するクラスだけで保育をします。その後での反省会では、あるお父さんから、「きょうの保育は、ノンカリキュラムで、子どもたちがしたいことを私たちが膨らませてあげただけです。すると、とてもダイナミックな、面白い、子どもたちが喜ぶ保育ができた。先生方も、たまには、ノンカリキュラムの日を作ったらどうですか」と提案されました。だからいって、当日ぶっつけ本番ということではなく、おおまかな計画は立てていたのですが、当日変更したり、子どもの発想によって変化したりできるようなものでした。たぶん、このような計画がドイツの計画なのでしょう。

質の高い保育についてのイギリスの研究では、子ども主導の遊びや活動が多いという点、子ども中心で教師・保育者はつなぎ発展させる遊びや活動が多いという点であると言っています。ドイツにおけるオープン保育の実施には、計画案の発想の転換が必要です。

どこまでが個人情報?

随分と昔に海外の園を見学したときに、新しい時代だと感じたのが、写真を撮ることを規制されたときでした。その頃は、日本では子どもの写真を撮ることにはあまり神経質ではありませんでした。園に行って、まず「写真を撮っていいか?」ということを聞くことが必要だと初めて知りました。その頃は、それよりも、園で行っていること、子どもの姿をもっと地域なり、一般に見てもらう必要があるということから、たとえば、ガラス張りにして中での子どもの活動を見えるようにしたり、園庭にベンチを置いて園児の園庭での姿を見えるようにしたりする園もできました。それが、子どもの姿の写真を加工したり、ネットに流したりすることもあるということで、子どもの姿をなるべく見せないようにするようにという指導が最近は強くなりました。

同時にプライバシー保護という観点も強くなりました。個人情報というと一般的には、氏名、マイナンバー(個人番号)、生年月日(名前と組み合わせた場合)、性別(名前と組み合わせた場合)、住所(名前と組み合わせた場合)と言われています。日本では、個人情報の保護に関する法律である「個人情報保護法」が全面施行されたのは2005年4月です。しかし、何が個人情報かということはなかなかわかりにくいところがあります。顔写真はどうなのか、子どもの身長、体重はどうなのか、もっと抽象的なことで言えば、性格とか、特技とか、趣味などはどうなのでしょうか?

また、子どもの場合、その情報は誰のものなのでしょうか?もし、子どもに属するものであれば、その子の情報を親にも伝えてはいけないことになってしまいます。しかし、そんなことはないでしょう。子どもの様子を細かく保護者に伝えます。しかし、では保護者以外の他人にはどうでしょうか?その範囲は、どこまででしょうか?

ドイツでは、昨年、子どもの個人保護条例が改訂されたそうです。そのあたりの詳しいことは知りませんが、園で書く書類について質問したときにこう答えたのです。例えば、日本では要録といって、園での子どもの姿を小学校に伝えます。これは、子どもの発達をつないでいくという意図があるのですが、ドイツではその内容は子どもの個人情報だということで、小学校に伝えてはいけないそうです。保護者のものであるからと言っていました。ですから、保護者から伝えるのはいいそうですが。そのほかのことも、子どもの姿を書類には残してはいけないそうです。日誌、児童表、お便り帳などは本当の客観的な連絡のみだそうです。特定の保育者の個人的な見解や思いで子どもの姿を書類に残してはいけないそうです。それを聞いて、個人情報保護という観点というよりも、日本では保育者の大きな負担になっている書類の多くが軽減される気がして、うらやましい限りです。

そのほかにも、たとえば園だよりで子どものことを書く場合も、保護者の了解を得ないといけないそうです。しかし、それでいながら、子ども一人一人の姿や活動をファイリングしたポートフォリオを、いつでもだれでも見ることができるように置いてあるのは不思議な気がします。ただし説明では、ポートフォリオを私たちに見せてくれる時には、その子自身の許可を得ないといけないと言っていました。

今後、個人情報はどのように扱われていくのでしょうね。

オープン保育の普及

ミュンヘン市には、幼児施設が公立園が400園、私立園が600園あるそうです。定員は、公立園のほうが多いところが多く、園児数では若干公立園のほうが多いようです。そして、保育者は合わせて4000人、その他の職種が1000人ほど勤務しているそうです。

1日目の午前中に訪問した園は、一クラスに3歳未満児が8名、3歳以上児が7名、全体で3クラスですので、未満児24名、以上児21名、計45名の園でした。スタッフは、調理1名、清掃他1名を含めて15名です。

7時30分からの登園がほぼ終わった9時ころからお集りが始まります。その時には、この園では自分が属しているクラスに戻ります。そこで、今日のトピックスの紹介をします。その時に、子どもたちは、自分は今日は何をするのだということを決めます。トピックスには、歌や絵本の読み聞かせなどのほか、課題別に取り組むものもあります。また、最近人気のあるのが園外保育だそうです。ただし、園外保育への参加は3歳以上児で、人数制限があるため、事前に希望した子のみですが、その人数が若干少ないため、参加者の子どもが他に行く人を決めて誘っていました。園外保育で行く先は、近くのイザール川とか森林に行くそうです。月曜日に、その週の何曜日に、どこに行くか、制限人数などが告知されます。制限人数は15名ほどだそうです。その内容により、希望者は貼りだされた紙に名前を書くそうですが、あくまでも子どもの意見を尊重します。

お集りの後、お集りの時に紹介された活動の中から子どもたちが自分で選んだところへ、その担当の保育者と移動していきます。その中には、ランチルームに行って朝食を食べることもいます。

この園の重点項目は「環境・自然」に関係した要素を取り入れた遊びです。一つ目は「健康」です。そのために、給食の50%は有機野菜を使用しているそうです。次に「自己」で、自分を経験、発見、確立を目指すというものです。三つめが「自然科学」、そして「社会的関係」ということで、人とのかかわりを学んでいきます。最後は異文化を含めて「文化的」ということです。

その後の活動はときに特別なことはありませんが、どうしても疑問を持つのが、0歳から6歳児の異年齢クラスでオープン保育を行うという点です。年齢によって遊ぶ遊具は違いますし、危険についてもかなり年齢によって違います。それが一緒であるということはどのようにしているのでしょうか?それについての質問に、ミュンヘンの保育者は、0歳児から6歳児が一緒に遊ぶということは確かに課題が多いですが、共に学ぶというコンセプトはブレずに全職員が合意をして一つずつ乗り越えていくと言っていました。例えば、大きい子が作った制作やブロックを小さい子が壊してしまったりしないかという質問には、そのこと自体が学びであるために、そのようなことも必要だと考えるという答えでした。

今回ドイツで見学した園は、どの園でも0歳児から6歳児であろうが、6歳から4年生までの学童であろうが、園外保育や、どうしても危険なものが置いてある部屋には年齢制限はありますが、すべてどこで、誰と、何をしてもいいというオープン保育という形態をとっていました。

ドイツ報告19

ドイツのバイエルン州のレーゲンスブルグは町全体がユネスコの世界遺産に登録されているだけあって、いたるところに古い、貴重な建物が残っています。街並みも美しい景観を見せてくれます。路地も狭く、所狭しと建物が並んでいます。それでいながら、その街の中にある幼稚園や保育園、学童クラブは、どうしてあんなに広々と、余裕をもって作ることができるのでしょうか?日本では、待機児解消といって、保育所を次々と建設していますが、都会では、場所がないといって、マンションの一室であったり、園庭がない園が多く作られています。また、子ども集団がいないような小規模保育園も作られています。特に、最近は、日本では学童クラブは基本的には全入のため、狭い中に押し込められ、床で宿題をしている姿もよく見かけます。

ミュンヘンも同様に、街中でも十分な広い園舎と広々とした園庭、緑の中を走り回る子どもたち、夏はダイナミックに泥だらけになりながら水遊びをする子どもたち、それでありながら、一人で静かに過ごすことができるスペース、少人数で活動できるような小部屋、ゆったりできる癒しの空間、そんな部屋も用意されています。今回訪れたレーゲンスブルグの学童クラブの園庭は、とても広いだけでなく、石で組まれた水を流す川があり、それをせき止めるダムがあり、流れ込んで水がたまる場所がありました。そこで、子どもたちは暑い盛りでしたから、水着を着て、水を流したり、掛け合ったり、溜まった泥だらけの水たまりに体をつけたりして遊んでいました。また、保護者達が作った土に埋めたトランポリンを飛んだり、最後は、石段にみんな並んで、私たちに歌を披露して歓迎の意を示してくれました。私たちは、その子どもたちの歌を聴きながら、おもてなしのごちそうを満喫しました。そんな余裕が随所に表れていました。

2018年6月22日、今回のドイツ研修の最後の視察の日になりました。毎年感じることですが、ドイツに着いたときは、1週間は長いなあと思うのですが、視察最後の日になると、もう終わってしまうのかと少し寂しくなります。最後の見学先は、レーゲンスブルグの3~6歳児96名の幼稚園です。1995年に設立され、4クラスで構成されています。スタッフは、各クラス2~3名で、合計12名の保育者、他に給食1名、清掃等1名です。この園は、幼稚園ですが、キンダーガルテンとは言わずに、キタ(Kita)と言います。それは、Kindertagesstaetteの略で、意味は、「子どものためのデイケアセンター」で、通常「保育施設」とか、名称としては「保育園・幼稚園」とも訳されているそうです。これは、キンダーガルテンとはどう違いのかは聞きませんでしたが、昨年もらった園の紹介には、「ようこそKITA」と書かれてありました。

この園は、郊外にあるために、もちろん園庭は広々としています。子どもたちはその中で自由に遊んでいるのですが、平均台を渡るような慎重を要する場所にはキチンと保育者がついていました。園庭には、小道、水をせき止めたり流したりする水路、皆で囲んで焚火をする場所、久しぶりに見た虫ハウス、子どもたちが興味を持ちそうなものが自然の中に点在しています。

室内もミュンヘン同様、様々なゾーンで構成されています。その豊富さには目を見張ります。

今年も、いろいろと刺激を受けたドイツ研修でした。オープン保育の実施、そしてそこから見る二者関係愛着からソーシャルネットワークでの愛着の考え方。子どもの権利条約の批准に対して取り組んでいる子どもの保育への参画。そして、小さな科学者への取り組み。そして、保育への取り組みに対しての「ねらい」の考え方など、今後の日本での保育への取り組みに参考になる実践でした。

ドイツ報告18

学童クラブでは、毎年クラブ活動が行われています。それは、子どもたちが好きなことをやるという趣旨からだけでなく、この施設の規模が大きいために、少人数での活動を長期間にわたって行うという意図もあります。その種類としては、陶器、サッカー、演劇、ヨガなどがあるそうです。日本では、東京の学童は非常に多くの子どもたちは、とても狭い部屋の中で宿題をし、遊び、本を読んでいる状況を見ると、こちらの学童の豊かな環境にうらやましくなります。しかも、定員が80名ですが、希望者はもっと多くいるそうですが、定員以上は入れないそうです。広さからみると、どう見ても200名くらいは入所できそうな感じですが。こちらでも、入所には優先順位があるそうで、この学童では、90%の保護者が働いているそうです。

学童クラブは、市内には20か所あるそうですが、現在はその形は大きく2種類あって、この学童クラブのように、放課後ここにきて夕方まで過ごす場所と、学校を午後まで延ばすような形があります。小学校の授業時間が述べることに対して、小学校で教える内容を増やそうとするためなのか、働く女性が増えたため、夕方まで学校にいるような全日制にしようとするのか、どちらが理由かと聞いてみたら、保護者の就労のためだと言っていました。教える内容は、午前中だけでも十分で、今後全日制になっても、午後は課外活動のような、自由遊びのようなことをすると言っていました。

それにしても、ドイツは家庭学習をかなり重視しているので、宿題が多いようです。この学童クラブでも宿題を見る担当保育者が決められています。1年生と2年生のために4人の保育者、3年生と4年生のために別の4人の保育者が担当します。別に宿題担当保育者がいることによって、担当者が頻繁に変わることを防ぎ、子どもたちの学習到達度をより深く把握できると言います。

1日の流れは、他の学童と同じですが、11時15分に学校より児童が到着します。11時30分から13時までは宿題の時間です。終わった子は自由遊びをします。13時から13時45分まで昼食。その後14時15分まで庭遊び、もしくは休憩です。そして、14時15分から17時までの間に、3,4年生のように遅く来てまだ宿題の終わっていない子や、1,2年生でもまだ宿題が終わっていない子は、きちんと最後まで宿題をやります。並行して、自由遊びやプロジェクト保育をします。途中、15時30分から16時までおやつの時間です。そして、17時15分までお迎えの時間です。ただし、金曜日だけは、一切ここでは宿題をやりませんので、自由遊びやプロジェクト保育、お祭り、誕生会などの時間がたっぷりとれるそうです。

自由遊びの過ごし方は、場所はオープン保育です。しかし、その中で定期的な教育的働きかけはします。宿題の見守りは以下のように配慮するそうです。月曜日から木曜日までは、1日の流れの中で重要な位置づけがされます。静かで、落ち着いた学習環境を用意します。そして、すべての課題を終わらせるようにします。しかし、子どもそれぞれの学習能力については考慮します。保育者は、それらをチェックし、自分でやり遂げるように促したり援助をします。ここは塾ではありませんので、必要な子どもたちは、教えることをせず、必要な子どもたちは自宅での学習に任せます。

給食は、温かい、栄養バランスを考えた給食が提供されます。いくつかの異なる飲み物を子どもたちは飲むことができるように用意をしておきます。午後のおやつもこの学童クラブから提供されます。

ドイツ報告17

四日目の午前中、ミュンヘン市の学童保育の視察が終わって、昨年同様、レーゲンスブルグに移動することにしました。午後はレーゲンスブルグの学童施設を見学する予定ですので、昼食は移動の中のバスの中で、日本食の幕の内弁当をいただきました。

午後の視察先は、90年に設置され、2002年に大改装された1年生から4年生までの80名定員のナポレオンシュタインという市立学童施設です。対象児童は、隣接しているナポレオンシュタイン小学校と、特別養護施設の児童を優先するそうです。開所時間は、11時15分から17時15分です。金曜日は、17時までで、学校休暇中は7時30分から17時まで改所しています。1年のうち学校は休暇が60日ほどありますが、学童は、年間30日以上は休所しないことになっているそうです。

保育料は、ひと月163ユーロから181.5ユーロ(約2万3千円ほど)で、保育時間の長さで決まっているそうです。この費用には、給食費も含まれています。ただし、低所得者には軽減措置があり、最も少ない場合は、給食費(17ユーロ25セント)のみが自己負担です。

ドイツでは、保育者には、1級と2級がいます。1級は5年制大学を卒業し、教育学専門家と言われ、2級は、短大か養成校を出て、教育学助手と言われています。この学童には、フルタイムと時短勤務の女性1級保育者が6名、女性2級保育者が3名のほか、1名の男性2級保育者、1名の女性実習生(1年を通じて週三日間自習)が勤務しています。ドイツバイエルン州では、日本同様、非常に保育者不足で、職員が定員に満たないことが多いようです。この学童でも1名不足しているそうですが、レーゲンスブルグ市では、そのために市としてフリー保育者をプールしておき、足りないところに派遣しているおり、この学童も1名はそのような職員だそうです。また、特別養護施設からも来ますので、1名の養護保育者がいて、ケアを必要とする子どもを中心に活動しているそうです。

保育内容としては、幼稚園、保育所同様、バイエルン州における「バイエルン」という陶冶保育プランの基準と、「小学校の終わりまでの陶冶と保育」のガイドラインに沿って計画されるそうです。その中で、この学童の重点項目として、「ジェンダー教育」「それぞれの人格形成における多様な能力を伸ばすこと」「社会性の育成」が挙げられています。

保育は、オープンコンセプトで運営しています。就学前施設同様、児童は、自由遊びの時間には、自分で決めた場所で、自分で決めた友人たちと、自分で決めた遊びをすることができます。そのために、環境として、多様な遊戯室や、学習室が用意され、少人数で遊んだり、一人で静かに過ごしたりできる場所が用意されています。保育者は、2週間ごとに担当する場所が変わります。しかし、保護者との面談のために、児童の発達状態についての記録をとるのは、担当する児童が決められていて、それは、1年間変わりません。この考え方は、私の園も同じです。保護者に「子どもについての相談がある場合、園の職員誰でもいいですよ!」と言っても、逆に誰にすればいいのか迷ってしまいます。ですから、「あなたのお子さんは、○○の先生が担当します」と言います。だからといって、その子を保育するのは、担当保育者がするのではなく、いろいろな保育者が担当します。この学童でも、それと同じようです。

ドイツ報告16

視察四日目になりました。午前中は学童保育の見学です。ドイツでは、小学校、中学校は半日制で、授業は昼までで終わってしまいます。多くの学校では給食もありません。そして、宿題がたくさん出ます。子どもたちは家に帰ると、昼食を食べ、宿題をやらなければなりません。宿題が多いのは、もちろん学校ではやりきれないこともあるのでしょうが、自分で勉強するという習慣をつけるという意図もあるようです。学校では先生から教わりますが、それはやらされている感がありますので、社会に出てから自ら課題に取り組むという姿勢を身につけるということです。

昼で終わってしまうにはもう一つ理由があります。それは、日本と違って、子どもの教育に関して役割分担があるのです。日本では、学校の先生は、教科を教えるだけでなく、生活も、道徳意識もみな教えていきます。しかし、ドイツでは、学校は基本的な、だれでも学ぶべき勉強をする場所ということに特化して、基本的な生活習慣とか、しつけ、道徳規範などは家庭で行います。また、子どもが好きなこと、たとえばスポーツとか、ことは家庭で行う。ドイツでは何でも学校任せではなく、学校(主に学習)・地域社会(スポーツ等のFerein・クラブ活動)・家庭(基本的な生活習慣、躾、道徳)と役割分担がきっちりされています。

また、ドイツでは、就学年齢は決まっているものの、それはその年齢になると小学校に入学するという年齢ではなく、その年齢になると小学校に入学できる権利があるということで、いつから就学するかということは保護者が決めます。わりとインテリの保護者は1年遅らせるそうです。それは、小学校の学年が上がるときにもそうで、保護者がわが子をもう一度1年生をやらせたいと思ったら、その学年にステイします。ですから、各学年のクラスでは、子どもたちの年齢は様々です。だからといって、子どもたちは何の偏見も持っていないようです。

このような状況ですので、ドイツでの学童保育は非常に重要な役割を持っています。訪問した学童クラブは、1年生から4年生まで50名のクラブでした。ドイツでの小学校は4年生までですので、日本のような4年生までということとは事情が違います。スタッフは、9名ですが、ほとんどがパート勤務で、常勤は年長先生だけだそうです。建物は約100年前に建設されたもので、学童保育としては約50年の歴史があるそうです。

小学生の子どもたちは学校が終わってここに来るのですので、11時30分から13時までの間にきます。13時までに帰ってきた子がまずやるのは宿題です。学童クラブの主な活動は、きちんと宿題をやることです。ただし、金曜日に限っては、宿題はここでやらずに家に帰し、家でやってもらいます。そして、13時から14時15分まで昼食を食べます。その後は17時30分まで自由遊びです。ここでも、参画とオープン保育が実施されており、50名全員が一クラスというコンセプトです。週1回は、全体集会があるそうです。参画の考え方は、ここでは保護者に対しても行っています。

保育室は、学童対象であっても、全く幼児施設と同じようなつくりをしています。各部屋には様々なゾーンが用意され、園庭には、柳の木で作られたトンネル、石が点在する庭、環境だけ見れば、幼児施設と見違えるほどです。グッズとして面白かったのは、アルファベットの書いてある袋で、この中に書かれたアルファベットで始まるものを子どもたちが入れるそうです。

ドイツ報告15

三日目に訪問した園は、「小さな科学者」という取り組みをしている園ですから、園のコンセプトは、「小さな科学者」「統合保育」「地域とのつながり」「保護者とのつながり」であり、「すべての物事に対してオープンな心を持ち」、「何事も決めつけない」、「新しいものに取り組むことにもオープン」、「子どもに指示はせず」、「子どもと距離を置いて見守る」です。

子どもが楽しむということが最優先課題であるために、保育プランには、ねらいは立てません。たとえば、「子どもが松ぼっくりを見つける→先生に見て!見て!と言いに来る→先生は一緒に見てみようとする→子どもの疑問には一緒に考える→その手順の記録をとる」

この記録がポートフォリオと呼ばれるものとなり、子どもの関わりながら書いていき、いつでも保護者が見ることができるように置いておきます。また、その記録は、主に写真構成になっています。

テーマに沿った手順には、「実験」「数学」「自然科学」「情報」の四つありますが、その中で情報が最も面白かったそうです。しかし、手順はマニュアルではないので、個人の得意、個性を生かすことが大切です。今年のテーマは、「何か動くものを見つけよう」というものだそうです。

三日目の午後訪れたのは、1958年に小学校として建てられた建物を34年以来幼稚園として利用しているシュタイナー幼稚園です。シュタイナー幼稚園というのは、ルドルフ・シュタイナー思想である人智学に基づく保育実践園です。シュタイナー園は、ドイツが発祥ですが、なかなか見せてくれるところがないために、今年訪れた園は、ほぼ毎年訪れている園です。ですから、その報告は毎年書いています。

この園は0~3歳児が10名、3~6歳児が二クラス50名で、スタッフは清掃スタッフを含んで9名です。7時から登園、8時から10時まで自由遊び、11時前後のおやつを食べ、11時30分から12時30分までが外遊び、13時から14時が昼食、その後外遊び、16時45分に閉園です。どの園でも、デーリーを聞くと、昼食が遅いのにはびっくりします。日本では、随分早いために、午前中の活動がバタバタになってしまうことが多いのですが、ドイツでは昼食があるために、ゆったりと午前中を過ごすことができます。

保育は、自然素材の遊具、ワックスを使ったお絵かき、卒園児による手芸などが特徴的です。また、昼食の献立も曜日ごとに決まっており、保護者が当番制で作り、園にデリバリーします。メニューは、月曜日はスープ、火曜日はジャガイモ、水曜日はピザなどリクエストメニューでお楽しみ、木曜日はヌードル、金曜日はライスが中心です。おやつは、月曜日がコメを使ったもので、牛乳がゆなど、火曜日はクラッカー、水曜日はフィルゼという穀物クッキー、木曜日は麦を脱穀したパン、金曜日はミューズリーという押麦に牛乳を入れたものです。保育のメニューとしては、水曜日は園外活動、木曜日は粉をひく、金曜日はオイルトミューです。

今回、毎年訪れているので、シュタイナー独特の装飾を中心に写真を撮ってみました。自然素材、絹の布、人形などを上手に使っています。

ドイツ報告14

ミュンヘン市での見学も三日目に入りました。幸い、毎日天気には恵まれ、とてもいい気候です。また、21時30分くらいまで明るいので、なんだか得した気分です。

午前中の見学は1996年に設立された定員50名の幼稚園です。3~6歳児まで異年齢2クラスです。スタッフは、クラスに約2.5人の保育者、給食1名、清掃等1名、計7名です。0.5名の保育者は、異文化担当の保育者で、2クラスを随時移動します。

この園では、「小さな科学者たち」の認定を毎年受けている園で、認定証が何枚も壁に貼られています。二日目の午後も認定を受けた園でしたが、その園の見学と、三日目の午前中の園の見学に、ミュンヘン市の「小さな科学者たち」の担当責任者が一緒に参加してくれました。

実は、今回、初日の午後、私と現地で保育者として幼稚園に勤務していて、日本からのツアーのお手伝いをしてくれるベルガーさん(日本人)と、私の助手として一緒にドイツに来ている森口君と三人で、ミュンヘン市の学校局を訪れたのです。それは、昨年ブルグで紹介しましたが、今までミュンヘンで大変お世話になっていた幼稚園局長のグレッチェさんが、レーゲンスブルグへ移動になって、新しい局長さんになったからです。学校局で出迎えてくれたのは、局長さんほか、視察担当責任者と、今回、見学先の要望の一つの科学への取り組みに対して、「小さな科学者たち」の責任者の3人でした。そこでは、それぞれの国の課題について話をしました。少子化、保育者不足、待機児、様々な事情は、随分と似ています。

その学校局でお会いした科学担当の女性が、昨日と今日の午前中に参加して、質問を受けてくれたのです。私と森口君と、彼女はどのような出身だろうか?彼女は大学で何科で学んだのだろうか?科学の専門家なのだろうか?などと話していました。そこで。ベルガーさんに聞いてみました。すると、「保育者出身です。保育者の時に自らその分野を研究し、実践し、その後教育局に入って、その担当になった。」ということでした。もちろん、昨日お会いした局長も、視察担当も、教育局の部局の中枢の人たちは、皆、保育者、園長経験者です。それは、「研究者である前に、まず保育者であれ!」と言っているようです。しかも、局長さんの年齢は聞きませんでしたが、かなりお若い方でした。ですから、現場にいたのは最近のことのようです。また、視察に参加してくれたということは、現場に良く足を運ぶということでしょう。私の園で言えば、都庁の役人さんが、常に現場に足を運び、共に保育を語るということになります。ちょっと考えられませんね。

子どもたちは、家で、園庭で、降園で見つけたものを園に持ってきて並べ、それを観察することからいろいろと発見をしていきます。もし、専門的な知識が必要であれば、保護者に協力を頼みます。園庭には、お父さんたちが作った足の裏の触角を促すような道が作られてあったり、園庭の隅には、石がごろごろと敷き詰めた場所があり、子どもたちは虫眼鏡を持って、石の観察か、石の間にいる虫の観察をしていました。

このような「小さな科学者たち」の取り組みは、もともとは持続可能教育の一環としてユネスコから提唱されたもので、この地域の園長たちが集まって、1日半、保育者は1日研修をするそうです。そこでは、子どものヒトとなる視点、地産地消の考え方、ごみの分別などを学ぶそうです。