2017韓国三日目午後3

日本では、選挙結果が自民党の圧勝でしたが、実際には幼児教育に関して今後どのような政策がとられていくでしょうか?今年の五月に政府は、経済財政運営の指針(骨太の方針)で、幼児教育と保育の早期無償化を明記する方針を示しました。そして、財源については歳出削減や税、新たな社会保険を対象に、年内に結論を出すと言っていました。高等教育については「人材投資を強化するための改革のあり方も早急に検討を進める」との表現にとどめ、6月2日の経済財政諮問会議での議論を踏まえ、9日に閣議決定すると言っていました。

文部科学省は今年の9月27日、日本、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、中国、韓国の7か国の教育状況を統計データで示しています。それは、「諸外国の教育統計」平成29年(2017年)版として公表したものです。そこでは、高等教育在学者の人口千人あたりの人数は、韓国が63.8人ともっとも高く、日本は23.4人と中国についで2番目に低いことが明らかになっています。

また、私立学校の割合について、幼稚園や保育所などの就学前教育では、「日本」73.9%、「アメリカ」30.8%、「イギリス」(初等中等学校も含む)6.0%、「フランス」12.3%、「ドイツ」65.2%、「中国」52.5%、「韓国」79.2%ということで、韓国が一番多いようです。韓国では、私たちが何園か見学したところのような企業所内保育園は、財団のような私立が運営しているので多くなるのかも知れません。ちなみに日本は韓国についで多いようです。しかし、私立小・中学校となるとその割合は日本がもっとも低くなります。それが、また大学や大学院、短期大学などの高等教育になると、「日本」74.5%、「アメリカ」27.6%、「イギリス」0.1%未満、「ドイツ」6.7%、「中国」23.0%、「韓国」80.3%となり、日本は韓国についで2番目に高くなります。なお、フランスは、「私立大学」は学位授与権が認められていないそうです。

今回の韓国就学前教育施設見学の最後の園は、公立園を見学しました。この園は、ちょうど私の園のように地下一階から地上四階までの園でした。しかし、他の園同様、全体はゆったりした作りになっているのですが、各保育室は何か窮屈そうに見えます。もちろん、各保育室には領域毎の教具、教材は色々と工夫されています。ここで、初めて見たおもしろいごっことして、映画撮影ごっこセットがありました。撮影用カメラの他、メガホンや撮影スタートの合図に使うガチンコがありました。また、ある部屋のは電子黒板が置いてあり、パソコンのタブレットのような使い方をするそうです。

ランチルームも整っていて、そこで子どもたちがおやつを食べていました。メニューはジャガイモをふかしたものでした。食べるときに、子どもたちは低い座卓でどう食べるのかと思っていたら、多くの子どもたちはあぐらで食べていました。韓国では、男女ともあぐらや立て膝で座るのが正式のようです。

今回韓国の施設見学で今後の課題について考えたことは、私が最近一番大事にしたいと思っている「子ども同士の関わり」のあり方の気がします。保育室が年齢別に仕切られている形態は、小学校のように保育者が子どもたちに一斉に何かを教えることが多いことを表わしている気がします。空間的環境、物的環境が整った後、人的環境をどう用意するかという点が、韓国では次の課題の気がしています。

2017韓国三日目午後2

三日目の午後に訪れた私立オリニジップは、ヌリ課程の意味をよく感じることができました。日本では、私立園の方が人件費に公立園ほどかけていないために、立派な園舎や、豊富な教材があるところの方が多い気がします。しかし、韓国では、どうも私立の方がそれほど補助金がない中、園児を集めるために一生懸命なようです。そうすると、保護者の要望に応えて、何かを教える、何かができるようになるという早期教育に走る気がします。また、その形態も、一斉に保育者から子どもに指導する形で行なわれてしまいかねないところ、ヌリ課程のおかげで、保育室内には、部屋のまわりにきちんと領域が造られているのです。ここここで遊んでいる子どもたちの姿は見ることはできませんでしたが、少なくとも、自由時間は、子どもたちが自ら選び、取り出し、遊んでいるであろうということは想像できます。「さあ、◯◯で遊びましょう!」といって、保育者が決めたものを決めた数だけ出して、遊ばせたり、「次はこれ!その次はこれ!」と保育者が子どもたちを次々と指示し、課題をこなしているような保育をある時間はしていないだろうということも推測できます。このような環境があるだけでも、違うでしょうね。

私たちが見学した時間は、午後でしたから、特別だったかも知れませんが、あるクラスでは英語教育を一斉に行なっていましたし、ある部屋では、フレーベルの恩物を子どもたちが使っていました。この恩物については、ブログで2014年一月に何回かにわたって書いていますので、興味を持っている方はそちらを読んでいただければと思いますので、簡単に触れます。韓国の保育で使っていた恩物は、第二恩物徒呼ばれるもので、「球」「円柱」「立方体」の三体を選び二者識別をテーマにしています。ちょうど見たときは、「立方体」をつるして回転させていましたが、それは、回る像を見ると、形が変形して、中に「円柱」が見えるときがあることに気がつくというものです。この時間帯は保育者が指示して、子どもたちに意図したことをやらせている時間ではありましたが、ヌリ課程がなければ、一日中、このような保育が展開されるかも知れません。

もう一つ、ヌリ過程の役割がわかりました。それは、園庭に対する考え方です。この園は、市内の中心地にあるため、ビルの一つの階に保育室があります。当然園庭はありません。しかし、設置が決められていますので、その園から外に出て、ビルの違う入口から入り、階段を登って行くと屋上に出ました。そこが、この園の園庭だそうです。契約をして、園庭として使わせてもらっているそうです。そこには、きちんと菜園もありました。そして、隅にはしゃれた小屋が建ててあり、そこで本を読んだり、ちょっとしたコーヒーブレイクができるような空間が用意されていました。私たちは、そこでハーブティと韓国の特徴的なお菓子を頂きました。

2017韓国三日目午後

午前中の見学が終わり、その日の昼食は韓国伝統料理である「サムゲタン(参鶏湯)」でした。最近、日本でもよく食べるようになっていますが、鶏肉に高麗人参、もち米などを入れて煮込んだスープです。まず、よくかき混ぜて、もち米をほぐし、鶏肉を骨からほぐし手から食べます。一日目の夕食に食べた「カルビタン」と同様、「タン」とは、スープのことです。鶏肉の他に、朝鮮人参が丸ごと入り、干しナツメ、栗、松の実、ニンニクも入っているので、薬膳料理とされています。

昼食後の午後は、オリニジップ2カ所を見学しました。昨年、初めての韓国研修ということで、わりと整った園を見学したのですが、今回は、孔先生が、その他の普通の園も見学した方がいいということで見学先を手配してくださいました。まず、最初は、個人立のオリニジップです。そこでは、園長先生始め、子どもたちが非常に歓迎をしてくれました。

まず、玄関でお出迎えしてくれた園長先生は、その日のために韓国の民族衣装であるチマチョゴリを着ていました。この衣装は、現在は観光地でレンタルされていて、着ている女性を見ることはありましたが、普段はあまりありません。また、チマチョゴリと一言で言いますが、実は、男女共通の上着であるチョゴリ(襦)と、巻きスカートであるチマ(裳)によって構成されています。

玄関には歓迎の言葉が飾られています。そして、入った玄関ホールには床一面に世界地図が貼ってありました。各国に行って世界地図を見ると、当然ですが、その国が真ん中になるように配置されています。私たちが普段目にする世界地図は、日本が真ん中で、右にアメリカ、右にアジアからヨーロッパが描かれています。ドイツで買うと、日本は右端に描かれてあります。ここ韓国の床に貼られた世界地図は、韓国が真ん中に大きく描かれてあります。

年長さんの部屋に入ると、年長さんも皆チマチョゴリを着て歓迎してくれました。そして、韓国独特の目上の人に対してのお辞儀を披露してくれました。両手を顔の前で自然に合わせます。これをハングルで「コンス」と言うそうです。クンジョル(韓国伝統の最上級のお辞儀)の前や後、それから目上の人の前ではこの姿勢をとるそうです。両手を合わせる際、親指と親指をクロスさせ、残りの指は綺麗に揃えます。男性は左手が上に来るようにし、女性は右手を上にします。そのままの姿勢でしゃがみ、手はそのままで床に頭をつけるようにお辞儀をします。

その後、まずホールに行きました。そこには、この園が街の中心部にあるために体を動かす園庭がないために、大型室内遊具が置かれていました。チマチョゴリを着た子どもたちは、韓国の伝統遊びを披露してくれました。伝統的な双六、矢を筒に投げ入れる遊び、リフティングのように足で蹴る遊び、輪を棒で転がす遊びなどです。そして、週一回、伝統的な太鼓の練習をやるそうです。

この後、保育室を見て歩くのですが、もしヌリ課程がなければ、いろいろな認知的なことを教えることをしそうな気がしました。あまり子どもたちが楽しい雰囲気がなく、やらされ感が強い保育ではありますが、どのくらいのそれを使うかわかりませんが、ヌリ課程に定められた領域が保育室に用意をされていて、子どもたちの自主性は少し保障されている気がしました。     

韓国子育て政策

韓国は、日本以上に少子国家です。そこで、様々な政策を打ち立てています。その一つが0歳児までの保育料無料化です。また、子育て支援策を行なっています。それは、日本でも行なっていることと同じものが多いのですが、おもしろいものもいくつかあります。そのひとつが、小学校300校に学校給食プログラムの助手を置くというものがあります。これは、交換勤務の働く母親の負担を軽減するプログラムです。また、ここに60歳以上の年配の女性を雇用し、子どもたちにテーブルマナーを教えることもしていますが、それは、中高年女性の雇用創出になっているそうで、6500人が雇用されているそうです。

また、韓国での子育て支援という項目で検索すると、多く出てくるのは、多文化家族への支援です。ソウルでは結婚による移住人口の81. 5%が女性です。これは韓国男性は、配偶者としてアジア諸国のベトナムなどの女性と結婚することが多くなったということのようです。しかし、彼女らは、母国と文化が異なり就労もむつかしいために、うまく定住できるように多文化家族のために“ハヌルタリ”計画があるそうです。この計画とは、国際結婚の準備学校として、男性配偶者のため結婚式前の国際結婚オリエンテーションを行なったり、また多文化家族向けの子育てサービス支援や、結婚した移住女性のためのキャリア形成と自営業の支援、各国のマタニティ文化についてのDVDを配布したりしているそうです。そして、多文化家族に寄り添うレインボー・フォーラム・エージェントを作り、プロジェクトのモニタリングやプランの提案もします。

ほかにも、ひとり親家庭への支援では、「シングル・スマイル・プラン」があります。ソウルでは、全世帯の80%が父親のいない家庭だそうです。そのため、低所得のひとり親家庭の高校生に学習教材や無料のオンラインクラスを支援しているほか、無料の健康診断サービスと心の健康のクリニック・センターを開設しています。そして、このシングルマザーの能力強化のために学校、オンラインによる自習システム、子育て費用の支援等もあるそうです。

政策課題として、「活き活きとしたソウルをめざす」というスローガンのもと、主婦のための仕事創出として「ハッピー・マム・プロジェクト」があります。結婚や出産で職業経験から取り残された女性のためにキャリア形成と自営業(起業)の支援、また、長期間、資格を取っても使われないでいる人のために、その免許証を生かすプランもあるそうです。これは社会とのつながりを断たれた専門技能を持つ女性たちを雇用市場につなげる意図があるそうです。アパートを訪問し、キャリアについてアドバイスする雇用訪問サービスや、ファッション産業や結婚ビジネスなどに結びつけ、地域特性のある部門で女性が働けるよう地域の労働市場を動かすなどをしているそうです。この活動は、ソウル市内25区のうち、現在は8 地区が動いているそうです。

それらの助成のために、子育て支援もあります。起業をめざす女性のために子育ての支援もあり、子育て、食事サービス、障害のある子どもを持つ家庭への支援や産褥期の女性へのケアをしているそうです。また、福祉や教育、文化イベント、子育てなどの情報について総合的なインターネットサービスも供給しているそうです。コンビニなどでも、ベビーカーの貸し出しをしている店もあるそうです。

講演のあと

講演のあと、ハンソル財団の役員の方々と昼食を頂きました。このハンソル財団ビルの中には、レストラン街もあるらしく、その中の食堂で、「韓定食」を頂きました。韓国料理と言えば、辛いというイメージがあります。私は辛いものが苦手で、今回の韓国でもできるだけ辛くないものを食べていたのですが、接待の料理となると食べないわけはいかないだろうと覚悟していたところ、韓料理は、辛くない韓国料理だそうです。それは、この料理は、朝鮮半島に唐辛子が伝わる前とされる朝鮮王朝時代に王が食べていた宮廷料理のことで、医食同源や五味五色の思想から、体によく彩り豊かな料理です。海外ドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い」にも登場していたそうです。

五味五色の思想とは、陰陽五行説に基き、五味五色(塩味、甘味、酸味、苦味と赤、黄、白、黒、緑)の料理のことだそうです。しかし、食べるときには、先方から、今日の料理は「“かんていしょく”です。」と言われ、「官邸の料理で、高級かな?高級なのであまり辛くないのかな?」と思っただけでしたが、後で調べたら五味五色と書かれてあり、料理を写真に撮って色を吟味したり、よく味わったりすれば良かったと後悔しました。

五味というと、日本人特有の五つの味覚と言われています。甘味・酸味・塩味・苦味・旨味です。特に、旨みは日本独特です。しかし、実は日本独特というわけではなく、中国では、五味を五行に対応させる陰陽五行説があります。そこでは、甘味が木、辛味が火 苦味が土 塩味(鹹)が金 酸味が水に対応します。

また、五色というのも、日本料理の盛りつけの基本とされている赤・黄・藍・白・黒があります。しかし、中国でも色について、五色がありますし、季節や人生を色に名付けています。2011年1月23日のブログに「人生色」ということで、そのことが書かれてあります。「中国古来の思想では、季節に色を与えてきました。春は青、夏は朱、秋は白、冬は玄です。したがって人生を春夏秋冬の四季になぞらえ、青春、朱夏、白秋、玄冬と呼ぶそうです。」この人生を色で表す言い方は、味だけでなく、中国の陰陽五行説に由来しています。

その日の夕方、ドイツでおなじみのホテルでの振り返り研修をやりました。16時から18時まで、ホテルの会議室を借りて、これまでの見学の振り返りをします。今回、韓国ではこの研修が二晩予定されています。

人は、同じものを見ても、同じところを見ていないことが多くあります。また、気がつくところ、気になるところもずいぶんと人によって違います。そんなことをこの夜の研修では気がつきます。見学先には、それぞれ分担してお土産を持っていきます。そのお土産を渡した人が、その園の環境を撮った写真を、どんな観点からその写真を撮ったかを説明しながら皆に夜の研修会で、プロジェクターで見せます。また、それが何かわからない写真については、他の人が聞いた話をします。そうやって、見学先の環境を共有していくのです。それを見るたびに、私は「えっ?こんなところあったっけ?」と思うことがしばしばです。また、同じところを見ても、「えっ?そんなことに使うんだ!」と思っていたのと違うこともしばしば。よくドイツでは、「子どもに関する記録は、人の見方は偏ってしまう可能性があり、それを子どもが知ったら、大人になってもトラウマになってしまうことがあるので、一切しません。」というのを聞いたことがあります。

2017韓国での講演

世界銀行が提案しているように、社会的流動性を高めるためには、教育への投資が、効果ありそうです。南アフリカのように、一層貧困状況の悪い(教育への投資もはるかに少ない)国々よりも悪い成績を収めている学校がほとんどである国の脆弱な学校制度では、賃金上の特権階級をなくすほど急速に能力が成長することは見込めません。そうなると、政策上の焦点は教育の質を向上することに置かれるべきであるということになるのです。

このような観点から、『OECD保育白書2017年版(Starting Strong 2017)』でも、安価で質の高い早期幼児教育・保育(early education and care, ECEC)を提供する取り組みを強化するべきだと提案しているのです。ここで、「安価」という意味がこの文からだけですとよくわかりませんが、社会的流動性のためにも、質の高い幼児教育を提供することが必要であるとしているのです。この報告書によると、「ほとんどの政府が近年、入園、入学者を拡大するためにより多くの託児所と学校を開設するための投資を増やしていることを明らかにしています。今後各国は、教諭の労働条件の改善、あらゆる子供に公平な利用の機会を確保すること、新たな指導方法の導入などに焦点を当てる必要があります。」とあります。そこでは、世界銀行が思い切った教育改革が必要とあるように、あらたな指導方法の導入を勧めています。

「あらたな指導方法」とはどういうことでしょうか?それは、時代的に、少子高齢化社会を迎え、AI社会の到来に向けて、本来の人類の進化から伝統的育児を見つめ直し、そして格差社会において、インクル-ジョンの考え方からの保育に取り組まなければならないこと、そして、乳児からの教育の必要性など、今回、私が韓国での講演に際し、最初にこのような提案をしたのです。なぜ私が乳幼児教育において「見守る保育」を提案しているのか?それに対して、子どもの主体性と自発性の保障、自ら取り組める環境、それらは、常に不易であり、大切なことです。しかし、それらはすでに韓国ではヌリ課程により規定され、すべての園で取り組んでいます。しかし、少子化以降、子どもたちの育ちに変化があり、新しい保育が必要であること、それは、乳児からの子ども同士の活動、また、大人からの指示で動くのではなく、子どもへの言葉がけは、子ども自身が考えるような質問形式で行なうこと、自分の考えを言う機会を増やすことなどの提案をしたのです。

私の園での1歳児の朝のお集まりから、午前のおやつに至る動画を見ながら、解説をしていきました。まず、お集まりには、先生はせかすことなく、子ども自身が判断して、集まり、自分の座る席を探し、そしてみなが揃うのを待っている様子。その後の午前のおやつのパンは、子どもにただ配って歩くのではなく、一人一人にジャムが付いたパンか、何も塗っていないパンかを子どもに見せて、「ジャムが塗ってあるパンと、何も塗っていないパンのどちらがいい?」と聞きながら配っていきます。食べ終わりも、自分の判断でやめ、自分で食べきれないパンや飲みきれない飲み物を残菜カゴに入れ、食器を片付けていきます。その後のお手ふき、エプロンの片付け、1歳児は自ら試行錯誤しながら、また、友だちや先生の手を借りながら行なっていきます。この動画は、韓国の園長先生たちには、大いに感心されました。

このように、かなり反応があった講演会は終わりました。

2017韓国三日目午前

今回の韓国訪問には、韓国の保育園であるオリニジップの見学と、もう一つ目的があります。それは、韓国内多くの企業所内オリジニップの運営委託されているハンソル希望教育財団において、その財団が運営しているオリニジップの園長向けの講演を頼まれているのです。今回のツアーの参加者は、23名でしたが、私が講演している間、せっかくなので韓国観光で、世界遺産や博物館の見学を計画していました。講演には、私と助手を務める西村君他1~2名の参加予定で、ツアー参加者に、講演への参加希望を聞いてみました。なんと、全員が参加したいとの意向でした。韓国での講演といっても、いつも日本で話していることですし、それほど特別なこともないので、是非観光の方に行ってくださいとお願いしたのですが、皆さん、まじめなのか、私に気を使ってなのか、参加を希望してくれたのです。私としては、もちろん嬉しいことなのですが、観光を計画してくれた金さんにも悪いし、財団でもそんなに無理だということで、交渉した結果、半分の十人くらいならということになりました。そこで、朝、くじ引きで参加者を決めることにしました。

しかし、朝になって、私は一緒に勉強する人をくじ引きで、「当たった!外れた!」などで決めるのはおかしいと思い、今回は、若い保育士さんは、これからも機会があるだろうということで、園長先生たちに決めさせてもらいました。それは、ちょうど10名くらいだったからです。皆さんが参加してくれることは心強く、もし導入に関して質問が出たら少し話してもらえると思っていました。

私はお迎えの車に乗り、残りの人はタクシー2台に分乗し、財団に向かいました。着いてみてびっくり。そのビルは37階建てで、すべてが自社ビルで、色々な事業を展開している財団のようです。会場は、17階でした。会場には、私たちのメンバーが10名ほど前の方を占めてしまったので、後ろのほうは立ち見で、100ほどの参加者で会場がいっぱいでした。通訳は、「見守る保育」の韓国語版の時に翻訳してくださった韓国の保育者養成校の烏山大学大学院教授の孔先生が務めてくれました。

現在、幼児教育に各国力を入れるべきだと主張し、現在の保育に警告を出し、教育の見直しを進めているのが、教育学者でもなく、保育学者でもなく、経済学者であること、そしてそれを先導しているのがOECDです。2017年8月22日の日本経済新聞朝刊にOECDに関して少し書かれてありました。「経済協力開発機構(OECD)を中心に子育て施設での教育の研究が進められている。子どもは生まれて3年間で言葉や数の概念などを学ぶ。保育所や幼稚園などは子どもの発達に影響を与えることから、子育て施設には教育の質を求める。」私の講演は、その研究の紹介から始めました。そこでは、乳児保育、3歳未満児保育における高い質の重要性が謳われています。

では、具体的に高い質と言われる保育とはどのようなものかという話になります。その保育の内容を検討する前に、OECDが、こんな提案を、「早期幼児教育・保育の改善で、より多くの子供を成功させ社会的流動性を高めることができる」というテーマで『OECD保育白書2017年版(Starting Strong 2017)』の中で主張しています。そこでは、各国は、社会的流動性を高め、あらゆる子供が自分の能力を最大限活かす機会を得られるように、安価で質の高い早期幼児教育・保育(early education and care, ECEC)を提供する取り組みを強化するべきだ」と提案していることを紹介しました。

2017韓国二日目午後2

韓国では、日本における東京23区と同様、ソウル特別市25区に分かれています。ソウルは、大韓民国の首都で、かつて朝鮮王朝の首都「漢城府」と呼ばれていました。「ソウル」とは朝鮮語の固有語で「都、首都」の意味だそうです。日本統治時代の朝鮮では漢ではなく京を使い「京城府」と呼ばれた時代もありましたが、もとは京畿道に属していましたが、1946年に分離し「特別市」となっています。その25区の中でも中心地が中区です。私たちが宿泊したホテルは中区にあり、官庁や大企業本社、金融機関、明洞や、南大門市場、東大門ファッションタウンなどの繁華街もあり、韓国の経済、商業、文化の中心となっています。

また、ソウル特別市西部、漢江北岸にあるのが麻浦区です。ここは、ソウルワールドカップ競技場があり、2002 FIFAワールドカップの開会式が開かれた競技場として有名です。ほかにも、弘益大学校のある弘大地区は美術・デザイン系学生が集まる学生街・繁華街であり、バーやクラブ、ライブハウス、ギャラリーなどが多く集まっています。また、ソウルで住みたい場所No.1に度々選ばれマスメディアでもよく取り上げられているそうです。二日目の午後2園目の見学は、この麻浦区役所内にあるオリニジップです。区庁舎を入って、ロビー左手にオリニジップの入口が見えてきます。そんな入口ですから、日本にもよくあるような企業所内保育所のような、一部屋に様々な年齢がいるようなイメージで中に入って、びっくりしました。絵本が棚にびっしりと並び、木陰でお迎えの時に親子でくつろいで本を読むための空間が広がっています。そして、その後、説明のために通されたホールは、まわりには乗りものの遊具が並び、ボール遊びもできるような空間が用意されています。

日本では大阪市内には市庁舎や区役所に設置されるようですが、いずれも定員は10~20名ほどですし、東京都庁内の保育所は48名だそうです。しかも、そこに働く子弟だけでなく、地域枠もあるそうで、どのくらいの費用を掛けるかわかりませんが、費用対効果としてはずいぶんと少ない定員の気がします。また、園庭はあるのでしょうか?プールや砂場はあるのでしょうか?運動会やおたのしみ会などの行事はあるのでしょうか?韓国の麻浦区役所内保育所は、定員は108名で、ちゃんと園庭や砂場はあります。しかし、やはりビルの一角ということもあるのでしょうが、地面はすべて人工加工物であるクッション系のもので敷き詰められていました。ケガをしないで安心かも知れませんし、砂埃がたたずに安心でしょうが、やはり土の部分がほしい気がします。この園庭の境のフェンスの向こうには、区役所の林が広がっていたので、私は、区と交渉してもう少し向こうにフェンスを移動させてもらったらどうかという提案をしました。すると、園庭の隅が林になると、もっと子どもの遊び体験は豊かになると思うのですが。

保育室内も、かなり充実しており、子どもたちは様々な体験が出来るようになっています。特に、自然物を使った装飾を始め、観察領域としての自然物、制作領域に使う自然物と子どもたちが様々なところから季節を感じるようにしてあるのは学ぶところが多いです。しかし、その意味では秋はとても感じることができる素材は多いのですが、他の季節には、どのような物を置いてあるのか興味あるところです。   

韓国二日目

韓国の明洞は不思議な街です。その地域は、南大門市場の通りを挟んで反対側にあります。主婦層の多い南大門市場に比べ、ここでは若者の姿が多く見られます。その街の雰囲気は、日本の様々な街と比較されますが、私の印象は、原宿の竹下通りのようです。違うのは、通りの両脇にはびっしりと屋台が並び、様々な食べ物が並び、その食べ物を食べながら歩き回る若者が多いという点でしょうか。もう一つ、店の種類として、ここで非常に多いのが、韓国コスメの店です。衣料品の店が多い原宿と違って、化粧品、顔パック、クリームなどのコスメが多いのです。カタツムリパックとかカタツムリクリームは有名です。また、高級ブティックやカラオケボックスやメガネ店やファストフード店と並んで、公然と偽ブランド品を売っている露店もあります。また、ここでは多くの客は中国からだったそうですが、最近は中国で海外での買い物を禁止したためにめっきり少なくなったそうです。

夕食の帰り道、そんな明洞を通ってホテルに戻りました。

次の日は施設見学です。午前中は公立のオリニジップです。オリニジップとは0歳から6歳までの園です。昨年、韓国報告をしましたが、日本では、選挙公約で5歳児保育料無料化が叫ばれていましたが、韓国では、現在0歳からすべての年齢において無料化されています。そのために、政府では質を担保するために、3歳以上児に対してヌリ課程、未満児に対して教育標準過程というものを定め、3年に一回、その通りに保育されているのかを評価指導に来るそうです。この時に、韓国ではオリニジップとキンダーガーデンとの間で3歳以上児に対する過程の一体化が行なわれたのです。このヌリ課程は、今回訪れた各園では、かなり否定的でした。それは、すべての園の底上げに有効ですが、今回訪れたような良いと言われている園からすると、園による創意工夫がそがれてしまっていると言います。例えば、異年齢保育を行なおうとしても、ヌリ課程では年齢別で保育をすることと書かれてあるそうです。特に、4,5歳の異年齢、3,4歳の異年齢はいいのですが、3歳から5歳児までの異年齢保育は行なってはいけないことになっているそうです。しかし、政府では、「教育課程を実行する側の教師の専門性と力量によって効果的に応用することができる」と言っています。

それでも、このヌリ過程は、大学の教育関係者によって作られているものですから、その内容からはどのような保育が質に必要であるかを見ることができます。昨年に引き続いて、私が韓国ツアーを企画したのは、世界標準の保育を見るためです。それは、1園だけを見ても、それがヌリ課程で定められている部分であるかがわかりませんが、今回5園を見ることで、どの園でも行なっている保育、環境が定められていることかがわかってきます。その上で、難しいながらも、各園が創意工夫をして、質を独自で高めているかを知ることができると考えたからです。

例えば、各保育室には7カ所の領域が用意され、子どもたちはそれを自ら選択して遊びます。そして、それぞれの領域には、どんなものが最低限必要であるのか、どのような環境構成が必要であるかがわかります。また、保育室は子どもの数に比べて狭い気がしたのですが、全体はゆったりしています。それは、子ども一人当たり2.6㎡で、日本の2.98㎡に比べてかなり狭いのですが、園全体の面積も子ども一人当たり6㎡と決めれているそうです。職員室もない、玄関ホールもない、収納室もないなどの園はいくら企業所内保育所と言ってもありませんでした。

韓国一日目夕方

夕食まで少し時間があったので、ホテルの近くの南大門市場に行ってみました。ここは東大門市場と並ぶソウル二大市場の一つです。通訳の方に、二つの市場の韓国語の覚え方を教わりました。だじゃれですが。南大門はナムデムンといい、東大門はトンデムンと言うそうです。覚え方は、「なんでもない」と「とんでもない」だそうです。南大門市場にいたのですが、まあ、すごい熱気というか、庶民が買い物、観光客が買い物でごった返しています。かなり安いものもあるのですが、どれがコピーかわかりませんので、買うのをためらいます。しかし、ここはかなり歴史が古く、市場にある新世界百貨店本店は、韓国が日本の統治下に合ったときには、三越百貨店(京城三越)だったそうです。

そこを通り抜けて、3人になってどこか近くに行くところがないかと地図を見たら、ソウル駅があることに気づきました。毎年ミュンヘンに行くと、ミュンヘン駅に行きます。韓国の駅はどのようだろうかと興味が湧きました。道に迷い、遠回りをしていると、向こうに歴史のある建物が見えてきました。きっとそこだろうと向かったのです。そこは、ソウル駅ではなく、博物館でした。しかし、案内板を読んでみると、旧ソウル駅だということがわかりました。もともとは、1900年7月8日に京仁鉄道合資会社の「南大門駅」として開業した駅でした。その外観は、何となく東京駅に似ていますが、その設計士については、色々な説があり、はっきりしていないそうです。しかし、このレン場造りの建物は、1923年1月1日に「京城駅」と改称され、1925年、赤レンガの駅舎が竣工したそうです。

現在のソウル駅は、この旧駅舎の並びに、ガラス貼りの近代的な建物になっています。2004年1月に新駅舎が完成しています。ミュンヘン駅と違って、このソウル駅は、終着駅ではなく、乗換駅です。この駅の特徴として、駅構内に、「ソウル駅都心空港ターミナル」があることです。ここは、仁川国際空港での搭乗手続きを帰国当日に、空港まで行かずともソウル市内で事前に済ませられるサービス施設です。

また、駅舎には、「ロッテマート」をはじめとして、様々なショッピングができる店が並び、2013年には、「ロッテアウトレット」もオープンしています。

ホームは1~12番まであり、1~8番までがKTX・鉄道用のホームで、9~12番が地下鉄路線だそうです。チケット売場は、正面入口を入ってすぐ左手にありました。この売り場は、1番はお年寄り・障害者優先窓口です。

ここを見た後、南大門に行ってみました。この名前は通称で、正式には、「崇礼門」と言い、1398年に城郭の正門として建立されたそうです。近くまでは無料で行けますので、よく見ることができます。花崗岩で造られた土台の上に木造の二重楼閣が建てられており、ソウルにある木造建築の中では韓国最古のものだそうです。しかし、2008年2月、放火により全焼してしまい、2013年4月まで復元工事が行なわれています。

そして、急いでホテルに戻り、夕食です。韓国一の繁華街である明洞のなかにある店に行きました。この店の売りは、焼き肉ですが、後日焼き肉は堪能するそうで、今回は違うものをそれぞれ注文しました。メニューを見ると、意外と安いものが多くあります。ちなみに、1000ウオンは、だいたい100円です。その中で、私は「カルビタン」を注文しました。タンとは、舌ではなく、湯と書いてスープのことです。