日本を襲った災害の中で、東日本大震災では、私たちに絆の大切さを教えてくれました。今回の新型コロナでは、絆を切ることを推奨しているかのように思えます。しかし、人類の進化の歴史を見ると、もし今後も、ホモ・サピエンスが地球上で生き残っていくとしたら、きっと新たなコミュニケーションの在り方、絆の在り方が提案されていかなければならないと思っています。そのヒントを得るために、学習科学・発達心理学の世界的権威であるキャシー・ハーシュ=パセック氏とロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ氏が書いた「科学が教える、子育て成功への道」(扶桑社2017/8/20)を読んでみました。そこには、「世界中でかつては想像もできなかった事件が頻発し、自然災害も我々の想定を大きく外れた凄絶なものとなっている。そんななか旧来型の〝エリート〟の非力さが浮き彫りに……。旧来型の知識偏重、学歴偏重のエリートが見限られている昨今」において、子どもたちにはどのような力が必要なのか、わが子を「成功」させ、「幸せ」な道を歩ませ、「超」一流の市民とさせるためには、どうすればよいのかということを、エビデンスを基に説いていきます。
ここで、彼らは、「成功」「幸せ」ということをこのように定義づけています。「健康で、思慮深く、思いやりがあり、他者と関わって生きる幸せな子どもを育て、皆が他者と協力し、創造的で、自分の能力を存分に発揮する責任感溢れる市民となる」こととしています。また、「『超』一流の市民」とは、無為の二流に甘んじることなく、一流というブランドに惑わされることなく、誰もが様々な分野で「『超』一流」となって輝くこととしています。
では、どうしたら良いのかということで、そのカギとなる能力として、六つのCの力=6Csを提唱しています。それは、
Collaboration:それぞれの強みを活かし弱みを補い合う
Communication:対話によって互いが満足するストーリーを作る
Content:専門領域について熟知し直感が働く
Critical Thinking:根拠に基づき熟慮して上手に疑う
Creative Innovation:変革について大きなビジョンを持つ
Confidence:熟慮した上で失敗にひるまず挑戦し続ける
この六つの力を見ると、その中の1,2は、他人との関係が示されています。私たち科学と言うと、実験室に一人閉じこもって、試験管を振ると言うイメージがあります。しかし、ここには、1ではお互いに「補い合う」という人類の進化における特性である、協力する、助け合う、ということが求められています。また、2では、対話を大切にしています。もちろんこの対話は、言葉によるものだけではないかもしれません。そこには、共感など、心の問題もあるかもしれません。ということから、私は、これからの時代における本当の新しい生活様式、教育の目指す方向を考える上でのヒントがあるのではないかと思っているのです。
この本の「はじめに」には、こう書かれてあります。この本の著者キャシー氏とロバート氏は、この本を通じて、「もしこうだったら……。」と想像して遊びたいと言っています。なぜなら、それが、子どもの学びの質と成功に大きく関係するからだと言うのです。