長期的経済メリット

おそらく、ワールドクラスの学校システムによる最も素晴らしい成果は、質の高い教育システム全体に行き渡り、生徒全員が優れた教育の恩恵を受けられることだとシュライヒャーは言います。教育の公平性を高めることは、社会的に公正であるのみならず、社会資源をより効率的に活用し、経済成長と社会的結束を促進する知識とスキルの提供を増やす方法でもあるのです。

2 015年初期、シュライヒャーは、スタンフォード大学上級研究員のエリック・ハヌシェック氏と、ドイツ経済研究所のルドガー・ウイスマン氏とともに、UNESCOの世界教育フォーラムの報告書を作成しました。フォーラムでは、持続可能な開発目標(SDGs)の一部として、世界共通の教育目標について議論しました。

ハヌシェック氏は、教育の質を上げることによる長期的な経済のメリットを算出する方法を考案しました。その方法は、先進国と開発途上国の双方に対して潜在的なメリットを示したものだそうです。また、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)は、様々な国や地域で教育の質を測定する方法を提供したのです。したがって、PISAとハヌシェック氏の方法を組み合わせることは、教育の向上による経済的影響を調査する優れた方法だったのです。

ハヌシェック氏とウイスマン氏の成果によって最初に示されたのは、学校教育の質は、国や地域が長期的に生みだす富に関して、信頼のおける予測因子であることでした。

学校システムの質を損ねることなく、皆が学校教育を受ける権利を保障することは、特に多くの子どもたちが未だ学に通えない貧しい国や地域において経済的なメリットを生みだすのです。

しかし、教育の質の向上によって生じるさらなる大きな影響があると言います。生徒全員が基本的なスキルを身につけると、経済への直接的かつ長期的な恩恵が大いにあるのです。実際に、ハヌシェック氏とウイスマン氏は、15歳の生徒が2030年までにPISAの習熟度レベルにおいて最低でもレベル2を達成した場合、経済成長と持続可能な開発の恩恵は相当なものになることを示したのです。

ハヌシェック氏とウイスマン氏が調査した国や地域のうち、西アフリカのガーナの中等学校への進学率は最も低く(46% )、学校に通う15歳の生徒の習熟度レベルも最も低かったそうです。もしガーナで最低限の基本的な読解力と数学的リテラシーを習得できるように全ての子どもたちに教育を施すことができれば、今日生まれる子どもたちが生涯にわたって得られるメリットは、現在のGDPの38倍にもなるそうです。

低所得・中所得の国や地域では、現在のGDPの13倍のメリットになり、今後80年でGDPは平均で28%高くなるそうです。生徒の学習成果が全般的により高い中所得・高所得の国や地域では、GDPが平均で16%高くなるそうです。

この調査で明らかになったのは、教育の向上は貧しい国や地域だけでなく、豊かな国にとっても有益なことだということです。

長期的経済メリット” への6件のコメント

  1. 教育システムの質向上と、教育を受ける権利の保障があれば「貧しい国や地域において経済的なメリットを生みだす」ことができるのは大いに想像出来ますが、「豊かな国にとっても有益なこと」という点は、先進国でもまだまだ把握しきれていない印象があります。それこそ、2000年に受賞したジェームズ・ヘックマンの研究がありながらも、乳幼児教育への投資は、幼児教育の無償化くらいではないでしょうか。「教育の質の向上によって生じるさらなる大きな影響がある」ことを理解して、長期的な対策や支援システム構築のための組織作りを、現在おこなっていることを願います。コロナウイルスがもたらした社会の変容を、今一度味方にして大きな一歩を踏み出す必要があることを強く感じました。

  2. 「15歳の生徒が2030年までにPISAの習熟度レベルにおいて最低でもレベル2を達成した場合、経済成長と持続可能な開発の恩恵は相当なものになることを示したのです」や「この調査で明らかになったのは、教育の向上は貧しい国や地域だけでなく、豊かな国にとっても有益なことだということです」ということを知ると今後、教育にさらに投資し、取り組んでいかない理由などどこにもないように思えますが、まだまだ日本にそれだけの危機感があるかは疑問になってしまいます。今はなんとなく国際的にも成績がいいからという感じでそこまでの改革の必要性が高まっていないように思えますが、確実に先の未来において、そのような態度では世界的課題を乗り越えていくことはできなくなってしまうように思います

  3. 就学人口の増加及び教育の質の向上によって、低所得国のみならず中・高所得国もGDPを二桁以上の割合で伸ばすことができる。素晴らしい研究結果です。GDPが高まるということは社会流動性の割合も高くなることが予想されます。様々な可能性が地球規模で開花する、ということでしょう。また「教育の公平性を高めることは、社会的に公正であるのみならず、社会資源をより効率的に活用し、経済成長と社会的結束を促進する」のですから「教育の公平性を高めること」は教育行政の責務でしょうし、政治経済関連の分野が大いに後押しをしなければならないでしょう。「教育の質を上げることによる長期的な経済のメリット」が算出されています。日本の経済界がこのことに気づき、教育行政を通じて、「教育の質」の向上に支援してもらいたいものです。子どもたちの学びの「構造の質」に投資することはもとより、「プロセスの質」も高まるような投資に期待します。就学前及び初等中等高等教育の質の向上があってこそ、経済活動を豊かにする人々が育ちゆくことでしょう。

  4. 教育の質と機会均等を考えることで、保育における「適切な発達を保障する」という考えが、小学校以降においても通ずるようになっていくのかなと考えました。
    教育次第で、遺伝的な要素に関わらず、全ての子どもが一定のレベルに到達できるというのです。それは、その時々の段階において適切な発達を遂げられているかどうか、その為の環境が整っているかどうか次第であると言い切れるのでしょう。

    これは大変大きなことであります。持続可能性というのは、ある意味、努力を必要とせずとも続いていくこと、自然に循環していくことであるのかなと考えました。

  5. 日本でもなんらかの理由により、学校に通えなくなってしまった子というのがいると思いますが、そうした子どもに対しての支援というのはどんな風になっているのでしょうか。〝生徒全員が基本的なスキルを身につけると、経済への直接的かつ長期的な恩恵が大いにある〟ということが書かれてありましたが、そこで大切なのはできる子の支援ではなく、できない子への支援をいかにして行うのかということになってくるんだと思います。コロナの影響により、子どもたちの学びのツールは急速に変容しています。そのツールを目的を見失わないよう上手に使いこなしながら、できることがあるような気がしました。

  6.  教育経済学の源流が示されています。それは大きな潮流となり、今の乳幼児教育に大きな影響をもたらしています。私自身もその有効性を信じていますが、その一方で、教育の目的が経済成長や物質的な豊かさであるとすれば、十分ではないと思います。これ以上の経済の過熱や富の追及に地球環境は耐えられないと思うからです。知足のニューエリートが生まれる様な教育が求められます。経済を超える教育。お金を超える幸せ。消費を超える自然愛。所有欲を超える人類愛。今、目の前の子ども達に伝えたいことです。

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