教員のスキルアップ

上海では、全教員に5年以内に240時間の専門能力開発を取り組むことを要求しているそうです。中国において上海は例外ではないようです。シュライヒャーは中国でトップの教員養成機関である北京師範大学で客員教授を務めています。そこで講義をする際にはいつも、教員の専門性の高さや継続的な改善への努力、そして彼らが他国の教育実践に強い関心を持っていることに深い感銘を受けるそうです。

効果的な専門能力開発には、継続的な教育・実践・フィードバックが含まれており、フォローアップのための適切な時間が必要です。成功したプログラムは、現職教員が実際におこなっている授業に受講者を巻き込むものだとシュライヒャーは考えています。

しかし、鍵となるのは、現職教員の授業に参加する機会の多さだけではないと言います。キャリアの根底にある構造、すなわち他者とは異なる新しい知識やスキルが求められ、提供していく社会的組織の中で、教員どうしが一緒に働く時間とかかわります。成功したプログラムは、教員が専門知識や経験を共有できる学習コミュニティの形成を促すというのです。研究と実践のつながりを強化し、学校を学習する集団として発展させることで、教員全体で知識を累積していくことへの関心が高まっていくのだというのです。

シンガポール国立教育研究所のデヴィット・ハング氏は、教員の考え方を変えることが教育改革の最も重要なポイントだと考えました。彼は自らの挑戦を「知識の伝達から知識の共創」「教科書による抽象的な知識の習得から経験に基づく学習」「総括的評価から形成的評価」への移行であると語っています。これらの提案は、いいですね。まさに現在日本でも抱えている課題です。しかしこれは、失敗する恐怖を挑戦への意欲に変えていくことを必要とします。自己効力感が非常に高い教員、あるいは低い教員は学んだ新しいスキルをあまり使いません。しかし、自身の能力に中程度の自信を持つ教員は、最も新しいスキルを使う傾向があると言います。自己効力感は、組織のあり方にも関係しています。授業を見学したり、協同で専門能力開発に取り組んだり、協同で授業をおこなうほど、教員は自分のことを有能な教員であると考えているようです。このデータもとても興味深いですね。これはOECDが行ったTALIS 2013 Databaseによるものですが、さらにこのデータでは、教員としての役立ち感は、同僚との協同に関係することが示されています。私は教員を少し体験したことがありますが、日本の教員は、どうも「授業を見学したり、協同で専門能力開発に取り組んだり、協同で授業をおこなう」ということが苦手な人が多い気がします。それは、力のある人は、何も教員だけでなくビジネスにおいても、チームプレイよりもスタンドプレイをしたがる傾向にあるのかもしれません。しかし、これからの時代は、チーム力に価値がある時代だと思っています。特に一クラス一人担任という形式を持つ学校教育では、深い専門的な協同が必要だと思っているのです。

しかしながら、教員が生涯にわたって学び続ける方法はほとんど知られていないようです。ですからシュライヒャーはOECD国際教員指導環境調査(TALIS)を通して、教員に意見を述べようと思ったそうです。2009年の最初の調査結果で明らかになったことは、一般的に最も効果的だと考えられる専門能力開発に参加していると回答した教員がいかに少ないかであったそうです。続いて、2013年のTALISからは、教員による協同やインフォーマルな情報交換は頻繁にありますが、一方で教員の自己効力感に最も関係する授業見学や授業研究のような専門能力開発は、未だに少ないことが示されています。