教訓を引き出す

シュライヒャーは、では、PISAの結果のデータから何を、どのように学べばいいのか、その考察をどう具体的改革に反映させていけばいいのかを示唆しています。彼は、成功したシステムが何をしているかを知っても、成功していないシステムをどうすれば改善できるかがわかるわけではないと言います。それは、国際調査の限界の一つであり、異なる方法で分析する必要性を示していると言うのです。それはまた、PISAが参加国に何をすべきかを提案しない理由です。PISAの強みは、他の全ての人が取り組んでいることを各国に伝えることにあるのです。

それでもなお、国際調査の結果から教訓を引き出そうとするならば、政策立案者には推論が必要だと言います。教育の政策立案者は、ビジネスリーダーが会社を成功へと導くために学ぶのと同様に、国際比較から多くを学ぶことができると言います。他者からひらめきを得たり、学んだことを自身の状況に当てはめるなど、教育の政策立案者は、様々なベンチマークによって学びを得られると言います。例えば、ある国と別の国における教育の質、公平性、効率性の違いを分析したり、それらが国の教育システムの特徴にどのように関係しているかを考えることができると言うのです。

このような方法の鍵となる論文の一つは、1988年からアメリカの国立教育経済センター (National Center on the Economy)を率いてきたマーク・タッカー氏のものだと言います。2009年に彼とシュライヒャーは、一流の研究者を集め、PISAによって急速な改善が明らかになった教育システムからアメリカが何を学べるかを分析したそうです。この調査では、歴史家、政策立案者、経済学者、教育学者、一般市民、ジャーナリスト、実業家、教育者に様々なことを尋ねたそうです。タッカー氏の先導的な取り組みは、OECDのテーマ別および国別の政策レビューを様々な方法で補完する幅広い研究の基盤となったそうです。

高い成果を求める国々が進むべき道を検討する際には、その国の固有の歴史、価値観、強み、課題を考慮しなければなりません。しかし、タッカー氏のべンチマーク調査は、高い成果を生み出す全ての教育システムに共通する驚くべき持徴を明らかにしたのです。それが次のような項目です。

・私たちが最初に学んだことは、ワールドクラスの教育システムのリーダーは、目の前の報酬のために投資するよりも、教育を通して将来に投資するほうが価値があること、労働の対価よりもその価値を競うほうがよいことを人々に確信させていることである。

・教育を高く評価することは、方程式のほんの一部にすぎない。残りの部分は、全ての生徒が学ぶことができるという信念である。一部の国では、生徒は早い段階で、異なる進路に振り分けられる。これは、ワールドクラスになれるのは一握りの生徒だけだという考えを反映している。しかし、PISAは、そのような選抜が広範囲にわたる社会的不均衡につながることを示している。エストニア、カナダ、フィンランド、日本のような異なるシステムの国は、教員と保護者が全ての生徒が高い水準を達成できるように働きかけている。このような信念は、生徒や教員の行動に表れる。そして、このようなシステムは能力による人の分類から、人間の能力を育むように進化していく。