移民と投資

移民問題が起こる前から教育移民はありましたが、近年移民生徒への注目は高まっています。例えば、オランダに移住したアラブ系移民の生徒は、社会経済的な違いを考慮したうえでも、カタールに移住した同じ国の生徒よりも科学的リテラシーの成績は77点高いのです。これは2学年相当の違いです。彼らはまた、デンマークに移住した同様の生徒と比べても56点高いそうです。

中国で生まれて他国に移住する生徒は、行き先がどこであっても母国の生徒よりも成績が良いそうです。しかし、行き先がどこであるかは重要だとシュライヒャーは言います。オーストラリアでは、第一世代の移民がオーストラリア人の同級生とほぼ同じ502点を獲得しています。第二世代の移民はオーストラリアの同級生よりも2年以上早く592点を獲得したそうです。言い換えれば、社会的背景が生み出すコホート効果と言われている世代効果があるかぎり、これらの移民生徒は、生徒の社会経済的背景を考慮しても、移民背景がないオーストラリアの生徒よりもオーストラリアの学校システムの恩恵を受けているようです。

OECD加盟国では、移民の生徒と移民背景のない生徒の成績格差は2006年から2015年にかけて縮小しました。この変化は、ベルギー、イタリア、ポルトガル、スペイン、スイスで特に顕著だったそうです。

例えば、その期間にポルトガルでは移民背景がない生徒の科学的リテラシーの成績が25点向上したのに対し、移民の生徒は約2学年に相当する64点向上したそうです。イタリアの移民生徒は科学的リテラシーの成績が31点、スペインでは23点向上しましたが、両国で移民背景のない生徒の成績は一定だったそうです。どの国もこれらの改善が移民人口の動態変化とは関係していないとシュライヒャーは言うのです。例えば、イタリアとスペインの両方で、教育を受けた保護者を持つ移民生徒の割合は、2006年より2015年の方が約30%低くなっています。

これらの改善は、移民背景がある生徒の潜在能力を支援する政策と実践が相当に進んだことを示しているというのです。日本では、まだまだ移民問題は身近な問題ではありませんが、今後そのような問題が起きてくることが予想されますので、これらのデータを参考にして、早いうちにその対応乎考えておいた方がいいと思います。

次にシュライヒャーが紹介する仮定は「より多くのお金を使えば教育は成功するのか」ということについてデータから考察しています。

市民が生産的な生活を送るためには、各国は教育に投資する必要があります。しかし、より多くの資金を教育に投入したからといって、それだけで教育が改善されるわけではないようです。

6~15歳に一人当たり5万米ドル未満を投資する国々では、生徒一人当たりの投資額と学習成果の質に強い相関関係があることをPISAは示しているそうです。しかし、そのレベルを超える大半のOECD加盟国では、生徒一人当たりの投資額と生徒の学習成果の質には相関関係がないことがわかりました。

6~15歳までに生徒一人当たり4万7 0 0 0米ドルを費やしたハンガリーと、18万7 0 0 0米ドル以上を費やしているルクセンブルクは、購買力の差異を考慮しても15歳の生徒の成績は同程度です。言い換えれば、ルクセンブルクはハンガリーの4倍の投資額にもかかわらず成果がありません。

成功はどれたけの予算を投じたかではなく、その予算がどのように使われたかによるのだとシュライヒャーは言うのです。