大人の慣例

遊びと創造性の専門家サンドラ・ラスは「遊びこそ創造力の源泉で(中略)子どもは何もないところから何かを作る」と書いているそうです。子どもが遊ぶ時は何のルールにも縛られず、創造的な閃きに突き動かされています。レベル1の創造力の働きによって「経験・行動・事象の解釈が面白くて意義深いものになる」のです。それはまさに3歳の子がブロック遊びを楽しんでいる時に起きていることだとキャシーは言います。

レベル1の状態の子どもは知っていることが多くないので、これまでの慣例に制約されずに行動します。世の中がどのように動いているのかまだ学んでいる段階です。子どもが靴を履いて通学するのは当たり前のことと大人は思うかもしれません。しかし暑い時には子どもは靴を履かずに学校に行こうとすることがあります。大人にとって当然の規範であっても子どもにとっては当たり前でないことが沢山あるのです。ここで気をつけないといけないのは、子どもは世の中や大人の慣例に触れる前に色々なアイデアを試して自由に遊ぶことが重要だということだとキャシーは言います。これこそレッジョ・エミリアの教育から私達が学ばないといけない点だというのです。まずは自分なりに作り出し、試すことができる経験を積み重ねる余裕を私達は子どもに与えないといけないと言います。創造的で芸術的なマインドセットを育てるのはその後だというのです。

イギリス、シェフィールド大学のエレナ・ホイカとジェシカ・ブッチャーは子どもの創造性を発達させるか阻害するかは、両親の関わり方次第であるという研究を発表しているそうです。16か月から20か月までの子どもに対して、親がおもちゃの家鴨を帽子に見立てたり、ブロックを走る馬のように動かしたりするのを見せました。すると子どもは親がわざとふりをしたり、冗談を言ったりすることと、本当のことを言っていることとを区別することができたそうです。こういう遊びによって色々な可能性を想像していいのだということを自然に学び、より創造的に考える経験ができるのです。

「大人は子どもの遊びに火をつける存在にも創造的に表現する方法を邪魔する存在にもなり得る」。大家族の子どもの方が創造性を試そうとする傾向が強いというデータがあるそうですが、子どもの数が多く親の目が届きにくいために、遊びの中で自由に色々やってみるチャンスが多いからかもしれないと言います。「より創造的な子どもを育てるには子どもの独立を助け、色々やらせる方がよい」のです。

しかしレベル1から始めるのは子どもだけではありません。新しい物や考えを作る時は大人もとりあえず何かやってみるしかありません。新しいアイデアを思いついた時、流れに任せて自由に発展させずすぐに評価に走ってしまったり、形にしようとしたりすると創造のプロセスか閉じてしまうという研究結果があるそうです。例えば製品開発の場合、見かけは度外視してとにかく迅速にプロトタイプを作ることがよく行われるそうです。自動車産業ではあまりにも早くプロトタイプを作ると、人々の注意がプロトタイプの改良に向き、新製品を開発する上で対処すべき重要課題を置き去りにしてしまうと考えられているそうです。これは子どもの学びの場合も同様で、性急に現実化するのではなく、むしろ空想するプロセスを含んだアプローチにおいて一番よく学ぶことができることを、最近の研究は私達に教えてくれるとキャシーは言うのです。

大人の慣例” への6件のコメント

  1. 園にはおおぜいの子どもたちが集います。園児の数分、そこにはさまざま、いろいろな遊びが展開されていることでしょう。室内においても屋外においても。お散歩の途中でも。保育者の先生たちはそうした子どものたちの活動に日々触れています。子どもの世界はまさにワンダーワールドかも。かつて、自分もそうであった子ども期。いろいろなことをやっては、怒られたり叱られたり。私の相手をしてくれた叔父叔母は私のいたずら坊主ぶりを事ある度に話してくれます。いい加減大人になったと思っている自分にとってはいささか恥ずかしいものがあります。「子どもは世の中や大人の慣例に触れる前に色々なアイデアを試して自由に遊ぶことが重要」このことを私たち大人は肝に銘じておきたいですね。危険がなければすぐに介入せずに、子どもの様子を見守る。そして、介入しなければならない時をしっかり見計らい介入する。多くの場合は、子どもたちが負の状況に遭遇し助けを必要としてきた場合。あるいは、見るからに危ない、と判断された場合。それ以外は子どもの行為を信じて見守っていたいですね。

  2. 多くのグッとくる言葉の数々で、嬉しくなりました。「子どもは世の中や大人の慣例に触れる前に色々なアイデアを試して自由に遊ぶことが重要」ということや、「まずは自分なりに作り出し、試すことができる経験を積み重ねる余裕を私達は子どもに与えないといけない」ということ、そして何より
    「新しい物や考えを作る時は大人もとりあえず何かやってみるしかありません」という言葉にグッときました。新しい価値を創造する力がこれからの時代は重要であると言われています。そんな力を育てるために、何か新しいものを生み出せ!というのではなく、それが自然と思いつくような雰囲気作りも大切なのかもしれません。まずはやってみること、課題が見つかり、それを修正していくことでいいものができていくことがたくさんあります。失敗と言っていいのか分かりませんが、そんなことを積み重ねて、新しい何かを作り上げることだったり、豊かな発想が生まれるための肥やしになるのではないでしょうか。そのためにはいろいろなことを試していいんだよという雰囲気、関わりを保障してあげることが大切ですね。いろいろやっていく中で、生まれてくるものがほとんどだと思うと、その過程も大切にしなければいけませんね。これは、大人も一緒ですよね。

  3. このコロナ禍がもたらしたものの1つに、“大きな変革の機会”があるかと思います。みな経験したことのないことに対して成功例がないということは、逆に大きく行動できるということになるでしょうし、「まずやってみよう」への抵抗が少ないといったメリットがあるように感じています。また、それは子どもたちにも同じであるように、「自分なりに作り出し、試すことができる経験を積み重ねる」機会をこれまで以上に増やすことができる気がします。そして、「子どもの独立を助け」という言葉が心に残っています。独立や自立/自律、子ども自身でどのように生きていくのかをサポートするという、本来の目的をいつも忘れてしまいます。独立へのサポートとして、いろいろやらせられる環境の保障があることを再確認しました。

  4. 2歳児クラスでは、インタビューごっこが流行っています。「あーなたのおなまえっは?」とリズムに合わせて次々に、なんども聞いてきます。そこで、「ホンダケイスケてす」などとその都度替えながらサッカー選手の名前を言うと、子どもたちにとてもウケます。もちろん子どもたちはそれがサッカー選手の名前たとは知りません。けれども、冗談で私が本名ではないことを答えいることは理解しているようです。
    そして園庭でサッカーをしている時に、また選手たちの名前を声にしながら一緒に遊びます。すると、ある男の子も同じように「ホンダケイスケ!」と叫びながら、キックします。夕方部屋に戻り、iPadでホンダケイスケを調べて、見てみました。

    「冗談力」は創造力、ユーモア、遊び心、をいつも持っていたいです。

  5. 会議において行き詰まる場合、とりあえずいろんな考え事は抜きにして、たくさんの意見を出し合うことがあります。その場合の方法は〝自分なりに作り出し、試すことができる経験を積み重ねる〟ということの集団バージョンであるように思いました。自分たちなりにいろいろ試し、その中から一つの解を見つけていく方法の過程はレベルがより上がっていく方法なのではないかと読んでいて思います。大人であっても、むしろ大人だからこそ意識的に「やってみよう」と思うことは自分を突き動かし、周りもそれに同調して着き動いていくことができるのではないかと思いました。

  6. 「子どもは世の中や大人の慣例に触れる前に色々なアイデアを試して自由に遊ぶことが重要」だからこそ受け入れられるのであり、互いに尊重し合えるのかもわからないと思えてきます。小学校時代、廊下を走ってはいけない、というルールについて、先生に、どうして先生たちがつくったルールを守らなくてはいけないんだ、だったら先生たちは僕たちがつくったルールを守ってくれるのか、と問い詰めた友だちがいました。廊下を走ることは勿論危険なことかもわかりませんが、友人が言いたかったのは、その点についてだけではなかっただろうと思います。当時の僕らでももしかしたら遊びが足りていなかった部分もあるのかもわからないと思うと、今の子どもたちは、どのような毎日の中にあるのでしょうか。

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