芸術を通じて

神経科学者と心理学者が「学習、芸術、脳』というタイトルの報告書をまとめました。芸術を通じて学ぶことで、どんな社会経済階層の子どもであってもレベル3の思考能力を身につけることができると報告されているそうです。絵を描くこと、ダンス、音楽、演劇は子どもが情報を深く学ぶ能力を高めるのを助けます。子どもが移民として新しい国で生活してゆくことの大変さを深く理解するために、例えば私達の先祖が乗り越えてきた困難を劇にして演じてみます。自分の家を自ら建てなければならず、スーパーマーケットなどない状況で日々の食料を確保し、もちろん衣服も自分で作らなければなりません。こうしたことを全て実際にやってみて、子ども達は開拓者達の苦労を実感することができるでしょう。

様々な種類の芸術を活かして子ども達は色々なやり方を用い、広範囲にわたる知識をレベル3で学ぶ機会を得ます。STEM教育の重要性が昨今叫ばれていますが、現在ではここにArtのAが加わり、STEAMと呼ばれるようになりました。そもそも教育の必要性が高まったのは、アメリカの企業において先端技術の開発に携わる優秀な技術者が不足し、海外から人材を集めなければならなくなったからです。このままでは企業の技術開発のみならず、アメリカの経済発展の足枷になってしまうという危惧が背景にあるのです。1950年代にソ連がアメリカに先駆けて人類初の人工衛星スプートニクを打ち上げた時、アメリカの科学教育の見直しが強く叫ばれました。これと同様の状況が今起きているとキャシーは言うのです。しかしながらこの動きが、国語・社会・芸術系の授業を切り捨て、理系の授業を増やす流れを作り出していると危惧しています。フロリダ州のリック・スコット知事はリべラルアーツ教育や投資に見合わない学位に対する教育予算を削減する決定をしたそうです。しかしそれが何をもたらすだろかとキャシーは疑問を投げかけます。

キャシーは、学校の授業でたまたま語り部に出会った小学5年生の子ども達の話を紹介しています。子ども達は語り部の語る話に夢中になり、瞬きをするのを忘れるぐらい釘づけになりました。彼らの中で言語と歴史というコンテンツがとても魅力的な対象へと変貌したのです。子ども達は翌日、図書館に行き、学期全体でも借りないほどの量の本を借りてきました。芸術の力によって、子ども達は知識コンテンツを深く理解したいという気持ちが駆り立てられ、レベル3の学びにはまっていったのです。それだけではなくこの体験は実行機能スキルを高める練習にもなりました。5年生の子ども達は語り部の話に集中して物音一つ立てず、静かにじっと耳を傾けていたからです。

学習科学の知見として、どのような時に良い学びが起きるのかについて以前から知られている四つの条件があります。それは自ら率先して行い、没入して関与し、意味を見出し、社会的に関わり合うことです。とても皮肉に聞こえるかもしれないとことわって、キャシーらがツィッターで行っていることの中に全て含まれているではないかと言います。これらの条件が全て揃った時、クレイクやロックハートが言ったような深い学びがなされ、レベル1・2の段階を脱し、レベル3・4の学びが促進されるのです。