繋げて考える

アネット・カーミロフ=スミスは、5歳児と10歳児に「この世に存在しない家の絵を描いて!」と要求しました。ある五歳児は楽しそうに一生懸命課題に取り組みました。ただ彼女の描いた「これまで存在しない家」は窓の数が増えて、ドアをなくしたこと以外はこれまで描いた絵と殆ど同じでした。まだレベル2に留まった理解をしていたのです。一方、10歳児は三角形を組み合わせた新しい形の家を描きました。最上部の三角形にだけ窓がついていてドアはありませんが、テントの出入口のようになっているところがあります。5歳児が基本的には同じデサインで描き続けたのに対し、10歳児はこれまでにない新しい家のイメージを思い浮かべて絵にしていたのです。レベル3の状態でコンテンツを身につけていると柔軟に考えることができるのです。それは実際にはない物でも、心の中のイメージとして捉えることが可能になるからだとキャシー言うのです。

5歳児が存在しない家を描けなかったのは、これまで身につけた家の絵を描くという反応を抑えて、存在しない家を描くという新しい反応へ変えるために必要な脳の機能がまだ発達しておらず、実行機能のレベルが低かったからだと言うのです。何度も同じように繰り返してきた行動を必要に応じて抑制して、今までやったことのないことをどう行うか同時に考えることが、柔軟に思考するためにとても重要っだと言うのです。

ここで、キャシーは、実行機能についての最近の研究を紹介しています。

「心の中の情報に集中し必要なものを維持しながら作業を進めるには、余計な注意を引くものは取リ除き、刻々と変化する課題に備える必要かある。それは沢山の滑走路があり、沢山の飛行機が飛び交う空港で離発着をコントロールする管制官のようなものてある。人間の脳においてこのような航空管制と同じような働きをして、情報をコントロールするメカニズムを実行機能と呼ぶ。」

子どもの時、算数の時間に同じ問題を何度も間違えるという経験をしたことがあるでしょう。それは実行機能がまだ不十分でスイッチを切り替えられない状態だからだと言います。大人でもお喋りを止められなかったり、一週間前に起こった出来事に囚われて他のことを考えられなかったり、同じことの繰り返しから逃れられないことはあります。

実行機能は自己調節機能とも呼ばれ、学ぶために極めて重要な能力だと言います。先生の言うことに注意を払うことができず、いつもそわそわしていてじっと座っていられない子がいます。小鳥が近くの枝に止まったのを見つけると、ずっと窓の外を見続け、先生が読み聞かせするのを全然聞いていません。その一方で、自分が話したい時にすぐに口を挟み、他の友達が話すのを邪魔してしまいます。図工の授業が終わった後、先生が皆に片づけるように言った時も、彼女h自分が絵を描く時に使った道具をそのままにして、パズルのところへ行って遊び始めます。先生はパズルで遊ぶのをやめて、まず片づけるように伝えると、大声をあげて泣きだし、床に寝転がり、駄々をこねます。このような光景は、多くの幼稚園の先生、そして親達がしょっちゅう目にしているだろうとキャシーは言います。

なぜ実行機能スキルが重要かというと、就学前の子どもの自己調節能力が、読み書き能力や語彙の獲得、算数のスキルに関係しているからだとキャシーは言います。また幼稚園以降、学校でのより本格的な学び環境に入った時、実行機能が発達していればスムーズに適応できます。自己調節スキルに優れてい幼稚園児は小学校入学後、読解や算数の成績がいいというデータがあるそうです。自分自身の行動をどう調節したらよいかを教える方が知識コンテンツを教えることよリも重要なのだとキャシーは言うのです。