赤ちゃんからの科学

赤ちゃんは自分の周囲の複雑な世界を理解するために繰り返されるパターンを探し、規則性を発見する生まれつきの能力を持っています。例えばある人は微笑みと結びつけ、別の人は難しい顔つきと結びつけるというように、まず二つの事象を結びつけます。次にどのぐらいの頻度で生じるか計算します。こうしてある事象が起これば続いてどのようなことが起こるか予想できるようになります。ウィスコンシン大学のジェニー・サフランは、8か月の赤ちゃんが繰り返される事象のパターンを認識していることを明らかにしました。昼食の時、自分の名前が呼ばれると共に「ごはん」という言葉を耳にします。この後、高い椅子に座らされ、よだれかけをかけられ、暫く経つと目の前に食べ物が現れます。少なくとも日に三回、毎日これが繰り返されれば、一連の出来事を繋げて認識するようになります。だから9か月ぐらいになると、この流れをわざと崩して、例えばスプーンを口ではなくて耳に持っていこうとすると、「遊び」と分かり、興奮して喜ぶのです。

赤ちゃんは「模倣」によっても学びます。アンディ・メルツォフは、新生児が大人を真似して舌を突き出そうとすることを発見し、科学の世界に衝撃を与えました。赤ちゃんは極めて注意深く人々を観察し、他者から学ぶ準備をしていることがこの発見で解ったのです。赤ちゃんとこんなゲームをして遊んでみることをキャシーは提案します。「〇〇はどれぐらい大きいかな?」と言って、あなたの両腕を上げます。すると、それを見ている赤ちゃんもそれを真似します。これは中々難しいことなのです。なぜならあなたが自分の腕を上げた時赤ちゃんに見えることと赤ちゃん自身が自分の腕を上げる時に見えることは随分違うからです。それなのにあなたが腕を動かすことと赤ちゃんが自分自身の腕を動かすことをどうやって繋げるのでしょうか。実は赤ちゃんが他の人が腕を上げているのを見ている時、赤ちゃんの脳の中でミラーニューロンと呼ばれる細胞が活発に働いて、頭の中で自分の腕を上げていたのです。

二つの事象が同時に、あるいは連続して起こる頻度を計算しながら、これらの事象を結びつける「連合スキル」を活かして、赤ちゃんは単語を覚えていきます。例えばこんな具合です。赤ちゃんは自分の名前をものすごく頻繁に聞きます。「○○ちゃん、お腹空いた?」「○○ちゃん、ジュース飲む?」「○○ちゃん、かわいいねえ」などなど。他の単語が全く解らなくても「○○ちゃん」がいつも自分に向けられて言われるところから、それが自分の名前であることが解ってくるのです。同じように哺乳瓶を与えられる時、頻繁に「ボトル」という音のパターンか聞こえてくることに気づきます。すると「ボトル」という音と哺乳瓶が結びつきます。このようにして、赤ちゃんは自分で言葉の音を発音できるようになる前からいくつかの言葉の音と対象を結びつけることかできるのです。耳に入ってくる発話の中で、自分が「知っている」単語が沢山あればあるほど、知らない単語が際立って聞こえてきて、その単語を覚えやすくなるのです。つまり記憶に貯蔵していた音と対象の結びつきが、新しい言葉を覚えることを容易にするのです。

赤ちゃんは日常の生活の中の何気ない遊びをしている時に沢山のことを学びます。もしスプーンを投げたらスプーンはどうなる?上に動いて宙に舞う?それとも下の方向に動いて床に落ちる?赤ちゃんは色々なことを考え、ちょっとした「実験」をするのです。その赤ちゃんの姿はあたかも「ゆりかごの中の科学者」です。赤ちゃんの学びは、小さな波を寄せ集め、大きなうねりを作っていくようなものだと言うのです。生活の場で自ら活動して得た小さなコンテンツの波が集まり、赤ちゃんが幼稚園に行く年齢になる頃には、大波へと成長しているのです。