価値あること

キャシーらは、優れた教育実践を行っている他国の事例を紹介し、すでに未開の地の開拓を始めた先人の足跡を追っています。

世界では、21世紀を生き抜くために価値のあることを学ぶ教育へ動き始めています。たプルッキングス研究所が開催したグローバル教育サミットには、国際的に労働環境が変化する必要があると考えている人々が集まっていました。その席でノーベル賞を受賞したシカゴ大学の経済学者ジェームズ・ヘックマンは「落ちこばれ防止法(NCLB)は完全におかしい」とあからさまに批判したそうです。

「21世紀スキル育成のための協同事業」のステファン・ターニップシードは、私達が直面している深刻な問題を次のように説明したそうです。「2015年には、世界の人口は72億人で、そのうちの40%がインターネットで繋がっていて、ネット端末の数は250億個に上った。これらの人々がうまく繋がることができれば、生産性はとてつもなく向上する。2020年になると、人口は115億人に膨れあがり、そのうちの半数以上が500億個のネット端末で繁がり、通信するようになると予測されている。技術の変化するべースはアフリカもアメリカも変わりない。地球上のどこでも、ロポットが人のすることに指示を出すようになるだろう。よくデザインされたロポットが、私達以上に動き、素晴らしい成果を出すようになるので、それを超えられるのは、創造的で、他者とコラボレーションできる人だけだ。にもかかわらず、現状の教育システムは、個人が知識を蓄えて学力と成功を勝ちとることを想定している。これでは、将来直面する世界に私達は全く太刀打ちできない。」

この本が日本で出版されたのは、2017年です。彼が説明した2020年には、思いがけず新型コロナウイルスが世界に流行し、彼の予言を加速させた面と、その歩みを遅らせた感があります。世界とはいかなくても、日本ではなかなか進まなかったネットでつながることは加速させたかもしれません。一方、その活用の仕方は、学校と個人や、会社と個人が多く、世界がつながることはあまり見受けられません。また、他者とコラボレーションすることが、国、地域、個人を分断する対策によって、遅れた感があるような気がします。

実は、世界の国々では、こうした危うい兆候を察して、グローバル化した世界における経済的未来は21世紀型の教育にあると強く認識して、動き始めていたのです。多様な文化的背景を持ち、政治的なシステムも異なる国々が、21世紀を生き抜くために価値のあることを学ぶ教育を目指すという点では一致しているのです。その中で、シンガポール、フィンランド、カナダ、ウルグアイは、既に学生達の将来に大きなインパクトを与える教育を実現しつつあるそうです。元々、創造性を伸ばす教育に価値を置いていなかった国、例えば中国やシンガポールなどでも、イノベーションを起こし、新しい間題に立ち向かう能力を育てることこそ、多くの仕事をロボットに手渡した後、人間がするに値する仕事を獲得する唯一の道だと考え、改革を進めているというのです。

ウェンディ・コップの「ティーチ・フォー・オール」や、ニューヨーク科学アカデミーは、地球規模の教育改革を構想しているそうです。なぜなら、タイの子どももスロベニアの子どもも、つまり世界中のどの国の子どもも共通したスキルを必要としているからです。

価値あること” への6件のコメント

  1. ロボットを「超えられるのは、創造的で、他者とコラボレーションできる人だけ」という言葉が響き渡ります。なんの思考も必要としない作業や単純計算、知識の多さというジャンルではロボットにはかなわないように、人間特有の創造性や遊び心、他者との円滑で質の高いコミュニケーションスキルなど、その個体特有のスキルを伸ばすことによって、両者は共に補い合いながら生存していけることを改めて感じます。世界の国々が、どこに「価値」を置くのかが明確になってきました。それに対する日本の初動には考えるところはありますが、我々は、目の前の子どもたちの最善の利益となる環境を構築するという役割があります。現場から、より多くの実践と結果を発信していく使命すら感じています。

  2. グローバリズムを現実化させつつある大企業GAFAは米国発企業。その米国において政権を握っているのが、Make America Great Again!を公約に掲げナショナリズムの再来を遂げようとするトランプ米国大統領。グローバリゼーションのおかげで世界覇権の座から引きずり降ろされそうな国・米国の、この二律背反的傾向。米国シカゴ大学のヘックマン教授が『「落ちこばれ防止法(NCLB)は完全におかしい」とあからさまに批判した』とあります。NCLB自体には反対しないと思うのですが、それが法律となるとやはりそこには社会流動性を阻害する勢力が働き、そもそもが実現されるどころか歪められてヘックマン教授の批判対象になるのでしょう。悪法も法なり。同じアジアにあってその飛躍の目覚ましさを私が肌身をもって感じているのが中国上海とシンガポールです。その後者が「既に学生達の将来に大きなインパクトを与える教育を実現しつつある」国のひとつ。「イノベーションを起こし、新しい問題に立ち向かう能力を育てることこそ、多くの仕事をロボットに手渡した後、人間がするに値する仕事を獲得する唯一の道だと考え、改革を進めている」その国々。その国々の人たちの何人かが「見守る保育藤森メソッド」に注目している事実。この事実そしてその意味を私なりに考えていきたいと思っております。

  3. グローバル化とは、世界が一つになっていくようなそんなイメージを持っていました。あながち間違っていないかもと思えるのは、言語の壁を越えた時、もしかしたら文化的な違いはあれどそれを絶対に理解できない、理解し合えない、ということはなく、それもその筈で、皆同じ人間であることを改めて感じます。そこにある課題、教育における課題も実はとても似通っているのではないかということをこの度の内容から思った時、その気持ちはより増してきます。日本だけの問題でなく、世界的な問題であると思うと、日本という枠組みで考えるだけではもしかすると不十分で、それこそ人間進化や、世界の本質からという視点が必要になってくるように思えてきます。

  4. 世界に目を向けた時に、今までの教育をしていてはロボットに太刀打ちできないという考えが主流となりつつあることが理解できました。〝21世紀を生き抜くために価値のあることを学ぶ教育を目指すという点では一致している〟という言葉から、今日の世界の動向が読みとれます。世界がそのようになっていて、現場ではどうなっているのかというのは、やはり日本では、まだまだほど遠くにあるのではないかという見解をもってしまいます。世界は危機感をもっていて、現場はその危機感をどのように受け止めていくのか、どのようにその危機感を下ろしていくのか、現場にいる人間にできることが多くある気がします。

  5. 私たちにそのつもりはないのかもしれませんが、今でももうロボットが様々なことを支配しているといっても過言ではないのかもしれません。歩くルートも電車の乗り換えも、オススメのレストランまで私たちはインターネットを介してロボットがオススメするものを選んでいます。その中でどのようなものを取捨選択し自らに有益だと判断できるかどうかが今の世を生き抜く秘訣であり、それができている人が多くないのが事実にもかかわらず、更にロボットは進化を遂げようとしているというのだから恐ろしいことこの上ないですね。

  6. 未来のために今どのようにすべきかという観点がまだまだ足りないのが日本でもあるのかもしれません。教育もそのような観点を持って行われるべきものだと思います。どのような子どもたちに育てたいか、そのために乳幼児期では何が必要になるのか、どんな環境が必要になるのか、どんな力が大切なのかということが明確になっていないのはそのような先を見据えた教育がなされていないからかもしれません。しかし、藤森メソッドの中にはそれが明確に示してあります。そして、そのために何をすべきかということも示されています。そして、多くの園でそれが実践されています。だからこそ、シンガポール、中国といった国々が注目するというのも頷けます。この考え方は教育の本来あるべき姿そのものなのです。

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