コラボレーションする力を伸ばす

ビジネスにおいても、科学研究の道でも、どんな仕事に就くにせよ、成功するために身につける必要のある「ソフトスキル」としてこれから新たに求められるのは、コラボレーションする力」だとキャシーは考えています。アップル社やIBMといった企業でさえプログラミング等のスキルを持っている人は沢山いても、社会スキルを持つ人が少ないために苦慮しているといいます。

社会的なコントロール能力はコラボレーションの基礎となります。ある研究グループは、7歳の時の自己コントロール能力の差が40年後、失業しているかどうかと関連性があることを発見したそうです。自分の衝動や感情表現をコントロールできないと葛藤状態を引き起こし、コラボレーションすることができなくなります。こうした最新の知見は、有名な「マシュマロテスト」によって明らかにされたとキャシーは言います。4歳の時に行ったマシュマロテストにおいて、マシュマロを食べるのを我慢できた子は、大学進学適性試験であるSATのスコアにおいて200点以上も高かったのです。では、どのように子どもはコラボレーションすることを学ぶのでしょうか。そこで、キャシーらは、学習科学が明らかにした四つの段階に従って、コラボレーションする力を伸ばしてゆく道筋を次のように示しています。

まず、レベル1は、「自分自身が全て仕切る」です。赤ちゃんが泣き叫び、眠ろうとしません。こうなるとどうしてよいか解らず赤ちゃんの両親はあたふたしてしまいます。赤ちゃんはいつもこうではありません。とても機嫌よさそうに体を揺らし、猴を鳴らしながら両親と「会話」をしている時もあります。赤ちゃんは社会的ですが、自己調整の仕方をまだ知りません。赤ちゃんが自己調整できるように支援することは親の役割だとキャシーは言います。コラボレーションする力は日々の生活を通じて磨かれます。何かがうまくいかなくてイライラしてしまう時にそれを抑えることから自己調整は始まります。赤ちゃんが自己調整できるようになるのを促すために、親はなだめたり、「あれ、鳥さんが飛んでるよ」と言って気を逸らしたりします。このような経験を積み重ねて赤ちゃんは次第に自己調整できるようになってゆくのです。もし自己調整できるようにならないと、他人の言うことに耳を傾けず、自分勝手な言い分を言い放つだけの人間になってしまい、他者とコラボレーションできなくなります。

大人に求められるのは、子どもが人と関わり、一方的に物事を進めるのではなく、他の人と交代しながら学びを進めるチャンスを作ることだと言います。手に持っている三角形の板をうまくおもちゃにはめ込むことができずに困っている2歳の我が子を見たお父さんが、うまくはまるようにおもちゃの向きをひっくり返してあげまあす。あるいは夕食の場におもちゃを持っていくと言い張る子どもに、好きな歌を歌ってなだめたりします。こうして日常生活で当たり前に起こる人との関わりの中で、子どもが自己調整していくチャンスを親が作り、支援していきます。すると子どもは次第に成熟した行動がとれるようになっていきます。子どもがフラストレーションを乗り越え、他の選択もあること気づくチャンスを日々のちょっとした瞬間の中に作ることが自己調整の力を育て、コラボレーションする力を生み出すのです。

コラボレーションする力を伸ばす” への7件のコメント

  1. おそらく今回のブログから示されるだろう、コラボレーションの4段階。その1段階目は「自分自身が全て仕切る」。本当の意味で他者とコラボしていくためには、まず自分自身が何を考え、どのように行動しようとしているか、という自己自身が問題になりますね。そして人生においてその最たる存在が「赤ちゃん」。もしかすると、痴呆症が悪化したとされる大人の場合があるかもしれません。いや、赤ちゃん、痴呆症悪化の大人に限らず、いわゆるマウントをとる、という人達は結構この部類にはいるのかもしれません。いずれにせよ、この「自分自身が全て仕切る」という姿勢がないとコラボが成り立たないことがわかります。この「自分自身が全て仕切る」を自己肯定感とか自尊感情と言い換えて、さぁ、日本の若者たちにそれらの有り無し、を問うと、無い、と答える数が他の国々の若者たちに比較して多い。この事実をどう捉えたらよいのでしょうか。自己肯定感にしろ自尊感情にしろ、乳児より幼児、幼児より学童児、さらに青年たちへと進むにつれ、有りの割合が減少していく傾向が他国と比べて顕著な気がします。これも我が国の子どもたちを取り巻く環境(人モノ空間)の問題でしょう。現場の先生たちがこの不都合な真実に気づくためには何が必要なのでしょうか。

  2. 自分をコントロールする力が重要であると、以前から知っていたつもりでしたが、実際にどのような場面の時に、どのような対応をすれば良いのかと言った具体例はなかなか出てこないものですね。本文に書かれていた『赤ちゃんが自己調整できるようになるのを促すために、親はなだめたり、「あれ、鳥さんが飛んでるよ」と言って気を逸らしたりします。このような経験を積み重ねて赤ちゃんは次第に自己調整できるようになってゆく』というように、負の状態にどのようにするかが肝心であると同時に、気をそらしたり自己調整できるヒントを与えるとのことでした。また、少し発達が上になってくれば、自分で気をそらそうとしたり、自己調整の方法を実行するまでの時間を確保することも大事であり、それがコラボレーションをする上でもいきてくる印象です。

  3. 親に気を遣っている子どもがいると思います。もちろんある程度の気遣いは、親しき中にも礼儀ありの言葉通りなのかもわかりませんが、それは赤ちゃんにとってもそうなのかというと、どうやらそうではなさそうです。赤ちゃんは先ず、思い通りに生きることを通して、そしてそう過ごす自分に大人がどう関わるかを通して自己調整を磨いていく。とするならば、親の言いつけが多分に多い家庭や、気分次第で子育ての方法が変わってしまう親の元に育てば、そこで育つのは親への気遣いであり、そしてそれは自己調整力とは異なるものではないかと思えてきます。

  4. 自己をコントロールする力は大切である、ということは以前から知っていましたし、それを題材に研究発表したこともありましたが、その力が具体的にどのような場面で育まれていくのか、ということはなかなか上手く言い表すことができていなかったように思います。赤ちゃんはまずは思いのままに行動していくことで自分を調整しようとしていて、その行動に対する他人の反応をみて学んでいく、調整の仕方を知っていくようなイメージが文章から湧きました。ということは、赤ちゃんに大人ができる支援は反応することであるのだと思います。心から反応すること、そうすることで赤ちゃんは次の自己調整のステップへと導いていくことができるんですね。

  5. 三角のおもちゃがはまらなかった時の対応として大切なのは、代わりにはめてあげるわけではない、ということでしょうか。自己調整も頭蓋骨を開いて脳みその自己調整用のスイッチを親が押してあげられるわけではありませんから、親が手を貸しながらも、しっかりと自分でやった、自分で出来たと思うことがその先自己調整する力に繋がるのではないかと考えています。子どものいうことを全て聞くわけでも、親が全てやってあげるわけでもないというのは、頭で解っていてもなかなか難しいものではあるのでしょうが。

  6. お腹が空いたから泣く、眠いから泣く、赤ちゃんは様々な場面で泣きますが、その一瞬一瞬から子ども自身が調整力を学んでおり、まさに発達する上で意味のないことはなく、子ども主体なのだと思います。
    その成長を大人が過干渉になるのではなく、黒子のように援助する、応答的な関わりをすることで、子ども同士でコラボレーションすることを学んでいくのでしょうね。コロナ禍において、子どもの関係性の中で子どもが育つことを改めて伝えていきたいと思いました。

  7. 娘も少しずつ言葉が話せるようになり、さらに大人が話している言葉も理解できるようになり、少しずつ自分をコントロールしているなと思える場面が見られるようになりました。時には、こちらが言葉で説明すると納得したり、時にはとにかく気を逸らすという方法で落ち着かせたりというあの手この手という感じです。園の子どもたちも同じですね。発達によってそのアプローチに差はありますが、個人差によって言葉で伝えてみたり、気を逸らしてみたりですね。特に、0歳児、1歳児ではいかに大人が気を逸らすかということがポイントかもしれませんね。子どもが自分の気持ちをコントロールすることの支援をする必要があるという認識を持っていれば我々のアプローチにも変化が生まれそうですね。

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