男の不倫

ミラー氏は、初めに、ここ数年のニュースでもよく取り上げられますが、「男の政治家はなぜあらゆるものを失うリスクを冒してまで、不倫をするのか」ということについて説明しています。1998年1月21日水曜日の朝、全米に衝撃が走りました。その日、有力紙ワシントン・ポストは、クリントン大統領が24歳のホワイトハウスの見習いスタッフと不倫関係にあったことを報じたのです。アメリカばかりか、世界を騒がせたニュースとはいえ、その朝の時点では、これがどれだけ大ごとになるか、誰も予想していませんでした。その後まるまる1年、政治的なスキャンダルがアメリカ、そして世界の耳目を集め、ついにはその年の12月19日にクリントンが米下院で弾劾されることとなりました。選挙によって選ばれた大統領が弾劾訴追されたのはアメリカの歴史ではこれが初めてでした。

クリントンの不倫スキャンダルが世間を驚かせたときに、朝のコーヒーをすすりながら、テレビのニュースをみて、「やっぱりねえ」とつぶやいている女性がいました。ミシガン州在住のダーウィン派歴史学者、ローラ・L・ベツィグです。ベツィグは20年以上も歴史上の政治家や、政治的指導者の配偶行動と繁殖の成功について論文や著作を執筆してきました。欧米の歴史を通じて、権力をもつ男は法律上は一度に一人の妻しかもたず一夫一妻の結婚生活を営みながら、例外なしに愛人なり、女奴隷をもち一夫多妻の性行動をしてきたと、べツィグは指摘しています。

彼らの中には何百人、さらには何千人もの処女からなるハーレムをもった者たちもいるそうです。権力者たちは妻とは嫡出子をもうけ、他の相手とは非嫡出子をもうけたのです。遺伝子と包括的な適応度では、嫡出子と非嫡出子の区別はありません。嫡出子は父親の権力と地位を受け継ぎ、多くの場合は彼ら自身もハーレムをもちますが、有力な父親は非嫡出子にも投資をするというのです。

結果的に、高い地位にある有力な男たちは人類の歴史を通じて、大いに繁殖に成功し、嫡出子かどうかを問わず、多数の子孫()を残してきました。一方、ひなびた田舎に住む無数の貧しい男たちは配偶相手を得られず、子どもをつくれずに死んでいったのです。ミラー氏らは、先に説明した「血に飢えたムーレイ・イスマイル」は、記録にあるかぎり最も多くの子をもうけ、量的には際立った存在でしたが、質的にはピル・クリントンをはじめとする権力者たちとなんら変わらないとミラー氏は言うのです。

べツィグのダーウィン主義的な歴史観から言えば、98年のあの朝、アメリカと世界の多くの人々が思ったこと、つまり「よりにもよって世界一強大な権力をもつ男が、なぜ地位を失う危険を冒してまで、若い女との不倫に走るのか」という問いは、愚問であると言います。べツィグなら、「ちっとも不思議ではない」と答えるだろうとミラー氏は言います。

彼がこれまで述べたように、人間のあらゆる行動の根底には、繁殖の成功という動機づけがあるのです。繁殖の成功は、人間を含めすべての生物の存在目的です。人間の活動の多くは、直接的にせよ間接的にせよ、意図的にせよ、知らず知らずのうちにせよ、繁殖に成功するためになされると言います。政治家になることも例外ではありません。この観点からすれば、男たちは意識的にせよ無意識にせよ、多数の女に繁殖目的で近づくために政治的権力を手に入れようと奮闘するとミラー氏は言います。

男の不倫” への5件のコメント

  1. モニカナ何チャラ。アメリカ大統領も不倫するんだとあの頃思いました。その後、日本の政治家の何人かは不倫でマスゴミの餌食になりました。何はともあれ、かいしょうがなくてはできないことだと思います。一夫多妻制はお金がかかると予想されます。「歴史上の政治家や、政治的指導者の配偶行動と繁殖の成功」。金持ちは結局そういうことになるのでしょう。お金もちではない私には別世界の話ではあります。「高い地位にある有力な男たちは人類の歴史を通じて、大いに繁殖に成功」。我が国の天皇家のことを考えてしまいました。今上陛下の内親王様はわが子と同学年です。それはともかく、およそにお子様がいるとは思えません。このケースはどう説明されるのでしょう?「人間のあらゆる行動の根底には、繁殖の成功という動機づけ」が確かにあるとは思いますが、そしてその法則?に則って一児を設けましたが、果たしてどこまで当てはまるのか?こうした説論を意識するたび、性的マイノリティとされるLGBTの方々のことを考えてしまいます。「繁殖」という生物学的営み。利己的な遺伝子。様々に考えてしまいます。

  2. 男性の女性に対する思いの強さを改めて感じました。そう思うと自分で自分の気元をとる、それは男性の方が容易いと言えるのかもわかりません。それを行動に移すと大変なことが待っている現代では、そうするかどうかはよく考えて行った方がいいかもわかりませんが、沢山働いたり、勉強をしたり、その動機や目標は、あまり固く考えたり、あまり凄いことを考えたりしなくてもいいものなのかもわからないと思えてきます。

  3. 「男の政治家はなぜあらゆるものを失うリスクを冒してまで、不倫をするのか」。それは政治家に限ったことではないと思いますが、そこには「権力」が関連しているのでしょう。有限な子育て財源を投資できる人物は、一夫多妻の精神を抱く傾向があるようですね。稼ぐ男性は女性にとって「魅力」の1つですし、男性にとってそれが「繁殖目的」でもあり、よくできているなぁと素直に思ってしまいます。そして、欧米の歴史には「権力をもつ男は法律上は一度に一人の妻しかもたず一夫一妻の結婚生活を営みながら、例外なしに愛人なり、女奴隷をもち一夫多妻の性行動をしてきた」というべツィグの指摘もあり事実であるなら衝撃ですね。良いのか悪いのかは置いといて、私の知らない世界をまた知ることができました。

  4. 立場や権力に違いはあれど、なぜ、不倫をしてしまうのでしょうか。それの答えが「繁殖」にあるということになるのであれば、その力の凄まじいこと。アメリカ大統領であっても、その力からは逃れられないものなんですね。そして、その力は凄まじいが、社会はその力に負けることを許さない。なんか板挟みにあっているようですね。この問題は折り合いがつかない永遠のテーマとなりそうな気がします。

  5. 裕福な家庭ではいくら子をなしても育てるだけの余力があるからひたすらに量産、育成を重視し、逆に自分が育てられる範囲を越えて繁殖したり、繁殖しても育てられるキャパシティを越えてれば大切にすることはない、というのはなんだかしたたかというか現実的というか、非常に人の本能というのは面白いですね。もっと感情や精神論が出てくるものだと思っていましたが、今回の一連の内容で、人がここまで地球での勢力を伸ばしてきた理由がわかったような気がします。

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