出生性比

家族は親が子に投資する場―子どもが生まれ、血のつながった親、もしくは血がつながっていないが、実の子だと信じている親に育てられる場―と言えます。進化心理学は、この領域で驚くべき発見を成し遂げたと言います。親は子に意識的にさまざまな投資をしますが、一部の投資は無意識のうちになされているのです。

たとえば、親は男女を産み分けることで、息子なり娘により多く、もしくはより少なく投資をすることがあります。中絶などの手段を使わないかぎり、子の性別は意識的に選択できるものではありません。男の子が欲しい、あるいは女の子が欲しいと思っても、意識的に産み分けられるわけではないのです。それでも、進化心理学的に重要ないくつかの特徴によって、生まれてくる子どもの性を予測できることが実証されているそうです。ミラー氏は、まずそのあたりから話を始めていきます。

一般には男の子が生まれるか女の子が生まれるかはまったく偶然に決まると信じられています。この考えはほぼあたっていますが、正解ではないとミラー氏は言います。生まれてくる子どもの性別はおおむね偶然で決まりますが、わずかながら影響を与える要因があると言うのです。また、男の子と女の子が生まれる確率は同じで、新生児の半数は男の子、半数は女の子だと思われていますが、これもほぼ正しいものの、完全な正解ではないと言います。出生性比である新生児の男女比率は0・5122だそうです。言い換えれば、女児100人に対し、男児は105人生まれることになります。しかし、この割合は状況によって、家族によって多少変わってくると言います。では、子どもの性別に影響を及ばす要因とは何なのでしょうか。

ミラー氏は、出生性比の話をするにあたって、20世紀の最も偉大な進化生物学者の一人、ロバート・L・トリバースの研究を紹介しています。トリバースは1973年に数学者のダン・E・ウィラードと組んで、進化生物学の最も著名な原則の一つ、トリバース=ウィラード仮説を提唱しました。高い地位にある裕福な親は息子を多くつくり、地位の低い貧しい親は娘を多くつくるという説です。

一般的に子どもは親の富と社会的地位を受け継ぎます。裕福な家庭の息子は裕福になり、進化の歴史のほとんどを通じて、多くの妻や愛人をもつことができ、何十人、さらには何百人もの子どもをもうけてきました。彼らの姉妹は裕福ですが、それほど多くの子どもをもてません。したがって、裕福な親は娘よりも息子に“賭ける”ことになるというのです。

逆に貧しい息子たちは女から相手にされず、繁殖ゲームから完全に締め出されてしまいます。しかし、彼らの姉妹は、若くて美しければ、貧乏でも子どもを残せます。そのため、経済状況によって出生性比にバイアスがかかるような淘汰圧が働き、裕福なら男の子、貧しいなら女の子が多く生まれるようになるというのです。

さまざまなデータがこの仮説を支持しているそうです。アメリカの大統領、副大統領、閣僚の子どもは娘よりも息子が多いそうです。東アフリカの貧しい遊牧民ムコゴドの集団では、新生児も0歳から4 歳の年齢グループでも女の子のほうが多いそうです。17,18世紀のドイツの教会の教区記録から、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州レーツェンの裕福な地主は娘よりも息子を多くつくったことがわかっているそうです。

出生性比” への8件のコメント

  1. 進化心理学から、出生性比を読み解くことができるというのが有力なのですね。また、男女比も105対100%という数字がでているというのもすごいですね。身近のみを考えると決してそう思わなくても、地球全体を見てるとそのような傾向になるのですね。そして、経済的に豊かであることで男の子が生まれる確率を高めるというのは、母胎で何らかの作用が加わっていると考えてみましたが、富や社会的地位が子どもに継承されやすいというのであれば、1代で築かれたものではなく、祖先からの状態が肝心であるということなのでしょうね。

  2. 男女比を観た時、以前から、女性の方が男性より多いと思っていました。我が国の場合、太平洋戦争で男性が多く、その命を失いました。その結果なのであろうか、と思っていました。終戦後75年経過する今日、その比はそのままです。どうしてだろう?と思っていました。「女児100人に対し、男児は105人生まれることになります。」ますます疑問が深くなります。私の勘違いか。ある情報によると、我が国では1937年より女性のほうが男性より多くなったということです。それ以前は当然逆ということです。やはり戦争のせいか。それでも日本における人口比によると、54歳までを比較すると女性の方が男性よりも人口が多いとか。ミラー氏の見解はどうやら我が国にもあてはまりつつあるかな。息子か娘かは裕福な親か貧困な親かで決まる。何とも恐ろしい説です。息子娘が半々なら裕福と貧困の中間?

  3. あまりにも不思議な話という感じがしてにわかには信じ難いですが、研究の結果なのでしょう。人間の本能がそうさせるのだと思うと、裕福である、貧乏である、という自覚は人間の奥底にまで浸透しているということになりそうです。その事実なのか、思い込みなのか、が、生まれてくる子どもたちに圧をかけるようです。男の子も女の子もいる家庭もありますがどう捉えればいいのでしょう、にわかに信じ難いからか疑問が湧いてきてしまいます。

  4. 裕福であるのか、貧乏であるのかということで、自然と生まれてくる子どもの性別の比に差ががあるというのはとても不思議なことに感じます。人類の歴史で貧富の差が生まれたのは農耕がはじまったあたりからだということを勉強していますが、そのことが人間の中の何かが変わるのでしょうか。ホルモンなどでしょうか。人体の不思議ではないかと思います。
    ですが、書かれてある根拠には納得のいくところです。この研究がより深くなり、新たな結果が出るのが楽しみです。

  5. 女の子より男の子が生まれる確率の方が若干高いとは私の家庭環境ではあまり信じられませんが世間ではそうなんですね。私の家庭は裕福というには物足りない家庭だったのでそれも関係しているのでしょうか。逆に従兄弟の家庭は四人兄弟で全て男なのですが、小さいながら会社も経営する社長を父に持っていることから、今回のブログの内容はあながち見に覚えの無い話ではないということになるかもしれません。

  6. なんともおもいきった説というか、驚くような説でした。そのような淘汰が働いていると考えられるのですね。女家系、男家系なんて言われたりするので、多少、何か影響するものがあるのだろうなということはなんとなく感じていましたが、それがそのような淘汰と考えられるというのは改めて驚きました。もちろん、全てがそうではなく、むしろそうではないことも多いとは思うのですが、そう言われるとそうかなとも思ってきました。

  7. こういった統計から見えてくるのは面白いですね。女児に対して、男児のほうが出生性比に違いがあるというのは不思議であり、人の中でも、淘汰が起きているのですね、。「高い地位にある裕福な親は息子を多くつくり、地位の低い貧しい親は娘を多くつくる」というのは、これまでの生存戦略的に考えると非常に合理的です。しかし、世の中を大きく見るとそういった数字が出てくるのは面白いなと思うのですが、マクロに見ていると「本当にそうなの?」と感じるところも多々あるなというのが正直な印象です。人は何かに突き動かされて運命が動いているのか、自然の摂理というのは様々な想像をさせてくれます。

  8. 進化心理学からの出生性比をみると、ほんのわずかに男の子が産まれてくる確率があるのですね。そして、トリバース=ウィラード仮説は、確かにそうすることがもっとも効率的に遺伝子を残していくことにこうかがあるようにも感じました。そうしなければ、生きていけない、そうすることで自分にあった人を含めた環境、となるのでしょうね。可能性のみを考えれば、納得できるものが多くありました。

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