別の視点

私たち人類は、誕生以来ずいぶんと進化してきました。その進化は、文明を築き、社会を変化させてきました。以前のブログでも書きましたが、では、これから先、例えば100年後の世界はどうなっているのでしょうか?そう考えた時、100年後は、随分と先のように思えますが、逆に人類の歴史の中で考えると、ほんのわずかな先のようにも思えます。そこでは、何が変わって、何が変わらないのか、その分野によって、100年という時間の経過は、長くもあり、短くにもなるのでしょう。では、子育てという行為は、どうなのでしょうか。

かつて、子育てとか、親の愛とかは本能であるかのように言われてきました。それは、あらゆる動物にとってと同じように、人類にとっても、「母性本能」という言葉に代表されるように生まれつき、母性は備わっているものだと言われてきました。それが、最近では、本能ではなく、育てられていくものだと言われています。しかし、私たちは、もともと持っている「人間の本性」というものはあるようです。

では、人間の本性とは何なのでしょうか?いざ定義しようとすると厄介です。「人間の本性とは何か。その答えは複雑でもあり、驚くほど単純でもある。」と「進化心理学から考えるホモサピエンス」(パンローリング社)の中に書かれてあります。

この本は、人間の本性を扱うサイエンスです。本書では、二人の進化心理学者が、最新の研究の成果を用いてヒトの心理メカニズムを紐解いていきます。二人とは、アラン・S・ミラーとサトシ・カナザワです。彼らは、本書の中で、「私たちは(部分的には)進化によって形成された独自の性質をもつヒトという動物として行動している。この独自の性質が人間の本性である。」と定義しているのです。そして、これは二つのことを意味すると言います。一つは、私たちの考え、感情、行動は、生まれてからの経験や環境だけでなく、気の遠くなるような長い年月の間に私たちの祖先が遭遇した出来事によって形づくられているということ。人間の本性は、私たちの祖先の過去の体験の集積であり、それが現在の私たちの考えや感情、行動に影響を与えていると言うのです。二つ目は、人間の本性は普遍的なものであり、人類全体に共通するものもあれば、男または女に共通のものもありますが、私たちの考えや感情や行動はかなりの部分、すべての人間、あるいは、すべての男かすべての女に共通するということだと言うのです。

地球上にはさまざまな文化があっても、人々の悲喜こもごもは本質的には同じだと言うのです。人間の行動を決定するのは、生まれもった本性、それに各人の個人的な体験と育ってきた環境だと言うのです。いずれも、私たちの考え、感情、行動を大きく左右します。この本では体験と環境の影響はほとんど無視して、人間の本性を重点的に扱っています。これには理由があると言うのです。

体験と環境が人間の行動に大きな影響を及ぼすことは、誰もが認めていることです。少なくとも、生物学的・遺伝的要因のみで人間の行動が決定されると本気で主張する科学者はいません。100 %遺伝子に左右される遺伝病もわずかながらあるそうですし、目の色と血液型も100%遺伝子で決まります。このように完全に遺伝子で決まる特徴がごくわずかあるにしても、それらを例外として、100%遺伝子で決まるような人間の特徴なり行動はありませんし、まともな科学者であれば、あるとは言わないだろうとミラー氏らは言うのです。