最近の子ども

最近、小学校の現場の声として、衝動的な子どもや多動な子どもが昔と比べてずいぶん増えているという話を聞くことが度々あります。そのような子どもが多く、授業が成り立たないことも少なくないというのです。また、年配の方から、現代の子どもは忍耐力や自分をコントロールする力が足りないという話を聞くこともしばしばあります。本当に子どもの実行機能は昔と比べて低下しているのでしょうか。

衝動的な行動と関連する注意欠如・多動症や自閉症と診断される子どもの数は、過去に比べて間違いなく増えています。もっとも、昔はこれらの障害自体が一般に知られていなかったため、昔にも障害を持った子どもはいたが、診断を受けていなかったという可能性は大いにあります。

障害を持った子ども以外に、定型発達の子どもについてはどうでしょうか。ミネソタ大学カールソン博士らの研究では、アメリカの子どもでは、マシュマロテストの成績は50年前や30年前の子どもと比べて、現代の子どものほうが高いことを示しているそうです。日本ではどうでしょうか。信州大学の寺沢博士らは、1969年、1979年、1998年のデータを比較し、日本の子どもでは、1969年から1979年にかけて思考の実行機能にかかわる能力が、変化していると述べています。ただ、この報告は対象の子どもの数が少なく、一部の実行機能のみを扱っており、さらには、異なった時代の子どもを同じ条件で比較すること自体が難しいので、これらの研究から現代の子どもの実行機能が高いとか低いといった結論を出すのは時期尚早ではないかと森口氏はか考えています。

親の精神衛生、子どもの運動、睡眠時間やメディア視聴などの実行機能に影響を与える要因に関しては、過去よりも現代のほうが、分が悪いと考えられると言います。運動時間や睡眠時間も過去に比べると減っているのです。

一方で、子育てに関する科学的知識は過去に比べて増えていますし、経済格差が広がっていることを考えると、実行機能が過去よりも低下しているというよりは、二極化が進んでいると考えるほうが自然かもしれないと森口氏は考えています。実行機能が極めて高い子どもと、低い子どもが、過去に比べて増えているということだというのです。

子どもの実行機能が過去より低いかどうかは別として、実行機能に問題を抱えている子どもが一定数いるのは事実です。実行機能の問題が子どもの将来のリスク要因になるのなら、不利になってしまった子どもへの社会的な支援は極めて重要なことだと森口氏は言います。彼としては、この本を通じて、実行機能についての理解が広まることを切に願っているようです。実行機能がどのようなものであるかを知り、実行機能に問題を抱えている子どもに気づいてもらいたいと考えています。そのうえで、彼は、睡眠やメディア視聴などの要因を見直してもらったり、実行機能の鍛え方について紹介したときのような方法で支援をしたりしてほしいと願っています。国内では、まだまだ実行機能に注目した保育や支援をするような施設は多くはありませんが、少しずつ増えてはきているようです。彼は、さらに今後もこのような動きが広まることを切に願っていると言います。