2種類の実行機能

森口氏は、実行機能が子どもの将来にとって重要であるという研究を整理して、以下のようにまとめています。

・子ども期の実行機能は、大人になったときの経済状態や健康状態を予測する

・このことは、ニュージーランドやイギリスなどの長期縦断研究で示されている

・有名なマシュマロテストは疑問視されている

・わが国では、実行機能への関心は低い

次に森口氏は、具体的にどのようなテストで実行機能が測定されるか、子ども期にどのように発達するかを考察していきます。

彼は、マシュマロテストでは子どもの将来を十分に予測できないこと、それでも、自分をコントロールする力である実行機能は子どもの将来を予測できることを紹介しました。なぜ、マシュマロテストを使った研究と使わなかった研究で違いが出てきたのでしょうか。それは、マシュマロテストは実行機能を調べるための一つの方法ではあるものの、マシュマロテスト=実行機能」ではないからだと言います。つまり、マシュマロテストで調べられるのは実行機能のごく一部にすぎず、マシュマロテストでは測定できない実行機能も大事なのではないかというのです。森口氏は、なぜ、実行機能は子ども期に変化するのかという疑問を問いかけます。それは、子どもの脳の発達に答えがあるようだと言います。そこで、彼は、このような変化を引き起こす脳内の仕組みについて考察していきます。

実は、実行機能には2種類あるそうです。そこで彼は、実行機能の役割として機能する、会社組織における執行取締役を例に出しています。ひと口に執行取締役といっても、役割は一つではありません。ある執行取締役は投機的な業務を担い、別の執行取締役は堅い本業を担うこともあるでしよう。最終的な責任をとるのが社長であったとしても、全ての業務を社長一人で担うのではなく、それぞれの執行取締役が分担して業務にあたります。

これと同様に、実行機能にも、感情面を担う実行機能と、思考面を担う実行機能があると言います。それぞれ、「感情の実行機能」、「思考の実行機能」とします。

まず、感情の実行機能です。これは、本能的な欲求や感情をコントロールして、目標を達成する力です。たとえば、喉が渇いたときに水を、お腹が空いたときに食事を、買いたいものがあるときにお金を目にすると、私たちは今その瞬間に直ちに手に入れたくなります。その気持ちのままに直ちに手に入れてもいい場合もあれば、一時的に欲求をコントロールする必要がある場合もあります。

ダイエットをしている人には、体重を減らすという大きな目標があります。そのときに、食べ応えがあり、満足感を与えてくれるハンバーガ―を目にすると、それを食べたい気持ちになるでしょう。ですが、目標を達成するためには、その気持ちを抑えて、サラダを食べる選択をしなければなりません。他にも、既婚者が、円滑な結婚生活を送るという目的を達成するために、目の前にいる魅力的な人の誘惑に打ち勝つことも、感情の実行機能が必要な例だと森口氏は言うのです。この例を考えると、マシュマロテストは、感情の実行機能を測る方法の一部を測定しているにすぎないということがわかるのではないかと彼は言います。

2種類の実行機能” への7件のコメント

  1. 森口氏の「マシュマロテストでは測定できない実行機能も大事なのではないか」という視点が、新しい実行機能の存在を浮かび上がられてくれました。実行機能には2種類あることや、それぞれ役割が異なり、執行取締役的な側面があるというのは非常に分かりやすいですね。「本能的な欲求や感情をコントロールして、目標を達成する力」とあり、欲求に打ち勝つ力、感情を抑制して正しい方向に自分を導く力が、感情の実行機能によってもたらされている現象なのですね。世間一般で言われている「自分に甘い人」というのは、この感情の実行機能がうまく働かない人でもあるのでしょうか。確かに、個人的には「自分に甘い人」というのは、経済的にも健康的にもそうでない人より水準が低い印象がありますが、逆に幸福度は高い印象があります。いろいろ考えていくとほんと面白いですね。

  2. なるほど「実行機能」に二種類ある、と。曰く「感情面を担う実行機能と、思考面を担う実行機能」。エモーショナルコントロールの重要性を今まで考えてきました。誘惑に負けない自制心としてのエモーショナルコントロール。ところが、森口氏は「思考の実行機能」について言おうとしています。これはまた楽しみなことです。「本能的な欲求や感情をコントロールして、目標を達成する力」と「感情の実行機能」について定義しています。どうやら実行機能とは欲求や感情に流されることなく「目標を達成する」ということですから、目標あるいはそれに準ずるものがなければ、この実行機能が役に立たない。じゃあ、「思考の実行機能」とは?次回以降のブログが楽しみです。

  3. 「感情の実行機能」と「思考の実行機能」があるのですね。なるほど、この視点で考えるとマシュマロテストは感情の実行機能というのが分かります。そして、マシュマロテストは一部の実行機能を証明したに過ぎないということも、同時にわかりました。また、自分自身が推測した実行機能を後からつけることができるというのも違うのですね。どちらにしても、この実行機能が付くのはやはり子ども期においてであり、やはりこの時期における環境や脳の発達において、重要性があるというのですね。感情の実行機能は「本能」と「理性」に近い関係性のように思います。自分の衝動的な感情において、カウンターとなる感情であり、目標に向かって、実行機能を使うことで、適切な行動を起こすということであるのでしょう。そして、思考の実行機能ですね。これはどんなものかまだ全然想像もつかないのですが、これこそ、人間的と言いますか、人間社会に必要とされるものであるようにも感じます。

  4. 実行機能には二種類あるということなんですね。そして、「感情の実行機能」と言われるものが今まで自分が実行機能だと思っていたものであるような印象を受けました。ということは、もう一つの「思考の実行機能」はどんなものであるのか、というのが気になるところです。
    「感情の実行機能」は目標に向かって進むために感情をコントロールしていくものであるという理解をしました。ということは、目標がないと機能しないということになります。目標や夢のようなものがあることで長期的な展望もしようと思えるのだと思いました。

  5. 動物の世界でみられる感情を抑制する力と人が持っている実行機能の最大の差は強者が関与しているかどうかというところでしょうか。動物の群れのなかでは本能でいきる動物たちもリーダーを中心に生活し、下っ端ともなると残飯しか残らないような生活になるそうですが人間は痩せたい、相手の信頼を得たいといったような内発的な動機付けから実行機能を働かせているように思えます。つまり逆に言うと、先生が怖いからやらない、怒られるからやらない、といったような動機付けでは本来の実行機能は育たないということなのでしょうか。

  6. 「マシュマロテストでは測定できない実行機能も大事なのではないか」とあり、マシュマロテスト自体で測れると思っていたのですがそれは間違いなのですね。そして、その実行機能にも、「感情の実行機能」「思考の実行機能」があり、今回のブログでは感情の実行機能の紹介がありましたが、普段から私たちは様々な選択をしなくてはいけない中で、それが正しく働いているのか働いていないかもしれませんが、感情の実行機能を常に働かせているのでしょうね。

  7. 誠実さのような、実行機能が存分に発揮された姿は時に人の心を打ちます。そう思うと道を外れずに生きている、それだけで素晴らしいことであることがわかります。朝起きて、行きたくない会社へ出社する人、したくない仕事でもがんばってい人、本当に偉いことです。そうやって自分の偉さや凄さを認めてあげると人もまた同じようにそうであることがわかるようで、また一つ自分と他人との差が取れていくような気持ちになりました。

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