誘惑に勝つ

マシュマロテストでは、2歳児や3歳児はマシュマロを見て、その美味しさについて考えてしまうと、待っことができなくなります。どうしてもマシュマロの美味しさを考えてしまうため、なかなか誘惑に勝っことはできません。5~6歳児は、マシュマロの誘惑に負けないようにいろいろと工夫をするのです。最も簡単な方法は、マシュマロを見ないという方法です。魅力的なマシュマロから目をそらすことで、マシュマロのことを忘れようとするのです。このような簡単な方法でもかなり効果的ですが、よりレベルの高い方法を使う子どももいます。その一つが、想像力です。子どもは自分の想像力を働かせて、マシュマロの形は雲と似ているな、などと考えると待てる時間が長くなります。これは、マシュマロの美味しさから注意がそれるためです。子どもはその想像力を駆使して、空想上の友達を作り出すことすらあります。このことは、以前ブログでも取り上げた、森口氏著書の『おさなごころを科学する―進化する乳幼児観』に書かれてあります。

また、何か別の楽しいことを考えると、マシュマロテストで待つことのできる時間が長くなります。たとえば、マシュマロテストの後に大好きな電車を見に行くことになっている場合、電車のことを考えると、待てる時間は長くなります。5~6歳児は、誰に教えられることもなく、自分なりに待つ時間を長くする方法を編み出します。このような工夫を経て、幼児期に感情の実行機能は著しく発達すると言われています。

私は、もう一つ、待つことができる時間が長くなる方法を見つけました。それは、子ども同士、複数で待つときです。片方が食べようとするのを、もう片方が抑制しようとするのです。それは、約束を守るようにするというよりも、他児をけん制することで、自分に言い聞かせている気がします。特に、異年齢の子どもどうしで待つときの方が、より待つ時間が長くなるようです。それは、年長の子が年下の子に教えるように、諭すようにして待つことを教えます。それは、あたかも自分に言い聞かせて、納得させているようです。また、二人でじゃれ合ったり、ふざけ合うことで、気をそらすこともします。

2~3歳から5~6歳への変化はとても大きいと言われていますが、だからといって、5~6歳で発達が終わるわけではないと森口氏は言います。小学校の低学年と高学年では学校での落ち着き具合がだいぶ異なることからもわかるように、感情の実行機能は小学生の間にも成長が続きます。

たとえば、今日もらえる安いチョコレートと、明日以降にもらえる高価なチョコレートのどちらを子どもが選択するかを調べた研究があるそうです。この研究では、ミシェル博士らが以下のような選択肢を提示し、小学生がどちらを選ぶかを調べました。

・今日もらえる安いチョコレートvs 明日もらえる高級なチョコレート

・今日もらえる安いチョコレートvs 5日後もらえる高級なチョコレート

・今日もらえる安いチョコレートvs 1週間後にもらえる高級なチョコレート

・今日もらえる安いチョコレートvs 2週間後にもらえる高級なチョコレート

・今日もらえる安いチョコレートvs 4週間後にもらえる高級なチョコレート

森口氏は、明日、高級なチョコレートをもらうよりは、安くても今日チョコレートをもらうほうが嬉しいような気もするようですが、小学生はどちらを選んだのでしょうか。

誘惑に勝つ” への5件のコメント

  1. さまざまな仕方で誘惑に打ち勝つ。感情の実行機能を育むという行為は大人になってから経験するいろいろな誘惑から逃れる、回避する、関わらないということに繋がる気がします。最近また麻薬関連で有名な芸能人が逮捕されましたが、おそらくこの「感情の実行機能」がストレス等が原因で持ち込まれる誘惑を克服することができなかったからでしょう。そういった意味ではこの実行機能のキャパを増やしておかないと大人になってから犯罪に手を染めることになりかねないことがわかります。さて、この実行機能を高めるために、想像力を働かせたり、気をそらしたり、あるいは、藤森先生が自ら実験によって示している異年齢児間のやり取りやじゃれ合いがある、これらのことから推察するに、子どもたちがいわゆる待っている間に行っていることはこの実行機能を育んでいるんだということになるのでしょうか。そうだとすると、待っている間に、大人の私たちの目から見ると、ふざけたことをしているとか、遊んでいるとか、という子どもたちの行為にも実は実行機能絡みの意味があるのだということなのでしょう。また一つ学びました。

  2. 5,6歳児の実行機能に必要な想像力ですが、「誰に教えられることもなく、自分なりに待つ時間を長くする方法を編み出します」とあり、他者に言われてそうするのではなく、自ら生み出す必要があるとのことです。つまり、普段、日常の自分の思考へのアプローチにかかっているようにも感じます。目の前の問題に対してどう処理するのか、想像力を駆り立てる遊びが日頃からできているのかなど、マシュマロという欲求に対する自制の工夫を生み出す力が、日常にこそあることは容易に想像できますね。そして、「感情の実行機能は小学生の間にも成長が続きます」というように、小学校教育の在り方も同時に影響を受けるということで、学習指導要領の改定による変革が、大いに期待される転換期であることも感じます。

  3. 発達に応じて、誘惑に負けないような手段を講じたり、想像力を駆使したりできるようになることや複数人の子ども同士で注意し合うことで自分を諭していたりと様々な工夫をすることで実行機能を使って、待つ時間を長くしているのですね。「誰に教えられることもなく、自分なりに待つ時間を長くする方法を編み出します。」という力を子どもは持っているということを大人は知っておかなければいけませんね。ずいぶん前にもコメントに書いたのですが、ある保育士が「我慢できるようになるには、我慢させなければいけない」と言っていたのを思い出します。しかし、その場で起きていたのは「ただじっと我慢させる」ということでした。そのため、「待たせ方も考えなければいけないのではないか」と話したのを思い出さしました。そこには自分なりの「損得」があるがあるように思います。その時間を長くしていくためには「得」になる経験も必要になってくるように思えるのです。今の時代、どうもネガティブに「損する」ことばかりに目が言っているのもどうかと思います。「できない子をどうにかする」ということだけではなく、「もっとできるようになる」ことを意識する必要もあるのかもしてません。

  4. 実行機能は自力で編み出すというようなことが書かれてありましたが、決して大人から「こうしなさい」どう教えられるものではないということが伝わってきます。最近のニュースを見ていると、大人になってからも実行機能を駆使しなければならない場面に遭遇している人たちが、その手を汚してしまうというような印象を受けるニュースがあります。思えば、他人を見ていて「こうしてみよう」と思ってしてみること、気にも留めない気の逸らし方などどれも自らが行なっていたように思います。巷で「人間力」と言われるものは、どれも自ら編みすものであるように感じました。

  5. 私も特段チョコが好きではないので、マシュマロやチョコが好きでないとまた違う結果になるのでしょうか。
    想像力を駆使し、気を逸らすというのは、クールシステムに似てますね。
    赤ちゃんはすでにアクセルを持って生まれ、社会の中で生きていくためにブレーキを身につけていかなくてはいけません。それは友達がいるからこそ、集団の中で、子ども同士で助け合えた方が待つ力が伸びるのでしょうね。

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