工夫

森口氏は、明日、高級なチョコレートをもらうよりは、安くても今日チョコレートをもらうほうが嬉しいような気もするようですが、小学生はどちらを選んだのでしょうか。面白い結果が得られています。小学校3年生までの子どもは、先に述べた二択を与えられた場合、どの二択であっても、今日もらえるチョコレートを選んだそうです。つまり、高価なチョコレートであっても、明日以降になるくらいなら、今日安いチョコレートをほしいというものです。一方、小学校4年生以降になると、高級なチョコレートを選んだそうです。ただし、小学校4〜6年生でも、4週間待たなければならない場合は、今日もらえる安いチョコレートを選ぶ子どももいたそうです。このように、小学生の間にも感情の実行機能は大きく成長するのです。

5〜6歳児も欲求をコントロールするためにいろいろと工夫をするのですが、小学生はより洗練された工夫をするようです。小学生がよく用いる工夫が、「もしなになにしたら、なにになる」という考え方です。たとえば、「もし私が今ベルを鳴らしたら安いチョコしか食べられないけど、もし私が欲求に耐えられれば高いチョコが食べられる」というように、学校教育を受けて、論理的な考え方ができるようになるというのです。

次に、もう一つの実行機能である思考の実行機能について森口氏は説明しています。感情の実行機能と異なり、思考の実行機能には欲求や衝動がかかわりません。こちらの実行機能の大事な働きは、ついつい無意識的にやってしまう行動、習慣、くせなどをコントロールすることです。

私たちは、一つ一つの行動を意識してやっているわけではありません。テープルの上にあるコップをとろうとするとき、どちらの手を伸ばすか、どのくらい手を伸ばすか、などをいちいち考えることはありません。右手のほうが近ければ、無意識的に右手でコップをとります。しかし、あるとき、右手を怪我していて、コップをつかめないとします。このような場合には、ついつい無意識的にやってしまいがちな右手を伸ばすという行動を抑えて、左手でコップをとる必要があります。このように無意識の行動を制御することに思考の実行機能がかかわっています。

ここでもう一つ例を挙げています。職場からの帰り道、いつもであれば、職場を出て右に曲がるとします。ところが、途中でケーキを買って帰るために、職場から出て左に曲がる必要があるとします。この場合、ぼんやりと職場から出てしまうと、右に曲がってしまうかもしれません。今日はケーキ屋に行くんだという目標を達成するために、右に曲がるという習慣となっている行動を抑え、左に曲がるという別の行動をする必要があるのです。このように、この思考の実行機能は、新しい状況や、いつもと違う状況などによって必要となってくると森口氏は言うのです。

二つの実行機能の違いは、感情の実行機能が欲求を抑える能力であるのに対して、思考の実行機能には欲求が関係せず、ついついしてしまう行動を抑える働きが重要であるという点なのです。

工夫” への6件のコメント

  1. 人は日常の多くを習慣によって無意識で行っていることを再確認できます。コップをとるときにもどちらの手でとるとか、ズボンに足を入れるのをどちらの脚から入れるかなど、確かに考えないですね。そのような無意識を制御しなくてはいけない状況というのは日常が変化したとき、何か新しいことをするとき、相手に合わせるときなどでしょうか。そのような状況下にいると自然と行動を制御することを覚えていくということなのかもしれません。小学生がよく用いる工夫に「もしなになにしたら、なにになる」ということがありました。これは、大人からの一方的なご褒美や躾のような促しではなく、あくまで本人の意志のもと用いられる工夫であることが大事であると理解していますが、「もし〇〇できたら、〇〇をあげる」と言われる経験も、それに当たるのでしょうかね。

  2. 今回のブログでは「思考の実行機能」について紹介されています。「無意識的にやってしまう行動、習慣、くせなどをコントロールすること」、これはそうした行動、習慣、くせなどを意識してコントロールするということでしょうから、感情の実行機能と合わせて私たちが気を付けていかなければならないことですね。特に、習慣やくせは、他者が関わる場面では余程気を付けなければならないと思っています。コップや道程に関しては、自分1人に関わる場合は習慣や癖でもいいと思います。ところが、相手がある場合はどうでしょう。自分の習慣や癖を相手に押し付けた場合はどうでしょう。相手が私の習慣や癖を受容する場合は問題がないのかもしれません。その逆は?往々にしてさまざまな問題を引き起こすことになるような気がします。感情の実行機能にしても思考の実行機能にしても人間関係の中で機能することには違いありません。共に普段から意識していかなければならない機能ですね。子どもたちや若者たちが気づいて培っていく機能です。保育、教育の中で私たちはこのことを環境を通して子どもたちの体験経験に落とし込んでいく、このことを意識化しなければならないと思ったところです。

  3. なるほど、先日の「損と得」と私が考えていた実行機能の内容は「思考の実行機能」のことになるのですね。感情の実行機能と思考の実行機能が分かってきました。そう考えると海外の研究における「Emotional Control」が1~2歳をピークに4~5歳で落ち着いていくのは、一番、そのころが感情による実行機能がピークで、そこから思考のコントロールに切り替わっていくからなのでしょうか。こういうことを知っていくとその年齢によって子どもとの言葉がけや関わり方も変わってきますね。1歳児に当然、見通しのある言葉がけをしても理解できないのは当然ですが、大人的な思考で子どもに理解してもらおうとすること自体出来ないのだということを考えてみると関わり方や見方も違ってくるように思います。そして、その時期に応じた関わり方をしていくことでより実行機能を得ていくことにつながるのだろうということが分かります。なによりも目の前にいる子どもたちに合わせて関わり方が重要になるのでしょうね。

  4. 思考の実行機能とは〝ついつい無意識的にやってしまう行動、習慣、くせなどをコントロールすること〟とありました。この実行機能、自分は得意な方ではないかもしれません。思い当たる節がたくさんあります。最近では、嫁に頼まれたものを買って帰るのを忘れて、いつも通りに帰り、帰ったのにすぐに買いに行く、ということがありました。「いつも通りにしない」というのは思いの外難しいものですよね。
    このような体験を通して子どもたちも学んでいくのでしょうか。大切なことは自らが気づいて成長させていくということになるのだと思いますが、自分のように失敗した時の対処も合わせて学んでいくことで、その人なりが出てくるのかもしれませんね。

  5. 園で生活をしていると行事などでいつもと違う順番やタイミングで子供に動いてもらうときがあります。もちろんその時には事前にゆっくりと分かりやすく説明するのですがそれでも間違えてしまうこというのもやはり一定数いて、「あぁ、この子は話を聞くことができない子なのか」と落胆してしまうことがありますが実は話を聞いていないのではなくただ実行機能が未発達で無意識のうちにやってしまっていたと考えるとこちらががっかりする必要も、必要以上に子供を責めることもなくなるのではないかと思いました。

  6. こう思うと小学校教育もこのような役立ち方をしているのだと、再発見のような気持ちです。そんな中でも実行機能が育ったり、天才が生まれたり、一つのフィルターとなっているのかもわからないと思うと、教育がこのままであることの善し悪しの善しの部分を感じられます。
    教育水準の高い国ではどのような雰囲気なのでしょう。それこそ日本の教育関係者が見たら驚くような方法で子どもたちが学んでいたりして、そういう衝撃を上の人たちや教育に関わる人たちが受けた上で今の教育を見つめ直すような機会がこれから訪れるだろうことを思うと、この業界の伸びしろの大きさを改めて感じます。

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