切り替え

行動や活動の切り替えが、思考の実行機能の重要な役割のようです。感情の実行機能がブレーキやアクセルであるのに対して、思考の実行機能はハンドルの役割だと森口氏は例えます。自動車では、ハンドルはある道から別の道に切り替えたり、ある車線から別の車線に切り替えたりするためにありますが、思考の実行機能はある行動から別の行動に切り替えたり、頭を切り替えたりするときに重要な役割を果たすというのです。

こんな思考の実行機能を調べる切り替えテストがあるそうです。このテストは、なんどかそのあとも出てくるそうなので、しっかりと理解する必要があると言います。このテストでは、子どもはあるルールのもとにゲームを行うのですが、途中でゲームのルールが変わります。その際に、子どもはルールの変化に応じて、頭を切り替えられるかを調べるものだそうです。

このテストでは、標的カードと分類カードを使います。標的カードと分類カードでは色と形の組み合わせが違います。子どもは、実験者の指示に従って、分類カードを標的カードのところに分けていきます。ここでは、まず、子どもは分類カードを同じ色の標的カードのところに分けるように指示されます。これは、色ルールといいます。この場合、「白い車」は「白い星」のほうへ、「黒い星」は「黒い車」のほうへカードを置かなければなりません。これを6回程度繰り返します。子どもは、この第1段階で正しくカードを分けることができたら、第2段階に進みます。第2段階では、子どもは第1段階とは異なり、分類カードを同じ形の標的カ―ドのところに分けるように指示されます。これが形ルールです。つまり、

参加者は「白い車」は「黒い車」のほうへ、「黒い星」は「白い星」のほうへ分けなければなりません。

このテストでは、同じ色のところにカードを置くというルールが、途中で、同じ形のところにカードを置くというルールに切り替わった際に、対応できるかどうかが調べられます。途中でルールが変わるため、古いルールを忘れて、頭を切り替えて、新しいルールに従わないとなりません。このテスト自体は子ども向けなので大人にとっては難しくありませんが、ルールを複雑にすると、大人でもルールを切り替えることが難しくなります。

思考の実行機能も、感情の実行機能と同じ時期に発達するそうです。国内外の多くの研究から、切り替えテストでは、3歳頃までは、ルールの切り替えが極めて難しいことが報告されているそうです。たとえば、第1段階において、分類カードを色で分けるように指示されると、3歳の子どもでも正しくカードを分けることができます。つまり、ルールを理解すること、ルールに従って行動することはできるのです。ところが、色でカードを分けた後に、同じカードを形で分けるように指示されると、正しくできません。形でカードを分けるように指示されているにもかかわらず、色でカードを分けてしまうというのです。

つまり、最初に使ったルールを使い続けてしまい、新しいルールに切り替えることができないようなのです。4歳頃になると、少しずつ切り替えができるようになり、5歳頃になるとほぼ正しくルールを切り替えることができるようになります。ただし、5歳で発達が終わるわけではありません。これまでは、子どもは、第1段階では色ルール、第2段階では形ルール、というように、ある段階においては、色ルールと形ルールのどちらか一方を使えばよかったのです。ところが、少し難しくして、第3段階として、色ルールと形ルールの両方を使うようにしてみます。

切り替え” への4件のコメント

  1. 思考の実行機能は、車のハンドルのように、行動や頭を切り替えたりする役割があるとのことでした。コミュニケーションには、相手の急な車線変更にも付いていく柔軟性が必要だと思いますし、ある問題に対しても、これまでの思考分野から離れた視点からものをみることで解決する場合も少なくなく、異なる道を歩くという選択肢でも良いのだと臨機応変な対応というのが可能になる印象があります。それらは、その人の思考の実行機能の表れのようですね。そして、標的カードと分類カードの実験は、同類のもの(色や形)を結びつけたりなどの仲間探しが基本にありますし、乳児期からでも絵本「おんなじおんなじ」のようなアプローチの大切さを感じました。

  2. ブレーキ.・アクセルとハンドル、感情の実行機能と思考の実行機能の比喩、わかりやすいですね。「切り替え」ということは思考において必須です。物事を理解したり判断したりする際、どの面あるいはどの方向から見るかということで見えてくる面や方向が当然ながら異なりますね。その際に使用される脳機能が思考の実行機能ということなのでしょう。つまり、思考の実行機能が発達しているということは、さまざまに考えられるということでしょう。「頭の切り替え」は確かに重要ですね。切り替えられないと刷り込みを強くしてしまいます。考えが偏ってしまいます。自分にブレーキをかけられない人はおそらく頭の切り替えもうまくいかないような気がします。結果として、病気になったり、最悪の場合、犯罪に手を染めたり、ということになるのかもしれません。さて、実験の色ルールと形ルール。思考の柔軟性が求められますね。発達は脳の柔軟性に関連するのですね。

  3. 実行機能の例えとして、車のハンドルであるということでしたが、人同士のコミュニケーションでは、急な話の転換にもついていかないといけないことが多々あります。それはやはり、実践が一番の練習ということになるのでしょうか。子ども集団ではそのような機会がたくさんあることと思います。車ではアクセル、ブレーキ、ハンドルどれがなくなっても車としては成り立ちません。そのように関わりあって一人の人間ができているのを感じました。

  4. 感情の実行機能がアクセルとブレーキであるのに対して思考の実行機能はハンドルの役割であるというのは分かりやすい喩えですね。車線変更するようなことは人生の中で多々あります。それは学びにおいても、人との関わりにおいても、「切り替える」ということが必要とされることは多くありますね。正確に切り替えていくには切り替える車線を理解することと、それがちょうどいいスピードで車線を変更できることが求められます。考えてみると、世代間ギャップや文化の違いへの理解、相手を思いやるといったところは、思考の実行機能に関わるところなのでしょうか。そして、その始まりが3歳頃から始まるとかんがえるとやはり2歳児クラスからこういったことが大きく影響していくのですね。その頃のアプローチにおいて、多様な関わりを経験していく中で、様ざまな見方を知っていくのだろうと思います。そのため、やはり子ども対大人といったように一本道の考え方だけを伝えるというのはかえって危険であるということが分かります。いかに自分で解決できるように考えることができるようにフォローすることが必要か、それが実行機能を得ることに大切になってくるのでしょうね。

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