コントロールする力の強さ、弱さ

自分をコントロールする力の評価のチェック項目の中で、最初の4つは自分をコントロールする力の強さを、後のチェック項目は、弱さを点数化しているそうです。

日本の大学生と学生以外の一般の方を対象に行ったテストでは、大学生の平均点は約36点、一般の方では約40点だったそうです。

このテストの何が大事なのかというと、こういったテストで調べられる自分をコントロールする力、すなわち、実行機能は、日常のさまざまな行動とかかわっているからだと森口氏は言うのです。そこで、彼は、実行機能が、日常のどのような行動とかかわっているかについて紹介しています。

まず、実行機能と仕事の関係について見ていきます。たとえば、顧客とトラブルがあったとき、同僚や上司・部下といざこざがあったときに、私たちには、ときには自分の気持ちを抑えることが必要です。問題の解決という目標のために、感情や欲求を抑えて、粘り強くやりとりをすることで、問題解決の糸口を探らなければなりません。

たとえば、管理職には実行機能が必要だと言います。シンガポール国立大学のヤム博士らの研究では、実行機能の低い上司は、顧客とのやりとりに疲れて自分を抑えきれずに部下を罵りやすかったり、仕事の付き合いで消耗しやすかったりして、うまく仕事を管理できないことが報告されているそうです。

もちろんこれは全体的な傾向です。実行機能は低そうだけど、仕事ができる人がいるかもしれません。そのような例はもちろん存在します。

ただ、ある二人の人が、他の能力にはあまり差がなくて、実行機能にだけ差がある場合に、実行機能が高い人のほうが仕事でいい成績を残しやすいということだというのです。

実際に、仕事の遂行には自分をコントロールする力が重要であるようです。一例としてアップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏を森口氏は挙げています。スティーブ・ジョブズ氏に詳しい人でしたら、笑ってしまうかもしれないと言います。なぜならば、彼は、自分をコントロールすることが苦手な人として有名だからです。

若い頃にはLSDなどの薬物に手を出し、大学を中退し、自分の娘をなかなか認知せず、起業してからも周囲との軋轢を厭わず自分の思ったことは何でも口に出し、口論になると人を憚ることなく激怒したり、泣き出したりしてしまったそうです。社内外の人材を評価する際には天才か愚か者のどちらかであり、製品も優れた作品以外はすべてゴミだと評価するのです。

マッキントッシュやiPod、iPhoneなどの製品だけではなく、『トイ・ストーリー』などの作品を生み出し、天才的なプレゼン能力を駆使することでカリスマ経営者としてある種の偶像になった彼ですが、その人格に対する評価はかんばしいものではありませんでした。

森口氏も、『トイ・ストーリー』を作ったピクサー社の共同創業者であるアルビーイ・スミス氏と話をしたことがあるそうですが、スティーブ・ジョブズの経営者としての能力は高く評価するものの、人柄については評価していなかったそうです。