性格と非認知能力

EL提携校の教員と管理者たちは、性格についての話をたくさんするそうです。「性格」は彼らにとって非認知能力と同義なのです。ELの考え方では、性格は講義や教師からの直接の指示によってつくられるのではなく、やりがいのある学習作業を粘り強くやりとげた経験によってつくられると考えられているのです。バーガーは、「子どもたちにもっと自信を持ちなさいとか、知的な胆力を持ちなさいと話すだけで“性格を教える”ことはできません。子どもどもたちが性格を学びとるには、サポートを受けながら、思いきってやってみることを継続的に強いられる必要があります。作業を親とともにこなしたり、グループで一緒に勉強をしたり、クラス全員のまえで話をしたり、完成したものを発表したり。このようなクラスへの参加を求められると、生徒たちは、最初は緊張したり、わめいたり、助けを求めたりする。しかしやがて自信がついて、自分でやるようになる。そういうチャンスが性格をつくりあげるのです」と言っています。

タフ氏は、これこそが、ELの提携校で起こっている変化のなかで最も意義深いイノベーションであるように思っていると言います。ストレスに満ちた子ども時代の影響に取り組もうとするとき、概して学校が頼る最初の、そして唯一の“道具箱”は「人間関係」だと言います。確かに、学校での深く親しい人間関係から生じる絆、帰属意識は必要なのですが、それだけでは足りないというのが決定的な見方だと言います。生徒が本心から学校に興味を持つためには、生徒はこう思う必要があると言います。「自分は重要な活動をしているのだ、深く、手ごわく、やりがいのある活動をしているのだ」と。

意義ある難題に出会い、乗りこえることは、学業への前向きなマインドセットであり、それは、カミーユ・ファリントンのいう、「私はこれを成功させることができる」「私の能力は努力によって伸びる」というようなマインドをつくるうえで決定的な要素だといいます。いや、それどころか、子どもたちの心のありようを、とりわけ貧困層の子どもたちのポジティブな心のありようを最も効果的に生みだす方法でもあるというのです。解決方法のわからない問題に出会い、苦労してそれに取り組み、たいていチームメイトに助けられたり、教師からのサポートを受けたりしながら、最後には答えを出す。そういう瞬間を経験するチャンスがあれば、しなやかな心について抽象的な、あるいは理論的な説明をする必要もないと言うのです。生徒たちはみずからの体験によって、自分の脳が努力や苦労を通じて育つことに確信を抱くようになるのだとタフ氏はいいます。

知的な課題に粘り強く取り組み、苦労しながらやりとげる経験は、生徒たちに深い影響を与えます。幼少期の温かいやりとりと同程度の深度で影響を与えるのです。そして「有能感」と「自律性」というふたつの感情を生みだします。デシとライアンが挙げた三つの内発的動機づけのうちの二つです。しかし多くの学校で、とくに貧困層の子どもたちを教える学校で、こうした経験から子どもたちを遠ざける指導がおこなわれているというのです。

2007年、バージニア大学のロバート・ピアンタは、アメリカの公立学校を広範囲に調査した結果をサイエンス誌に発表しました。ビアンタと研究チームは、アメリカじゅうの5年生のなかから737のクラスを対象とし、そこに1年生と3年生のクラスも何百か加え、学校で一日のうちに出される課題を観察したそうです。