殻から引き出す

ELの提携校が生徒の成績に大いにプラスの影響をもたらしていることは、独立機関による研究でも明らかです。マセマティカ政策研究所による2013年の研究では、ELが提携する都市部のミドル・スクール5校の生徒を、同等のほかの学校の生徒と比較したところ、三年間で数学では10カ月分、読解では7カ月分、提携校のほうが進んでいることがわかったそうです。また、ELの教育は低所得層の生徒たちに対してより大きなプラスの効果があることもわかったそうです。

バーガーはこれを意外には思わなかったと言います。EL型モデルが逆境に育った子どもたちに対し、なぜ効くのか、どのように効くのかははっきりわかっていたと言います。「情緒面が損なわれると、子どもはさまざまなやり方でそれを自分のアイデンティティに取りこんでしまいます。内にこもって自分を守ろうとする子どももいますし、タフガイの殻をまとって学校では態度を硬化させる子どももいます。いすれにせよ、そういう子どもたちはクラスで貢献することができなくなるのです。議論に参加することも、手を挙げることも、勉強に関心を示すこともできなくなる。情熱とか、反応とか、そういったものをすべて抑えこんでしまう。学校で思いきって何かをやってみることができないのです。思いきってやってみなければ、学ふことはできません」そういう行動には覚えがある、まさに自分が子どものときにやったことだから、とバーガーは言っています。バーガーは、自分の家で何が起こっているか、学校の人間にはいっさい知らせません。ふたつの世界を完全に切り離していたのです。学校に行きはしたし、勉強もやるにはやりましたが、ずっとうわの空だったのです。

「EL提携校の生徒たちは、私がしたような隠し事はできない」とバーガーは言っています。クルーが生徒たちを殻から引きだし、教室では、毎日のようにグループ討論や共同の課題があるため、クラスメートや教師とやりとりすることを強いられます。やがてそうしたやりとりが自然なことに感じられるようになります。タフ氏が昨春、アッパー・マンハッタンにあるELのべつの提携校である「ワシントンハイツELスクールを訪れたときには、どのクラスも、生徒全員の参加を要する複雑な議論や創造的な課題に取り組んでいました。7年生のあるクラスの社会科の授業では、生徒たちは四人ずつのグループに分かれ、グループごとにマジックベンで大きなポスターを書いていたそうです。生徒たちは連邦党と共和党に分かれて1790年代の憲法をめぐる議論をすることになっており、自分たちの党のピジョンを支持するスローガンでポスターを埋め尽くし、全体討論に備えていました。教師は机から机へと静かに歩きまわって質問やアドハイスをしましたが、大部分は生徒が自分たちで進めていました。これがアメリカの歴史を勉強しているミドル・スクールの生徒だとは。彼らが心から楽しんでいるように見えることに、タフ氏は感銘を受けたそうです。

彼らはニューヨーク市の公立学校のなかでも最貧困に分類される生徒たちです。ワシントンハイツELスクールでは100パーセントの生徒が、家族の収入が連邦の基準を下回るために昼食の曲助金を受けており、99パ―セントがラテン系かアフリカ系です。人口統計的に見れば、大都市のミドル・スクールやハイ・スクールのなかでは行動に問題のある落ちこぼれと見なされる層です。しかしこの日の社会科の授業では複雑な題材の学習に取り組んでおり、行動にもなんの問題もありませんでした。そしてそれは報奨によって動機づけされてるからでも、罰によって脅されているからでもなく、学校が、少なくともこの授業時間のあいだは、面白いからだったからです。