キレやすい

人間は実行機能をどのようにして身につけるのでしょうか?森口氏は、どう考えているのでしょうか?

森口氏は、人間はいつ頃から自分をコントロールできるのだろうかという疑問を高校生のときに持ったそうです。そのきっかけが、二つあると言っています。一つは、生物としての人間の特徴は何だろうと考えたときに、この能力が有力な候補なのではないかと思ったことです。人間に最も近い生物だとされるチンパンジーですら、自分をコントロールすることは得意ではありません。実行機能は、人間を特徴づける能力の一つではないかと思い、関心を持つようになったそうです。

また、森口氏は、人間はいつ頃この力を身につけるのだろうかと考えました。実行機能が人間の特徴であったとしても、生まれてきたばかりの赤ちゃんにこの能力が備わっているとは思えませんし、赤ちゃんどころか、若者ですらこの能力は十分に発達していないように思われたのです。

世紀末に、若者がキレやすいという社会問題がマスコミを賑わしました。1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件をはじめ、未成年者によるさまざまな凶悪犯罪が起き、当時未成年だった森口氏たちは、「キレる若者」というレッテルを貼られたのです。キレるということは、誘惑や困難に打ち勝つ力が足りないことを意味します。しかし森口氏は、実際のところは、マスコミが過剰に騒いだだけであり、直接の因果関係があるかどうかはわかりませんが、この問題から、自分をコントロールする力は、いつ頃、どのように成長するのだろうかという関心を持つようになったのだそうです。

彼は、大学生のときに発達心理学という学問に出会い、実行機能を研究テーマとして選びました。大学院生になってから本格的に研究を始めて、博士研究員から大学教員として働く現在に至るまで研究を続け、実行機能の成長過程を明らかにしてきたのです。そこで、彼は、その研究の一端を紹介しています。

まず、実行機能がどのようなものか、大人にとって身近な例を取り上げながら説明しています。次に、実行機能が子どもの将来を占ううえでどれだけ重要なのかについて詳細に解説しています。実行機能の重要性を理解してもらってから、人間がどのように実行機能を身につけていくのかを説明します。そして、幼稚園・保育園に通う時期から、小学校までの間に、実行機能が身につく様子と、その脳内メカニズムを説明しています。

その例として、マシュマロテストという実験があります。森口氏は、その例を、大人を対象に行うとして、こんな設定を示します。「あなたがとてもお腹を空かせたとき、または、とても喉が渇いたときに、そのご褒美が目の前に置かれたとします。たとえばご褒美がビールだったとしたら、今すぐにでも手を伸ばして、そのビールを飲みたくなります。ここで、あなたの意地悪な友人が、次のような選択肢を与えます。今すぐビールを飲むのであれば、小さなコップ1杯だけ。でも、もし荷物を運ぶのを手伝ってくれたら、ジョッキ1杯に増やしてあげる」ここでは、荷物を運ぶのにかかる時間は分だとします。

そのようなとき、皆さんは、どちらの選択をするでしようか。今すぐ喉を潤したいなら、目の前のコップ1杯のビールに手を出したほうがいいかもしれません。でも、コップ1杯だけでは満足できないだろうから、少しがまんして、ジョッキ1杯飲むほうが満足度は高いかもしれません。悩ましい選択です。

キレやすい” への9件のコメント

  1. まさに、自園の学童クラブにいわゆる「キレやすい子」がいます。その男児にはシングルマザーとお兄さんがいるようで、兄は警察沙汰の問題行動を起こしているようです。幼少期、家庭環境によるマルトリートメントを受けてしまった影響があるのか、周囲に自分の気持ちを受け止めてくれる大人がいなかったのかなど、その子の背景を理解しながらも、目の前のその子自体を承認しよう、得意なところを伸ばしてあげよう、あきらめない大人としてのモデルを示そう、コミュニケーションから感情をコントロールする力を育もうなどと、先生たちと一緒に話し合っています。まさに、今回の実行機能の獲得過程は、その子の支えとなるでしょうね。

  2. 他の動物と比べて大きく違うことは確かに実行機能があるかないかですね。
    「キレる若者」という言葉もありますが、キレる高齢者という言葉も聞いたこともあります。若者や高齢者だけではなく、私自身もキレてしまいそうなことはあり、それは紙一重なだけであり、誰にでも起こり得ることだと思います。しかし、そこで踏みとどまれることには何かしらの理由があると思うのですが、それは年齢や脳機能はどのように関係しているのでしょうか。

  3. ビールテストなら私は「荷物を運ぶのを手伝ってくれたら、ジョッキ1杯」ですね(笑)何だか欲深い。「少しがまんして、ジョッキ1杯飲むほうが満足度は高いかもしれません。」飲兵衛的回答。実行機能の効力は大人になったらどうなんでしょう?「キレル」大人は少なからず存在します。アルコールの力に任せてか何のかわかりませんが、アルコールを飲んでテーブルを叩きながらキレル大人を知っているので、私はキレル若者以上にキレル大人に面喰いますね。ミラーニューロン委縮によるキレル大人たち。極めてみっともありませんね。その大人の人たち、子どもの頃に実行機能を培ってこなかったのかと思います。「人間はいつ頃から自分をコントロールできるのだろうかという疑問を高校生のときに持ったそうです。」流石ですね、森口氏。ピュアなハートの持ち主なのですね。自分自身を振り返ってみても高校生時代は悩ましい時期でしたね。そして、その後様々な道行きを形成するきっかけ、種のようなものがあった時代でしたね。

  4. 私の時代で「キレる若者」と言われることが社会問題にもなっていました。すぐに気持ちが爆発するように「キレる」という子どもは確かに園の中でも必ずいます。面白いことに保育園でそういったキレる子どもで問題児だった子どもが小学校に進学したのちに親が驚くくらい落ち着いたことがあったのですが、当時その頃の担任と粘り強く話を聞いてあげようとか、気持ちを切り替えれるように話をしてあげようとかを話していたのを思い出します。こういった繰り替えしが、功を奏したのかは分かりませんが、私はここでいう実行機能に働きかけれたのではないかと思っています。その時に大人に求められるのは「大人こそ粘り強く子どもと関わる必要がある」ということでした。大切なのはその子どもだけではなく、周りを囲む大人こそ、寛容であり、余裕を持って子ども同士を関わらせたり、子どもと関わったりすることなのかもしれません。

  5. 「キレる」という言葉が世間を賑わせ、定着していったのがそのくらいの時期からになりますかね。そのキレた原因も一般的にはわけの分からないものであるというのが、恐怖を感じさせます。ですが、「キレる」というのは大人でもあることなのではないかと思いますが、どうなんでしょう。それ自体よりも、度が過ぎてしまうこと、その行動に至った経緯が理解しにくいことなどが問題なのではないかと思いました。実行機能は脳の中のブレーキ機能とでも言いましょうか、ストップをかけてくれるものでもあるのかもしれませんね。

  6. 有能論の考え方でいえば実行機能ももともと全ての人間が持っているなかで必要だと判断してつよく残していくかどうかということになるのかと思いますがどうなのでしょうか。たしかに今の二歳児クラスの子達でもマシュマロテストをした時3分の1くらいは待っていられると思います。園での生活はほぼ同じわけですから家での生活や環境を比較することができれば実行機能について詳しくわかるのでしょうか。

  7. 絶対に手伝います。あぁ、自分には実行機能が備わっているんだ、産んでくれたお母さん、育ててくれたお父さん、保育園の先生ありがとうと改めて思った所で、安心して目の前の子どもたちに実行機能が育っていく為の見守る保育 Fujimori Methodを今日も実践していけるのだと思うとワクワクしてきます。今日は成長展ですが、絵が天井から子どもたちの手の届く所へぶら下がっていたり、展示物が豊富にあったり、実は実行機能が備わっていなければ部屋中めちゃくちゃになりかねない環境です。保護者は展示物に夢中ですので、子どもたちは基本的に自分の力でそこにいる、といった時間も豊富です。ところがめちゃくちゃになったりはしません。むしろ今年は、昨年絵の下をくぐって遊ぶ子が数名いたとの反省を受けて、天井からの絵の位置を昨年より低く設定しています。手が届かないように高くするのでなく、低くするのです。この考え方が環境を通して保育する、ということのような気がします。

  8. 実行機能が人間特有のものではないかという考えはなるほどです。だとすると実行機能を探っていくことで、人類が大切にしなければいけないものが見えてきそうですね。「キレる若者」確かに、少し前によく聞いていたフレーズですね。世代、世代によって様々な言われ方をしますが、大まかにはそうかもしれませんが、みんながみんなそうではないので、なんだかピンとこないものもありますね。ビールの実験、残念ながら、ビールがそんなに好きではない私にとっては、ビールよりもスプライトであったり、マンゴージュースがいいかもしれません笑。

  9. 森口氏が高校の時から、自分をコントロールする力について興味を持ったということ自体、私が興味を持ちました笑
    確かに自分をコントロールするというのは、言うほどに簡単な能力では無いような気がします。幼ければ幼いほど、純粋なため、自分の気持ちや感情をすぐに発してしまう気がします。だからこそ気をそらす方法であったり、感情を暴力で解決するのではなく、話し合いで解決したりなど、方法を伝える事が大切だと思います。また、子ども同士のトラブルをあえて経験することで、そうした自分をコントロールしなければいけない場面に出くわすことで、それらを学ぶ貴重な機会でもあるような気がします。

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