保育園とストレス

一方、子育てストレスについて見てみると、母親が4大卒以上であれば0.04、高校を卒業していなければ0.07ですから、どちらも平均より強いストレスだと言えますが、数字自体は小さなものです。

では、母親の子どもへの介入効果について幸福度はどうでしょうか?データによると、母親が4大卒以上であれば0.13、高校を卒業していないならばマイナス0.18ということで、学歴が高いほうが幸福度も高くなっているようです。その差も、小さくはありません。子どもの発達だけでなく、母親のしつけの質や幸福度も、学歴間で大きな違いがあることが明らかになっているそうです。

こうして作られた子どもの発達や、しつけの質、母親のストレスと幸福度といった指標が、保育園通いをすることで、どう変化するのかを測るのが山口氏らの研究の目的です。真っ先に思いつくやり方は、保育園に通っている子どもと、通っていない子どもとの比較ですが、実はこのやり方では、保育園通いの効果を正しく測ることができないと考えます。

なぜかというと、保育園に通う前の段階で、両者は、発達状態や家庭環境がさまざまに異なっている可能性があるためだというのです。したがって、保育園に通っている子どものほうが、通っていない子どもより発達が進んでいたとしても、それが、もともとあった家庭環境の違いを反映したものなのか、保育園通いの効果なのか、区別がつかないというのです。

実際、保育園を利用している家庭の母親の学歴は、保育園を利用していない家庭と比べると高めです。逆に、父親の学歴を見ると、保育園を利用していない家庭のほうが高い傾向にあるそうです。このように環境が異なる可能性が高いため、単純に保育園の利用の有無だけに基づいて子どもを比べても、保育園通いの効果はわからないと考えます。

そこで、山口氏らは、保育園を利用する家庭と、利用していない家庭のさまざまな違いを統計学的に補正した上で、両者を比校することで、保育園利用の効果を測定しています。

まず、保育園通いが子どもの発達に及ぼす影響はどうでしょうか。データでは、保育園通いの効果を、母親の学歴別にみています。言語発達については、母親の学歴によらず、保育園通いによって0.6から0.7程度改善しています。これは偏差値換算で6から7ですから、大きな伸びです

では、多動性指標に対する効果はどうでしょうか。母親の学歴によらず、多動性が減少しますが、特に効果があったのは、母親が高校を卒業していない場合でした。

そして、攻撃性指標に対する効果では、母親が4大卒以上であれば、ほとんど効果はありませんが、母親が高校を卒業していないと、子どもの攻撃性がマイナス0.43と大きく減少しています。

保育園通いは、特定の家庭環境の子どもの多動性・攻撃性といった行動面を大きく改善させることが明らかになっています。