成功の鍵

知能に対する効果は、数年で消えてしまうのに、一体どうして大人になってからの社会生活に影響を及ぼしうるのでしょうか。ヘックマン教授らが詳しくデータを分析したところ、成功の鍵は、非認知能力、あるいは社会情緒的能力と呼ばれるものにあったようです。同じヘックマンの研究を見ても、その見る人によって取り上げ方が違うようです。また、非認知能力といっても、具体的にはどのようなものであるかも違っています。そういう意味で、山口氏の考察を知ることはとても参考になります。

彼は、具体的に効果があった能力を、周囲の人々との間で軋轢を生じさせる問題行動を減らせるようになったことが重要だったとしています。幼児教育が問題行動を減らしたことで、将来の暴力犯罪への関与や警察による逮捕、そして失業を大幅に減らすことにつながったようだというのです。

幼児教育の知能に対する効果が数年で消えたとしても、幼少期に社会情緒的能力を改善すると、その効果は長期にわたり持続したため、大人になってからの社会生活に好ましい影響が現れたと考えられと言います。まさに、三つ子の魂百まで、といったところではないかと山口氏はいうのです。

ここまての話だけても、ペリー就学前プロジェクトの成功ぶりがわかるのですが、ヘックマン教援はさらに踏み込んで、経済学者らしく「お金」にまつわる話もしていると言いますます。素請らしい成果を上げたこのプロジェクトは、その実施費用もかなりの金額に上ったそうです。はたして、このプロジェクトは、その費用に見合った成果を上げたと言えるの  かどうかを山口氏は述べています。

このプログラムが生み出した主な成果は、生涯労働所得の増加、犯罪の減少、社会福祉利用の減少などです。これらをすべて考慮した上で、プログラムの費用対効果を表す指標として、年あたりの収益率を計算すると、7.7パーセントに達したそうです。過去50年間の平均的な株式市場の実質収益率は5パーセントほどですから、ペリー就学前プロジェクトは、株式市場への投資をしのぐ、「優良投資プロジェクト」だったと言えるようです。

この分析でのもう一つの重要な発見は、こうした経済的利益の半分ほどは、犯異の減少に由来するものであることだと山口氏は言います。犯罪は社会にとってとても大きな費用を生み出します。ここには、犯罪被害を金銭評価したものはもちろんのこと、収監費用、司法・警察活動に関わる費用などが含まれています。

生涯所得の増加は、教育を受けた本人だけが受け取る利益ですが、犯罪の減少から得られる利益、あるいは費用の節約は、社会全体で薄く広く受け取っています。したがって幼児教育によって得をするのは、教育を受けた本人だけでなく、社会全体であることが明らかになったと言えます。

これは、幼児教育の費用を誰が負担すべきかという問いに対して、ひとつの手がかりを与えてくれるのではないかと山口氏は考えています。子ども自身が得をするのだから、その親が費用負担をすべきだという意見には筋が通っているようですが、それと同時に、社会全体が得をするのだから、社会全体がその費用を負担すべきだという議論が成り立ちます。

つまり、幼児教育には税金が投人されるべきだという意見には、一定の経済的根拠があると言うのです。

成功の鍵” への6件のコメント

  1. 乳幼児は立派に社会の一員であり、今を最も良く生きることを保障されている存在です。そして、よりよい未来をつくる存在です。ということが分かっていながら、お金をかけない。OECDの調査によると、就学前教育保育にかける日本政府のお金の額はOECDの平均より低く、GDP国内総生産に占める割合も平均以下です。政治家の皆さんはこの事実を知っているのでしょうか。さて、「幼児教育の知能に対する効果が数年で消えたとしても、幼少期に社会情緒的能力を改善すると、その効果は長期にわたり持続したため、大人になってからの社会生活に好ましい影響が現れた」このことを私は信じています。だから「三つ子の魂百まで」も本当だと思っています。「幼児教育には税金が投人されるべき」このことをもっともっと政治家たちに認識してもらわなければなりません。待機児解消問題ばかり考えていると結局育休3年間ということになってしまいます。そうではなく、おぎゃあと生まれ来たった子どもたちにとって何が必要なのか、このことを真剣に切実に、そして一生懸命考えていかなければならないと思うのです。

  2. ペリー就学前教育の最大の効果を、「周囲の人々との間で軋轢を生じさせる問題行動を減らせるようになったことが重要だった」という点で捉える山口氏、また、乳幼児教育に税金をかけるべきであるという科学的根拠を捉えながらも「社会全体が得をする」という、なんとも人を動かしやすい言葉をチョイスする山口氏。研究結果から情報を得るのは簡単でも、そこから社会が行動に移せるような言葉の魔術師的存在が必要なのかもしれないとも感じました。そして、日本が幼児教育を無償化した経緯が、今回の内容で腑に落ちる形で理解できました。

  3. 幼児教育を行ったことで〝周囲の人々との間で軋轢を生じさせる問題行動を減らせるようになったこと〟が最大の利点だったということでした。それが犯罪を減らし、失業を減らし、逮捕されるのを減らし、という反社会的な行動を自ら抑圧できる能力が最大の効果であったということなんですね。そして、そのことが結果的に社会全体が得をすることにつながるということで、先月からの保育の無償化の根拠の一つとなるものであることを感じました。

  4. 改めて乳幼児教育が社会にどういった恩恵をもたらすのかということが分かる内容ですね。「これからの社会を作る子どもたち」という言葉は様々なところで聞きますが、「では、具体的に?」となると、いまいちフワッとしたことがらしか出てきませんでした。しかし、乳幼児で具体的に結果として出てきたものやその結果としてどのように社会に影響するのか、経済に影響が起きるのかということを踏まえると、その意味が見えてきます。間違いなく、社会に貢献する仕事になるのですね。そして、社会が費用を負担すべきことがらであるということも同時に見えてきます。ただ、日本の今を見ていると、子どもに投資というよりは、待機児解消であったり、女性の社会進出とどこか目的が違っているところに税金が使われているようにも感じます。まだまだ、課題は多く、難しい問題なのでしょうが、「保育の質」に投資され、現場も「質」というものをしっかりと捉えたうえで、乳幼児教育ができるような社会にしてかなければいけませんね。

  5. 「周囲の人々との間で軋轢を生じさせる問題行動を減らせるようになったことが重要だった」幼少期に人間関係の機微を学んだならばそれは一生の宝となる、そう考えると見守る保育 Fujimori methodの中で育まれる子どもたちの未来はやはり明るいのではないかと想像します。日々のやりとり、関わり、当たり前のように過ごしている毎日がどれだけの財産となっているのか、保育者はそれに確信をもって保育をして差し支えないものなのかもわかりません。
    今日は目の前の小学校のイベントに呼ばれ、卒園した保護者の方と少しお話をする機会に恵まれましたが、せいがで育った子たちはすぐに友達を作るし、何でも物怖じしないで取り組んでいます、とのことでした。あの日々がきっと力になっているのでしょう。

  6. 周囲の人間との軋轢を起こさずにトラブルを乗り越える力がつくならこれ以上のことはありませんよね。人間関係をぎくしゃくさせながら無理やり力ずくでねじ伏せるのではなく、周囲の人間と折り合いをつけながら全員が納得する意見にまとめる力というのはこれからの社会に大きく求められる能力だと感じます。ただそれがトラブルを乗り越えていかなかで付くのではなく就学前教育でつくというのは面白いですね。

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