大規模調査

日本の保育所の配置基準では、0歳児に対しては、保育士1人あたり子どもは3人までと

定められていますが、この程度であれば間題はなさそうだと山口氏は考えています。というのも、日本での保育園通いは子どもの発達にプラスも影響こそあれ、マイナスの影響は見つけられなかったためであると言うのです。

幼児教育には常に費用の問題がありますから、現実的には、どこまでも質を高めるわけにはいかないのですが、家庭の保育環境と比べて、大きく劣らないように、一定の質を確保することが必要であることを、この研究は示していると言うのです。

日本の保育園に通うことは、子どもたちの発達にとってどんな影響があるのかを山口氏は考察しています。

この疑問に答えるべく、彼は共同研究者の協力のもと、厚生労働省が行った大規調査から得られたデータを分析し、子どもたちの言語発達や、多動性・攻撃性といった行動面の発達が保育園通いで、なぜ、どのように変化するのかを調べたそうです。

特に、彼はこの研究は日本についての研究ですから、特に日本人にとっては関心も高いだろうと考え、主要な結果についてかなり詳しく紹介しています。それは、彼自身の研究であるということもあるようです。

まずは、行われた調査の概要を紹介するとともに、どのように子どもの言語発達、多動性、攻撃性といった行動面の発達を測ったのか解説しています。また、子どもの発達のメカニズムを知る上で、家庭環境を理解することは欠かせないのですが、そうした点を理解するために、母親のしつけの質や、子育てストレス、幸福度といったものもデータから読み取っています。さらに彼が注目したのは、家庭環境によって子どもの発達や、母親の置かれた状況はどのように異なるのかという点だと言っています。

続いて、保育園通いが子どもの言語面と行動面にどのような影響を及ぼすのかを明らかに

しています。彼らの研究では、保育園通いが子どもの発達にプラスの影響があっただけでなく、母親にも好ましい影響があったことがわかったそうです。

その点について、もう少し詳しく彼らの研究を見ていきます。

彼らの分析は、厚生労働省が実施した大規模調査である「21世紀出生児縦断調査」から得られた、集計前の個票データを利用しています。この調査では、2001年、あるいま2010年に生まれた子どもたちの中から8万人ほどを、出生時から追跡し、子どもの発達状況から両親の就労状況、そして家庭環境などについて、詳しく質問しています。

彼は、調査を受けた人に対してこう言っています。「インターネットで検索すると、この調査に協力された親御さんの感想を読むことができ、面倒に思いながらも毎年アンケートに記入してくださる姿が垣間見れると言います。調査対象の方には粗品が届いていて、気にいっている方もそうでない方もいらっしゃるようですが、これは収率を上げるために必要な取り組みなのです。」

数々の調査を目にしてきた研究者の立場からすると、この「21世紀出生児縦断調査」の回収率は驚異的な高さで、初回時点で88パーセントとなっているそうです。近年はプライバシー意識の高まりにともなって、この手の調査の回収率はどんどん下がってきているため、20〜30パーセントの調査というのもザラだそうです。

大規模調査” への8件のコメント

  1. 以前、幼稚園の通わせている家庭よりも、保育園に通わせている家庭の方が子どもが多いという情報を耳にしました。「保育園通いが子どもの発達にプラスの影響があっただけでなく、母親にも好ましい影響があった」という部分にもつながる要素かなと思いました。そして、日本にも山口氏を含め共同研究者とともに、縦断的な研究が行われているということで、非常に嬉しくなりました。ヘックマンの研究が今もなお継続されているかはわかりませんが、私たちの世代で終わる研究だけでなく、次世代の研究者たちが引き継げるような縦断研究があっても面白いとも思いましたが、研究にはお金がかかるということでしたので悩ましいですね。

  2. 21世紀が始まってからの縦断研究、果たしてどんな結果が出るのやら、今から楽しみですね。家庭環境と保育園環境とで相当異なる可能性があるのは、子どもの数ですね。家庭では3人とか4人くらいの兄弟姉妹でしょう。ところが、たいていの保育園は少ないと言っても子どもたちは家庭の兄弟姉妹より人数が多いと思います。「三人寄れば文殊の知恵」ではありませんが、二人よりは三人、三人よりは五人、七人、・・・三十人から四十人くらいの子ども集団においては、関わる子ども一人ひとりの様々な力が他の子どもから引き出されることでしょう。しかも、時間帯で関わる子どもたちが微妙に異なることは、更なる可能性の現れが期待できるような気がします。そして、家庭と異なり保育園が子どもにとって豊かな育ちの場となる可能性があるのは、用意されているモノそして空間スペースですね。もっとも、常に人頼みの園は遊具もさほどなくガランドウな場合もありますが。ガランドウになると結局先生が子どもたちをコントロールし、結局は先生主導になる場合が多くなることでしょう。子どもたちは自己発揮の可能性を失ってしまいますね。人、モノ、空間の関わり、という観点から調査研究が進められるならばどうなのでしょう。

  3. 「保育園通いが子どもの発達にプラスの影響があっただけではなく、母親にも好ましい影響があったことが分かった」とあります。社会においても、保育園の必要性が見えてくるのですね。現在では幼稚園か保育園か現在ではこども園も含め、どこかには子どもが所属していることが多いですが、やはり子どもにとっては好ましい影響が出ているというのはホッと胸をなでおろします。また、日本でも大規模な追跡調査が行われているのですね。その結果が出てきた場合、日本ではどういった影響が出るのか、そして、それがどういった因果関係になるのかがわかると、また、改めて、「保育の質」というものが日本にとってはどういったところが求められるのかがわかってきます。「21世紀出生児縦断調査」がうまく結果が出てくれるのを願うばかりです。

  4. 〝保育園通いが子どもの発達にプラスの影響があっただけでなく、母親にも好ましい影響があった〟とありました。このことは単純に自分が保育園で働いていることが誰かのためになっていると考えることができるので、嬉しいことです。
    幼児教育というのは、今回のタイトルのような大規模な調査が必要で、しかも、長い期間の追跡調査がなければその効果がわからないところに、今までの育児書の間違いやおかしな解釈が生まれたことの原因の一つであるのでしょう。今研究されていることは今はわからないかもしれませんが、後につながるものであるところにその意義を感じました。

  5. 何とも興味深い研究です。どのような結果が待っているのか、それは私たちの保育を肯定してくれるものなのか、とても興味が湧きます。
    今、保育に不満がある、というわけではないのですが、配置基準について山口氏は肯定的な意見を述べられていることを受けて、配置基準とはそもそも何を基準とされているのだろうかと不勉強ながら気になりました。見守る保育 Fujimori methodだから可能な毎日なのではないかと思えてもきます。子ども一人当たりの面積であったりですとか、真に現場を知る人が決めたことであるのか、知りたい気持ちが湧いてきました。

  6. 回答率が下がったのは単にプライバシー意識が高まったからではない気がします。もちろんプライバシー意識は高まってますし、この情報社会では高めなければいけないことなのでそれが要因のひとつであることになんら異論はありません。しかしそれにあわせて、そのような情報への興味や共有する相手の減少による情報の価値が下がっていることもあると思います。母親同士の横のコミュニケーションが減っていることも要因のひとつにあげられると思いました。

  7. 「子どもの発達のメカニズムを知る上で、家庭環境を理解することは欠かせないのですが〜」とありました。藤森先生の話の中で、どの年齢においても愛着関係というものは必要になるということがあります。やはり、家庭という家族、両親との信頼関係が成り立っているからこそ、それを基盤にあらゆることに挑戦したり、人間関係を築くことができるということになるからこそ、家庭環境が重要ということなのでしょうか。ある意味では子どもが当然、持っている信頼関係なのですが、それがない子どもはきっと様々な影響がでてくるのかもしれませんね。しかし、それが保育士でも代替できるという話もあるので、どのような内容になるのかまた興味深いです。

  8. 保育園に通う意味と書かれていますが、従来は子どもを託児する場所としか捉えられていないでしょうし、現在もそう言う風に考えている人が多いかもしれません。ではなぜ、保育士が国家資格として扱われているのかと思うと、それだけ重要な職業ですし、子どもの発達を理解し、それを十分に育む役割だと思います。「21世紀出生児縦断調査」がどのような結果が出てくるのか本当に楽しみですが、やはり私たちが大切にしていることが、証明されることを願っています。

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