保育園の貢献

保育園通いは親にとっては、どのような効果があるのかということを山口氏はいくつか挙げていますが、その中の一つとして、こんなことも挙げています。子どもが保育園に通うことで、保育士さんのような家族以外の人の目に触れるようになります。子どもの体を見たり、話をしたりすることで、保育士さんは子どもが叩かれていることを知りえると言います。そこで、もし子どもが叩かれていることがわかれば、保育士さんは親に適切な指導をしたり、児童相談所と連携したりすることもでき、体罰や虐待の抑止力になるということも考えられるというのです。

母親のしつけの質の向上がデータに表れているのは、こうした経緯によるのではないかと山口氏は考えているのです。母親のしつけの質が良くなれば、子どもの精神状態が安定しますし、問題を暴力によって解決しようということもなくなります。その結果、子どもの多動性・攻撃性が減って、行動面が改善されたのではないかというのが、彼が考えていることだというのです。

ここまで説明した、子どもの行動面が改善される仕組みは、データ分析の結果と整合的ですが、まだまだ明らかになっていない部分も多く、さらなる研究が必要だと山口氏は言っています。

さらに彼は、「この研究一つをもって、日本の保育制度の評価を下せるわけではありませんが、保育園は、“家族の幸せ”に貢献しているかもしれないというのは、希望のある結果ではないでしょうか。」というのです。

山口氏は、今回の保育料の無償化よりも待機児童解消を急ぐべきだと主張しています。その理由をこう述べています。

「まずは保育所と保育士を増やすことから」と言います。2019年の10月から、幼児教育・保育の無償化が実施されました。子育て支援に、より予算を割くという点では、望ましい方向に政策が動いているとは言えますが、それが最も賢明なお金の使い方かといえば、必ずしもそうではないと山口氏は考えているようです。

やはり優先すべきは、待機児童解消ではないかというのです。ある家庭は低額で質の高い認可保育所を使える一方、別の家庭にはほとんど支援がないため、大きな不公平感を生み出していると言います。幼児教育の無償化は、保育所を増やすための十分な政策をともなっていませんから、認可保育所を使える家庭と使えない家庭の間での不公平感を一層高めるに過ぎないというのです。

待機児童解消を伴わない幼児教育の無償化を進めるよりは、所得の高い家庭にはより高い料金を課すなどしつつ、認可保育所の供給を増やすためにお金を使うべきではないかと言います。また、一部の自治体で進められているように、認可保育所以外の形態の保育サービスの充実も一定のニーズがあるはずだというのです。

待機児童の解消や、幼児教育の充実には大変なお金がかかります。しかし、その成果は犯罪の減少に見られるように、社会全体で薄く広く受け取られるため、その費用を税金で負担することは妥当だというのです。海外と日本での研究は、こうした考え方にはデータ上の根拠があることを示しているというのです。

保育園の貢献” への6件のコメント

  1. 育児をしている家庭における、保育園の貢献項目が多く書かれていました。その中でも「母親のしつけの質が良くなれば、子どもの精神状態が安定しますし、問題を暴力によって解決しようということもなくなります」という点が、ドイツのバイエルン州統一プログラム『バイエルン』のある視点と重なりました。ドイツ研修の際、『バイエルン』は保育士のためのものではなく、これは保護者も購入して愛読しているものですといった説明を受けた記憶があります。つまり、子どもは保育園における保育だけでなく、家庭における育児の際にも質の高い育児が行われているのだなぁと思ったのでした。山口氏の見解のように、保育園での試みなどが、母親の躾の質を高めることに貢献していることは子どもにとって非常に喜ばしいことですね。

  2. 私が勤める園の理念は「共生と貢献」です。山口氏は「保育園は、“家族の幸せ”に貢献しているかもしれない」と控えめながらこちらが嬉しくなることを言ってくれます。保育園が社会貢献の施設。保育園とは社会の中で共生と貢献を実現していく資源であることがよくわかります。何だか、がんばろうと思えてきます。昨今、保育園の不祥事がニュースになっています。まぁ、ニュースになるくらいレアなこと、とも解釈できます。2万5千園のほとんどの園ではそういうことはないわけです。それでも、そのレアケースをもって全体が捉えられてしまう向きもあります。本当に気を付けなければなりません。生まれてくる子ども全員が入れるほどの保育園キャパが必要ですね。3歳未満児の1号認定制度。この制度によって山口氏が懸念されている待機児は解消されかもしれませんね。そうすると虐待件数も目立って減少していくことでしょう。入園制度及び利用時間については柔軟な発想に基づいた制度設計が必要な気がします。

  3. 〝保育園は、“家族の幸せ”に貢献しているかもしれない〟とありましたね。そんな風に言って頂けると、保育園で働いている者として素直に嬉しく思います。こんな自分でも何かに貢献できている、と考えてもいいのではないか、と思えるからです。
    ですが、それと同時にしっかりと締めるところは締めていかないといけないな、と引き締まる思いでもあります。
    つい先日のことですが、母親の病気で入園してきた子どものお母さんが働きはじめたと聞きました。子どもの癒し効果がそんな風に回復させたのだ、と思っていましたが、「保育園に子どもを通わせた」というのも回復の一因でもあるかもしれないのですね。

  4. これまで保育園に通うことのメリットが多くあげられ、そのために待機児童の解消を急いているわけですが、やはり最近のニュースでもよく取り上げられるような質の低いと見られる保育園があるのも事実でやみくもに増やしたところでそういった園がふ増えるとおもうと素直に保育園を増やしていこうと思わなくなってしまう自分がいます。最近藤森先生が言われた中国での保育に関する四つの政策が日本で取り入れられれば変わるのでしょうか。

  5. 2030年には15%に、2050年には20%に消費税を段階的に引き上げていくような話もあるようですが、その使い道が保育へ、待機児童解消へと向かっていくのならば賛成です。ただ、今の日本がそれだけの大きな予算を上手に使えるかに関してはとても疑問の湧くところで、今の予算でもやれるところをしっかりと整備し直して、それからそういった議論へと発展させていくことが最善ではないかと考えます。同じ補助金の中で、同じ指針の中で取り組まれているはずなのに、これだけ保育にも違いがある、というのは思えば何とも不思議なことです。間違ったお金の使い道とならぬよう、今できる学びをそういった力のある方々と共に積み重ねていけたなら、と思います。

  6. 確かに保育園の場合、着替えなどを含めて、子どもの観察を家庭以外の人が行うことができる機会ともなり、結果として、虐待などの抑止力としての側面もあるのは間違いのないことだと思います。幼児教育・保育の無償化などはとてもいい傾向の政策が現在行われているなという一方で、その進め方にはまだまだ問題も多く、「待機児童解消を伴わない幼児教育の無償化を進めるよりは、所得の高い家庭にはより高い料金を課すなどしつつ、認可保育所の供給を増やすためにお金を使うべきではないかと言います。」という部分は確かにその通りだと思います。ただ、保育所も建てればいいというわけではなく、やはり「質」を考慮した上での政策が行われることが重要になってきます。そう思ってくるとそもそも「保育の質」とは何かといったところがしっかりと議論され、実践につながっていくことが求められますね。

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