保育の質の重要性

保育サービスの供給を増やす政策を進める上で気をつけなければならないのは、どのように高い質を保つのかということだと山口氏は言います。量を増やすことだけを目的として、保育の質を下げてしまうと、子どもの発達に悪影響が及びますし、事故などの深刻な事態にもつながりかねません。

これまでの世界中の研究が、保育の質の重要性を明らかにしています。保育サービスせん。の質が家庭の保育環境よりも悪ければ、イタリアのボローニャの例で見たとおり、子どもの発達にはマイナスです。ですから、保育サービスの供給量を増やすためには、規制緩和が必要であるという主張には一理ありますが、それによって保育の質が下がらないかという検討は必要だと山口氏は言うのです。

どうしても働きたいという強い希望を持つ母親も少なくありませんが、子どもの発達を犠牲にしてもいいと考えているわけではないはずだと言います。質を保ちながら、量を増やすことは簡単ではありませんが、これまでの幼児教育の研究結果に基づきつつ、規制のどの部分を緩められるのか、どの部分は緩めるべきではないのかといった検討が必要ではないかと指摘しています。

山口氏は、その著書“「家族の幸せ」の経済学”のサブタイトルには、「データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実」とあります。その中で、保育に関係する章である「育休の経済学」と「保育園の経済学」を紹介しました。実は、他の分野もデータによってその真実を考察しています。それは、思い込みや刷り込みが必ずしも真実ではないことがあることを訴えているのです。

育児に対して、多くの刷り込みや思い込みが多くあります。彼は、この本の「はじめに」に、こんな例を出しています。「帝王切開なんてダメ、あんなの本当のお産じゃない。落ち着きのない子に育ちますよ」「赤ちゃんには母乳が一番。お母さんの愛情を受けて育つから、頭もよくなるんだよ」「子どもが3歳になるまでは、お母さんがつきっきりで子育てしないとダメ。昔から、”三つ子の魂百まで″っていうでしょう」本当にこんなことがまことしやかにささやかれますね。山口氏は、このような刷り込みに翻弄される状況に疑問を呈しています。

「どのように出産を迎え、子育てをすればいいのか日々悩んでいるお母さん、お父さんの耳にはさまざまな意見やアドバイスが飛び込んできます。こうしたアドバイスをしてくれる人の多くは、相手のためになると思っていますし、ご自身や周囲の人がそれでうまくいったという確信もあります。たしかに、身近な人のエピソードや口コミには独特の説得力がありますが、これらを本当にあてにしてよいのでしょうか。」

しかし、はっきりと彼は断言しています。実は、近年の経済学の研究は、ここに挙げた3つの、アドバイスがすべて間違いであることを示しているそうです。

そのような多くの刷り込みに対して、山口氏は、経済学からの考察を試みようと、結婚、出産、子育てにまつわる事柄について、経済学をはじめとしたさまざまな科学的研究の成果をもとに、家族がより「幸せ」になるためのヒントを紹介しているのです。

保育の質の重要性” への6件のコメント

  1. 生まれてきた子が全員施設利用できるように計画的に施設を創ってきたら待機児解消という問題は生まれなかったのではないか、と思います。子どもが父母のもとにいることはもちろん大切なことですが、共同養育あるいはアロペアレンティングの重要性の観点から考えるなら、0歳児から利用可能な施設を予め造っておくことは必要なことだと思います。そして同時に質の高さを追求する。現在、待機児解消のために東京の区部ではまだまだ保育施設が建設されています。しかし、質の面は必ずしも保証されていないのではないかと思います。では、待機児解消問題がない地方の施設はどうか。質の高さは保証されているのか。されているところもあるでしょう。しかし、圧倒的多数は必ずしもそうではないような気がします。認可認証施設の構造的質の保証は監査で確保されるのでしょうが、プロセスの質や子ども自身の成長の質は果たしてどうか?疑問視せざるを得ないところが多いような気がします。

  2. 「保育サービスの質が家庭の保育環境よりも悪ければ、イタリアのボローニャの例で見たとおり、子どもの発達にはマイナスです」という指摘のように、日本の家庭保育環境は世界に比べてもイタリアのように比較的高い質である印象があります。そのような際には、施設の保育の質が低いという状況は避けたいと同時に重要性を感じました。そして、経済学からみた3つの育児神話の崩壊は大きなニュースですね。育児されている方への情報というのは慎重にならなくてはいけませんね。そのため、その時の最先端の情報をキャッチしているということは非常に強みです。このブログのおかげです。

  3. 帝王切開について書かれてありましたが、我が子は3人とも皆帝王切開です。ここに書かれてあることが事実であるのなら、我が家が大変なことになっていたことでしょう。そして、嫁のお母さんは長男の帝王切開での出産後、自分の娘が腹を切ってお産した、というのを自分のせいだと、自分の育て方のせいだと泣いていました。その時は親はそんな風に思うものなんだな、と思っていましたが、書かれてあるようなことがいわれとしてあるんですね。
    間違ったものには間違いだ、というための知識は必要だと思います。そのために最先端の研究結果を知っておくことは大切なことです。そして、自分が最先端を知り得ているのはことブログのおかげです。ありがとうございます。

  4. 物事には必ず表の面と裏の面があるようにどんなに実績のともなったことでもどんなに権威のある人が言っていることでも必ずメリットとデメリットがあると思います。そのなかでその専門家である人たちはそれを考慮した上でアドバイスをするはずです。周囲の独特の説得力を持つアドバイスをする人たちは裏の部分を隠すから説得力があるのかなとも思いました。専門家を当てにするべきなのはそういった点からも妥当であると言えるのでしょう。

  5. 次男の口の周辺が赤くなり、飲んでいた牛乳か食べた卵だったのではないかと近くのアレルギー専門医を訪ねると、乳・卵アレルギーと診断されました。その後学びを進める内に、血液検査をしなければ本当に食物アレルギーかはわからないということを知り、昭和大学病院の名医の元で再診を受け、食べても問題ない、との診断をいただき、今では牛乳も卵も当たり前のように食べて過ごしています。医師でも刷り込みや、更新されていない情報の中で仕事をされていることがあるということを目の当たりした経験として思い出されるのですが、保育や子育てもまた然りなのかもわかりません。まだ開いていない目が沢山あるのでしょうか、そこに光を当てられるよう、学び続けていきたいと思います。

  6. 保育園の質と量を両立させるというのはなかなか困難なことではありますが、今の社会そうやっていかなければ、なかなか立ち行かない時代になっているというのも現状なのでしょうね。ドイツの場合は話で聞くと、量より質の方針をとったことで出生率が上がったと言っていました。どこに重点をおいて、政策を進めていくのか、改善が急がれます。また、人の先入観はなかなか当てにならないものだなと改めて感じます。実際の結果が出ていても、その先入観を取り除くのは難しかったりもします。冷静に研究結果を見ていくことも今後非常に重要になってくるのかもしれません。ただ、どちらにおいてもバランスが重要で、あまり過度に過敏になることもないようにも思います。まずは、その時々の子どもたちにどう向き合うのかから入っていくことが重要であり、そういった子ども観を持てるような社会にしていかなければいけないのでしょうね。

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